第16話 おかえりなさい
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おにぎりを二人分作って食堂で待つ。
あぁ、よかった…本当に、本当に。
ご飯を用意してあげられることがこんなに嬉しいなんて。
暫くして、お風呂でさっぱりとして着替えた利吉さんがやってきた。
「こんな時間に作ってもらってすみません。」
「いえ、大丈夫です。…土井先生はきり丸くんのところですか?」
「はい、たまみさんの言うとおり起きていたようです。」
「やっぱり…。」
私は利吉さんに向き直ってお辞儀をした。
「利吉さん、探しに行ってくれてありがとうございました。」
「…土井先生は、私にとっても兄のような存在なのでそれは当然なのですが…ちょっと複雑ですね。」
「?」
「…その、嬉しそうな笑顔。」
利吉さんの手が私の頬を撫でる。
「…私も、仕事から戻らなかったら、たまみさんに心配してもらえますかね?」
「縁起でもないこと言わないでください!」
「ははは、冗談です。…でも」
利吉さんは私の手をとって真剣な眼差しで見つめてきた。
「私なら、あなたにあんな悲しい顔はさせません。」
「えっ…!?いや、でも、利吉さんも忍者だから同じように帰ってこれないこともあるんじゃ…」
「私なら、何らかの方法で連絡するなりして、長く音信不通にしたりはしません。」
「そ、そうですか…。や、でも、利吉さんは山田先生と同じで仕事中毒という噂を聞きましたし、そもそもお仕事でほとんど家に居ないんじゃ…。」
「今は仕事の毎日ですけど、あなたが私を中毒にさせてくれたら、あなたの望むまま家に居ますよ。」
利吉さんが私のおにぎりをゆっくりと食んだ。
こんなに艶っぽくおにぎりを食べられるとか、驚いて見つめてしまった。
「仕事だって、短期のものだけ選ぶようにします。…これでもフリーとしてそこそこ有名なんですよ。…それより、忍術学園の教師の方が家に帰らないのでは?」
「そ、それは…」
たしかに、山田先生はほとんど家に帰らず奥さんが怒っていると聞く。
…土井先生もそうなるのだろうか。
「今はいいかもしれませんが、将来子どもができたら
たまみさんもずっと学園にいられないかもしれませんし…私だったら寂しい思いはさせませんよ。」
「利吉くん、なんの話をしてるのかな?」
スッと音もなく、ひきつった笑顔の土井先生が表れた。
「土井先生。…本当のことを言っているだけです。」
そう言うと利吉さんは立ち上がり、食べ終わったお皿をカウンターに置いた。
「ご馳走さまでした。…ではたまみさん、おやすみなさい。」
「あ、はい、おやすみなさい…。」
利吉さんの言葉にまともな返事もできないまま、その背中を見送ろうとしたとき。
「あ!利吉くん!」
「はい?」
「…ありがとう。君が手伝ってくれたおかげで子ども達を早く連れていくことができた。」
利吉さんはフッと笑って「今回のは貸しですよ。」と言いながら歩いていった。
土井先生は「ははは」と笑いながら椅子に座って手を合わせた。
「おにぎり、頂きます。実はろくに食べてなかったので、嬉しいです。」
そう言うと美味しそうにぱくぱくと食べてくれた。
「…きり丸くん、大丈夫でした?」
「はい、あいつにも心配をかけてしまいました…。もう安心して、今頃夢の中だと思いますよ。」
「よかった…。私も、どれだけ心配したか…!」
「たまみさん……」
土井先生が立ち上がって私の目尻の涙を指で拭う。
そしてそのまま、土井先生の胸に頭を押しあてられた。
ぎゅっと抱きしめられて、驚きと甘い幸福感が胸に広がる。
土井先生の優しい声が静かに囁いた。
「不安にさせてすみませんでした…。」
私は返事の代わりに土井先生の背中をぎゅっと抱きしめ返した。
そしてあることを思い出して顔をあげた。
「土井先生」
土井先生の瞳を覗きこむ。
あぁ、ずっと見たかったこの目が、この顔が、この声が、今ここに在る。
嬉しくて、自然と顔が綻ぶ。
「…おかえりなさい。」
やっと、言うことができた。
