第3話 月
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夜の学園はとても静かだった。
布団に入ると部屋がやけに広く感じられる。
記憶もない。
家族も友達も知り合いもいない。
お金も持ち物も、何もない。
一人でじっとしていると、ポツンと暗い海のなかにいるような気持ちになった。
なぜ、こんなことになったのだろう…。
手のひらを上にかざしてみた。
…私は、ここに存在している。
これは夢ではない。
私は、いまここに、生きている…。
私が居てたという異なる世界とは、どこなのだろう。
私はどこで何をしていたのだろう…。
家族は……。
色々な疑問が沸いてくるけれど、いくら考えても答えなど分からなかった。
『これからよろしくお願いしますね、たまみさん。』
ふと思い浮かんだのは、今日ずっと付き添ってくれていた土井先生の優しい笑顔。
さっきおやすみなさいと挨拶をしたばかりなのに…、なぜかもうまた会いたくなった。
「……」
じっと壁を見つめてみた。
この向こうに、土井先生と山田先生が寝起きしているという。
「……………」
両手で顔を覆い、大きく息を吐いた。
…自分で思うよりも、心細くなっているのかもしれない。
どうしても寝付けず廊下に出て月を見上げてみた。
夜風はまだ寒く、膝を抱えて座りこむ。
「………………」
丸い月が、涙でにじんでいった。
唇をぎゅっと噛んで涙をこらえる。
……と、そのとき。
ぱさり
突然、肩と背中に柔らかく温かい感触がした。
見ると、それは大きな半纏だった。
「…風邪、ひきますよ。」
優しい声。
振り返ると、そこには土井先生が立っていた。
「ど、い…先せ……」
瞬きをした瞬間、涙がこぼれ落ちた。
土井先生は静かに私の横に座った。
「…大丈夫」
優しく微笑んで、私の頭をぽんぽんと撫でる大きな手。
「…今は何も心配しなくていい。」
「…っ…」
その優しい声音に、大きな温かい手の感触に、涙がまたぽろぽろとこぼれる。
私は俯いて半纏を握りしめ、声を殺して泣いた。
「大丈夫」
土井先生はそう言いながら、そっと頭を撫で続けてくれた。
不思議と、その声に…その温かさに、心が凪いでいく。
まるでおまじないかのように、その言葉は不安に揺れる私の心に温かく広がっていった。
そうしてやがて気持ちが落ち着くと、私は人前で憚ることなく泣いてしまったことが恥ずかしくなって目をこすった。
「……すみません…こんな、泣いてしまって……」
「気にしないでください。突然知らないところに連れてこられて、不安にならない訳がない…。」
見上げると、土井先生は優しく微笑んでくれた。
「辛いときは、いつでも呼んでください。私は、ここに居ますから。」
月明かりに照らされた温かい眼差し。
その言葉に、私は今度こそ眠れるような気がした。
布団に入ると部屋がやけに広く感じられる。
記憶もない。
家族も友達も知り合いもいない。
お金も持ち物も、何もない。
一人でじっとしていると、ポツンと暗い海のなかにいるような気持ちになった。
なぜ、こんなことになったのだろう…。
手のひらを上にかざしてみた。
…私は、ここに存在している。
これは夢ではない。
私は、いまここに、生きている…。
私が居てたという異なる世界とは、どこなのだろう。
私はどこで何をしていたのだろう…。
家族は……。
色々な疑問が沸いてくるけれど、いくら考えても答えなど分からなかった。
『これからよろしくお願いしますね、たまみさん。』
ふと思い浮かんだのは、今日ずっと付き添ってくれていた土井先生の優しい笑顔。
さっきおやすみなさいと挨拶をしたばかりなのに…、なぜかもうまた会いたくなった。
「……」
じっと壁を見つめてみた。
この向こうに、土井先生と山田先生が寝起きしているという。
「……………」
両手で顔を覆い、大きく息を吐いた。
…自分で思うよりも、心細くなっているのかもしれない。
どうしても寝付けず廊下に出て月を見上げてみた。
夜風はまだ寒く、膝を抱えて座りこむ。
「………………」
丸い月が、涙でにじんでいった。
唇をぎゅっと噛んで涙をこらえる。
……と、そのとき。
ぱさり
突然、肩と背中に柔らかく温かい感触がした。
見ると、それは大きな半纏だった。
「…風邪、ひきますよ。」
優しい声。
振り返ると、そこには土井先生が立っていた。
「ど、い…先せ……」
瞬きをした瞬間、涙がこぼれ落ちた。
土井先生は静かに私の横に座った。
「…大丈夫」
優しく微笑んで、私の頭をぽんぽんと撫でる大きな手。
「…今は何も心配しなくていい。」
「…っ…」
その優しい声音に、大きな温かい手の感触に、涙がまたぽろぽろとこぼれる。
私は俯いて半纏を握りしめ、声を殺して泣いた。
「大丈夫」
土井先生はそう言いながら、そっと頭を撫で続けてくれた。
不思議と、その声に…その温かさに、心が凪いでいく。
まるでおまじないかのように、その言葉は不安に揺れる私の心に温かく広がっていった。
そうしてやがて気持ちが落ち着くと、私は人前で憚ることなく泣いてしまったことが恥ずかしくなって目をこすった。
「……すみません…こんな、泣いてしまって……」
「気にしないでください。突然知らないところに連れてこられて、不安にならない訳がない…。」
見上げると、土井先生は優しく微笑んでくれた。
「辛いときは、いつでも呼んでください。私は、ここに居ますから。」
月明かりに照らされた温かい眼差し。
その言葉に、私は今度こそ眠れるような気がした。