第11話 守ってくれますか
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春の陽射しが気持ちいい午後。
土井先生と廊下を歩いていると突然大きな声が響いた。
「土井半助、覚悟ー!!」
バシッ!
土井先生が素早く私の前に出て、出席簿で何者かの攻撃を弾いた。
土井先生の背中越しに見えたのは、暗い忍装束を身にまとった丸い目をした少年だった。
「諸泉尊奈門くん、近くに他の人がいるときは危ないからやめてくれないか。」
「しるか!今日こそお前を倒す!」
「たまみさん、危ないから部屋に戻っててください。」
土井先生はそう言うと、中庭の方へ跳んだ。
少年が苦無を手に土井先生に切りかかる。
が、予測されているのか見切られているのか、かすりもしない。
少年の動きも俊敏ですごいと思ったけれど、土井先生の方がそれ以上に余裕で圧倒していた。
「すごい…!」
部屋に戻れと言われたけれど、土井先生が軽やかに攻撃をいなす姿に目を奪われてしまった。
口に手を当ててぼぅっと見惚れていると、
「これは可愛いお嬢さん、新しく入ったのかい?」
突然声をかけられ驚いた。
振り向くと、隣には少年と同じ忍装束の男がいた。
顔に包帯が巻かれていて片目しか見えない。
こちらをじっと探るような眼光に恐怖を感じ、思わず後ずさった。
「恐がらなくていいよ、ただの曲者だから」
「曲者?」
それって、恐がるべきやつなんじゃ…
「君、くノ一には見えないね。事務員か何か?」
「私は一年は組補佐の…」
名乗ろうとしたとき、土井先生が私を庇うように前に割って入った。
「何の用だ、雑渡昆奈門…!」
「ただ話をしていただけだよ。」
男は面白いものを見るような目で土井先生と私を見た。
すると、
「戦いの最中に余所見をするなっ!」
少年がまた苦無を持って向かってきた。
土井先生は私を抱き上げて跳躍した。
ヒュッ
手裏剣が飛んでくる。
土井先生は片手に私を庇うように抱き、もう片方の手で出席簿を持ちそれを弾いた。
「あまい!」
刹那、少年が背後に回る。
が、それより速く土井先生が木を蹴ってまた跳躍し距離をとる。
「おのれ、ちょこまかと!正々堂々戦え!」
「…しょうがないな。」
土井先生は私をおろして、目に見えぬ勢いでチョークを投げた。
少年は間一髪それを避けたが、その瞬間、出席簿でみぞおちを突かれてその場に膝をついた。
「ぐっ…!」
「さぁ、さっさと部下を連れて帰れ。」
「今日はいつもより容赦ないね。彼女が原因かな?」
土井先生は私を庇うように前に立っている。
「ここは忍術学園なのに忍者でもない者を教員補佐につけるなんて不思議じゃないか。何か特技でもあるのか、訳ありでどこぞの姫か何かだったりするのかな?」
「お前には関係ない。」
土井先生の迫力に、男は両手をあげておどけてみせた。
「これ以上は聞いても無駄のようだね。尊奈門、帰るぞ。」
「…はっ。」
二人の姿はあっという間に消えていた。
今のは一体…。
私が呆然としていると、
「大丈夫ですか?」
土井先生が心配そうに顔を覗きこんできた。
いつもの声に、その優しい眼差しにホッと安心した。
同時に、先程逞しい腕で抱えて守ってくれた力強い感触を思いだした。
恐くなかったといえば嘘になるけれど、それ以上に土井先生が強く頼もしくて見惚れてしまった。
ドキドキしすぎて内心焦って泣きそうになってしまう。
「そんな涙目になるほど恐かったとは…巻き込んでしまいすみません。」
「いえっ、あの…違うんです!」
涙目なのは別の理由なんですとも言えず、口ごもった。
「えっと、今の人達は…?」
「あぁ、今のはタソガレドキ城の忍者で、私に向かってきてたのが諸泉尊奈門くん。色々あって、ときどき私に勝負を挑んでくるんです。」
「色々?」
「以前、文房具で彼に勝ってしまってから、それを根にもたれてて。」
「文房具で…土井先生は武器を使わないんですか?」
「使わないこともないけど、こっちの方が性にあってるというか…。」
「ふふ、土井先生らしいですね。…あのもう一人は?」
「タソガレドキ忍軍忍頭の雑渡昆奈門。ときどき忍術学園に現れる曲者で、保健委員の生徒達と話していることもあるけど、彼には気をつけてください。タソガレドキ城は友好的ではないので。」
「そうなんですか…。」
男の探るような目線を思いだし、私は少し身震いした。
「…恐い?」
優しく、気遣うような声音。
私は目を伏せた。
「…いえ。……土井先生が、いてくれるから。」
自分の声が、静かな中庭に妙に響いた気がした。
土井先生は、少し沈黙した後、力強い声で
「たまみさんは私が守ります。…必ず。」
と手を握ってくれた。
大きくて温かい手…。
私はまた泣きそうになりながら、その手に自分の手を重ねた。
土井先生と廊下を歩いていると突然大きな声が響いた。
「土井半助、覚悟ー!!」
バシッ!