土井先生は少し驚いた顔をして、
「…ただいま。」
と優しく微笑んでくれた。
あぁ、よかった…本当に、本当に。
ご飯を用意してあげられることがこんなに嬉しいなんて。
暫くして、お風呂でさっぱりとして着替えた利吉さんがやってきた。
「こんな時間に作ってもらってすみません。」
「いえ、大丈夫です。…土井先生はきり丸くんのところですか?」
「はい、たまみさんの言うとおり起きていたようです。」
「やっぱり…。」
私は利吉さんに向き直ってお辞儀をした。
「利吉さん、探しに行ってくれてありがとうございました。」
「…土井先生は、私にとっても兄のような存在なのでそれは当然なのですが…ちょっと複雑ですね。」
「?」
「…その、嬉しそうな笑顔。」
利吉さんの手が私の頬を撫でる。
「…私も、仕事から戻らなかったら、たまみさんに心配してもらえますかね?」
「縁起でもないこと言わないでください!」
「ははは、冗談です。…でも」
利吉さんは私の手をとって真剣な眼差しで見つめてきた。
「私なら、あなたにあんな悲しい顔はさせません。」
「えっ…!?いや、でも、利吉さんも忍者だから同じように帰ってこれないこともあるんじゃ…」
「私なら、何らかの方法で連絡するなりして、長く音信不通にしたりはしません。」
「そ、そうですか…。や、でも、利吉さんは山田先生と同じで仕事中毒という噂を聞きましたし、そもそもお仕事でほとんど家に居ないんじゃ…。」
「今は仕事の毎日ですけど、あなたが私を中毒にさせてくれたら、あなたの望むまま家に居ますよ。」
利吉さんが私のおにぎりをゆっくりと食んだ。
こんなに艶っぽくおにぎりを食べられるとか、驚いて見つめてしまった。
「仕事だって、短期のものだけ選ぶようにします。…これでもフリーとしてそこそこ有名なんですよ。…それより、忍術学園の教師の方が家に帰らないのでは?」
「そ、それは…」
たしかに、山田先生はほとんど家に帰らず奥さんが怒っていると聞く。
…土井先生もそうなるのだろうか。
「今はいいかもしれませんが、将来子どもができたら
たまみさんもずっと学園にいられないかもしれませんし…私だったら寂しい思いはさせませんよ。」
「利吉くん、なんの話をしてるのかな?」
スッと音もなく、ひきつった笑顔の土井先生が表れた。
「土井先生。…本当のことを言っているだけです。」
そう言うと利吉さんは立ち上がり、食べ終わったお皿をカウンターに置いた。
「ご馳走さまでした。…ではたまみさん、おやすみなさい。」
「あ、はい、おやすみなさい…。」
利吉さんの言葉にまともな返事もできないまま、その背中を見送ろうとしたとき。
「あ!利吉くん!」
「はい?」
「…ありがとう。君が手伝ってくれたおかげで子ども達を早く連れていくことができた。」
利吉さんはフッと笑って「今回のは貸しですよ。」と言いながら歩いていった。
土井先生は「ははは」と笑いながら椅子に座って手を合わせた。
「おにぎり、頂きます。実はろくに食べてなかったので、嬉しいです。」
そう言うと美味しそうにぱくぱくと食べてくれた。
「…きり丸くん、大丈夫でした?」
「はい、あいつにも心配をかけてしまいました…。もう安心して、今頃夢の中だと思いますよ。」
「よかった…。私も、どれだけ心配したか…!」
「たまみさん……」
土井先生が立ち上がって私の目尻の涙を指で拭う。
そしてそのまま、土井先生の胸に頭を押しあてられた。
ぎゅっと抱きしめられて、驚きと甘い幸福感が胸に広がる。
土井先生の優しい声が静かに囁いた。
「不安にさせてすみませんでした…。」
私は返事の代わりに土井先生の背中をぎゅっと抱きしめ返した。
そしてあることを思い出して顔をあげた。
「土井先生」
土井先生の瞳を覗きこむ。
あぁ、ずっと見たかったこの目が、この顔が、この声が、今ここに在る。
嬉しくて、自然と顔が綻ぶ。
「…おかえりなさい。」
やっと、言うことができた。
土井先生は少し驚いた顔をして、
「…ただいま。」
と優しく微笑んでくれた。