第10話 仮初めでも
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帰りが遅いから、どうしても気になって見に来てしまった。
門の近くの高い木に登り、塀の外を見る。
すると偶然にも、2人が並んで歩いてくるのが見えた。
無事でよかった…
そう思ったのも束の間、よく見ると手を繋いでいるではないか。
さらに、利吉くんは私の姿を認めると、たまみさんを抱き締めてその頬に口付けた。
その目は、私を捉えていた。
…宣戦布告か。
木を掴んでいた手に力が入った。
弟のように慕ってくれていた利吉くんが、まさか恋敵になるとは…。
私はその場を離れると手のひらについた木の皮をぱらぱらと払った。
「ただいま戻りました。」
たまみさんが少し疲れた様子で職員室に戻ってきた。
「お疲れ様でした。大丈夫ですか?」
心配で仕事もあまり進まなかったことを悟られぬよう、普段通りに聞いた。
「はい、おば様方のお喋りパワーに圧倒されましたが、何とか物価とか必要な情報は聞き出せました…」
「…たまみさん」
「はい?」
「本当は、忍務の内容にかかることは、他に漏らしてはいけないのですよ。」
「!…すみません。」
「でも」
「?」
「私には全部、隠さずに話してください。」
「?…はい、わかりました………?」
何故かと不思議そうにする彼女。
私は少しためらった後、その肩を引き寄せてぎゅっと強く抱き締めた。
「……心配、だからです。」
腕のなかの彼女は驚いて固まっていた。
「えっ、や、あの…!?危ないこととか、そういうのはなかったですよ…!?」
慌てて説明する彼女の肩をぐっと掴み、その瞳を静かに見据えた。
「………利吉くんに、何もされなかった?」
「!」
彼女が何かを思い出したように狼狽えて固まった。
その様子に、予想はしていても胸が軋んだ。
「…やはり行かせるんじゃなかった…!」
「えっ…」
たまみさんの肩をグッと押してそのまま後ろに押し倒した。
畳の上に彼女の長い髪が広がる。
驚いた彼女は、それでも何の抵抗も示さなかった。
「…たまみさん」
「どい、せんせ…!?」
ゆっくりと彼女に覆い被さる。
私の前髪が、たまみさんの額を掠めた。
彼女の長い睫毛が揺れる。
…だめだ、抑えられない。
「…たまみさん、私は」
「失礼しまぁーす。」
がらりと障子があいて、小松田くんが顔を出した。
私は咄嗟に身を起こし、同時に彼女も座らせた。
「あれ、2人とも顔が赤いですけど大丈夫ですか?」
「小松田くんっ…!いや、なんでもない、大丈夫だ。何かあったのかい?」
「土井先生、もう職員会議が始まりますよ?」
「!…しまった、もうそんな時間か!」
「あと土井先生だけなので呼びに来たんですけど…。」
小松田くんがちらりとたまみさんを見たので私は慌てて立ち上がった。
「ありがとう小松田くん、いま行くよ!…たまみさん、すみませんちょっと行ってきます!」
私は呆然とするたまみさんを1人部屋に残して、急いで会議に向かった。
…いかん。
少し、頭を冷やそう。
あのまま、歯止めがきかなくなりそうだった…。
私は、またため息をひとつついて廊下を足早に歩いた。
門の近くの高い木に登り、塀の外を見る。
すると偶然にも、2人が並んで歩いてくるのが見えた。
無事でよかった…
そう思ったのも束の間、よく見ると手を繋いでいるではないか。
さらに、利吉くんは私の姿を認めると、たまみさんを抱き締めてその頬に口付けた。
その目は、私を捉えていた。
…宣戦布告か。
木を掴んでいた手に力が入った。
弟のように慕ってくれていた利吉くんが、まさか恋敵になるとは…。
私はその場を離れると手のひらについた木の皮をぱらぱらと払った。
「ただいま戻りました。」
たまみさんが少し疲れた様子で職員室に戻ってきた。
「お疲れ様でした。大丈夫ですか?」
心配で仕事もあまり進まなかったことを悟られぬよう、普段通りに聞いた。
「はい、おば様方のお喋りパワーに圧倒されましたが、何とか物価とか必要な情報は聞き出せました…」
「…たまみさん」
「はい?」
「本当は、忍務の内容にかかることは、他に漏らしてはいけないのですよ。」
「!…すみません。」
「でも」
「?」
「私には全部、隠さずに話してください。」
「?…はい、わかりました………?」
何故かと不思議そうにする彼女。
私は少しためらった後、その肩を引き寄せてぎゅっと強く抱き締めた。
「……心配、だからです。」
腕のなかの彼女は驚いて固まっていた。
「えっ、や、あの…!?危ないこととか、そういうのはなかったですよ…!?」
慌てて説明する彼女の肩をぐっと掴み、その瞳を静かに見据えた。
「………利吉くんに、何もされなかった?」
「!」
彼女が何かを思い出したように狼狽えて固まった。
その様子に、予想はしていても胸が軋んだ。
「…やはり行かせるんじゃなかった…!」
「えっ…」
たまみさんの肩をグッと押してそのまま後ろに押し倒した。
畳の上に彼女の長い髪が広がる。
驚いた彼女は、それでも何の抵抗も示さなかった。
「…たまみさん」
「どい、せんせ…!?」
ゆっくりと彼女に覆い被さる。
私の前髪が、たまみさんの額を掠めた。
彼女の長い睫毛が揺れる。
…だめだ、抑えられない。
「…たまみさん、私は」
「失礼しまぁーす。」
がらりと障子があいて、小松田くんが顔を出した。
私は咄嗟に身を起こし、同時に彼女も座らせた。
「あれ、2人とも顔が赤いですけど大丈夫ですか?」
「小松田くんっ…!いや、なんでもない、大丈夫だ。何かあったのかい?」
「土井先生、もう職員会議が始まりますよ?」
「!…しまった、もうそんな時間か!」
「あと土井先生だけなので呼びに来たんですけど…。」
小松田くんがちらりとたまみさんを見たので私は慌てて立ち上がった。
「ありがとう小松田くん、いま行くよ!…たまみさん、すみませんちょっと行ってきます!」
私は呆然とするたまみさんを1人部屋に残して、急いで会議に向かった。
…いかん。
少し、頭を冷やそう。
あのまま、歯止めがきかなくなりそうだった…。
私は、またため息をひとつついて廊下を足早に歩いた。