土井先生が素早く私の前に出て、出席簿で何者かの攻撃を弾いた。
土井先生の背中越しに見えたのは、暗い忍装束を身にまとった丸い目をした少年だった。
「諸泉尊奈門くん、近くに他の人がいるときは危ないからやめてくれないか。」
「しるか!今日こそお前を倒す!」
「たまみさん、危ないから部屋に戻っててください。」
土井先生はそう言うと、中庭の方へ跳んだ。
少年が苦無を手に土井先生に切りかかる。
が、予測されているのか見切られているのか、かすりもしない。
少年の動きも俊敏ですごいと思ったけれど、土井先生の方がそれ以上に余裕で圧倒していた。
「すごい…!」
部屋に戻れと言われたけれど、土井先生が軽やかに攻撃をいなす姿に目を奪われてしまった。
口に手を当ててぼぅっと見惚れていると、
「これは可愛いお嬢さん、新しく入ったのかい?」
突然声をかけられ驚いた。
振り向くと、隣には少年と同じ忍装束の男がいた。
顔に包帯が巻かれていて片目しか見えない。
こちらをじっと探るような眼光に恐怖を感じ、思わず後ずさった。
「恐がらなくていいよ、ただの曲者だから」
「曲者?」
それって、恐がるべきやつなんじゃ…
「君、くノ一には見えないね。事務員か何か?」
「私は一年は組補佐の…」
名乗ろうとしたとき、土井先生が私を庇うように前に割って入った。
「何の用だ、雑渡昆奈門…!」
「ただ話をしていただけだよ。」
男は面白いものを見るような目で土井先生と私を見た。
すると、
「戦いの最中に余所見をするなっ!」
少年がまた苦無を持って向かってきた。
土井先生は私を抱き上げて跳躍した。
ヒュッ
手裏剣が飛んでくる。
土井先生は片手に私を庇うように抱き、もう片方の手で出席簿を持ちそれを弾いた。
「あまい!」
刹那、少年が背後に回る。
が、それより速く土井先生が木を蹴ってまた跳躍し距離をとる。
「おのれ、ちょこまかと!正々堂々戦え!」
「…しょうがないな。」
土井先生は私をおろして、目に見えぬ勢いでチョークを投げた。
少年は間一髪それを避けたが、その瞬間、出席簿でみぞおちを突かれてその場に膝をついた。
「ぐっ…!」
「さぁ、さっさと部下を連れて帰れ。」
「今日はいつもより容赦ないね。彼女が原因かな?」
土井先生は私を庇うように前に立っている。
「ここは忍術学園なのに忍者でもない者を教員補佐につけるなんて不思議じゃないか。何か特技でもあるのか、訳ありでどこぞの姫か何かだったりするのかな?」
「お前には関係ない。」
土井先生の迫力に、男は両手をあげておどけてみせた。
「これ以上は聞いても無駄のようだね。尊奈門、帰るぞ。」
「…はっ。」
二人の姿はあっという間に消えていた。
今のは一体…。
私が呆然としていると、
「大丈夫ですか?」
土井先生が心配そうに顔を覗きこんできた。
いつもの声に、その優しい眼差しにホッと安心した。
同時に、先程逞しい腕で抱えて守ってくれた力強い感触を思いだした。
恐くなかったといえば嘘になるけれど、それ以上に土井先生が強く頼もしくて見惚れてしまった。
ドキドキしすぎて内心焦って泣きそうになってしまう。
「そんな涙目になるほど恐かったとは…巻き込んでしまいすみません。」
「いえっ、あの…違うんです!」
涙目なのは別の理由なんですとも言えず、口ごもった。
「えっと、今の人達は…?」
「あぁ、今のはタソガレドキ城の忍者で、私に向かってきてたのが諸泉尊奈門くん。色々あって、ときどき私に勝負を挑んでくるんです。」
「色々?」
「以前、文房具で彼に勝ってしまってから、それを根にもたれてて。」
「文房具で…土井先生は武器を使わないんですか?」
「使わないこともないけど、こっちの方が性にあってるというか…。」
「ふふ、土井先生らしいですね。…あのもう一人は?」
「タソガレドキ忍軍忍頭の雑渡昆奈門。ときどき忍術学園に現れる曲者で、保健委員の生徒達と話していることもあるけど、彼には気をつけてください。タソガレドキ城は友好的ではないので。」
「そうなんですか…。」
男の探るような目線を思いだし、私は少し身震いした。
「…恐い?」
優しく、気遣うような声音。
私は目を伏せた。
「…いえ。……土井先生が、いてくれるから。」
自分の声が、静かな中庭に妙に響いた気がした。
土井先生は、少し沈黙した後、力強い声で
「たまみさんは私が守ります。…必ず。」
と手を握ってくれた。
大きくて温かい手…。
私はまた泣きそうになりながら、その手に自分の手を重ねた。