第9話 潮干狩り
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浜辺に座って波を見ながら3人を待つ。
小舟では3人がおしゃべりしながらじっと魚を待っている。
…波の音が耳に心地いい。
隣に土井先生が座っていることが嬉しかった。
不思議と沈黙も気にならなくて、2人で静かに波間を眺めながら佇んだ。
すると、土井先生がのんびりした声で楽しげに言った。
「…たまみさんって、意外と好奇心旺盛ですよね。」
「そうですか?何だか楽しくてはしゃぎすぎたかもしれません…」
「やりたいことやったもん勝ち、ですよ。」
土井先生がそう言ってくれたものだから、私は調子にのってみた。
「もうひとつ、やりたいことがあるんです。」
「何ですか?」
「海に入ってみたくて。」
「えっ?」
「気持ち良さそうですよね。」
私は立ち上がって波の方へ向かった。
「ちょっ、濡れちゃいますよ!」
「足だけだから、大丈夫です!」
私は裾を手に持って、足だけ海につけた。
海水はまだ冷たく、足元の砂が波と共にさらさらと動くのが気持ちよかった。
ざぶざぶと歩き、水を前に蹴ってみる。
きらきらと水しぶきが飛んで、綺麗だった。
と、突然波の音が大きくなったなと見た瞬間、大きな波が寄せてきた。
「わっ!」
私は水の勢いに押されて、ばしゃんと倒れてしまった。
「たまみさん!」
土井先生が慌てて立たせてくれた。
「間に合わなくてすみません、つい見とれ…いえ、大きな波が来るのに気づきませんでした。だいぶ濡れちゃいましたね。」
「いえ私が…あっ、すみません土井先生まで濡れちゃいました…!」
慌てて来てくれたのか、土井先生は袴の裾も捲らずに海に入ったので濡れていた。
「これくらいすぐ乾くでしょう。」
「…じゃあ土井先生、濡れたついでに遊びませんか?」
「へ?」
私は水面の水を少し手で掬って土井先生にぱしゃりとかけてみた。
「忍者の先生だったら、どこまで避けれるのかなって。」
「そんなの忍者とか関係ないでしょう。」
そう言う土井先生の笑顔に嫌がる雰囲気はなかったので、私は更に水をばしゃっとかけてみた。
「やったな!」
土井先生も反撃してくる。
キラキラと水しぶきが舞うなか、年甲斐もなく2人で大笑いしながら水をかけあって遊んだ。
「あの…何やってんすか?」
「「!」」
ふと気づくと、魚を手にした三人がこちらを呆れて見ていた。
私と土井先生はいつのまにか肩まで濡れていて、言い訳する言葉も見つからずあははと笑った。
大量の収穫物は今からきり丸くんが町へ売りに行くという。
「たまみさんにも売り子お願いしようと思ってたんですけど、そんなに濡れてたらちょっとあれなんで…また今度お願いします。」
「はい、ごめんなさい…」
これじゃどちらが生徒か分からないなぁ…しゅんと反省しながら水を絞った。
結局、乱太郎くん達3人は両手に収穫した魚やら貝やらを抱え、町へ売りにいった。
私は濡れて張り付く着物に苦戦しながら、土井先生と忍術学園へ戻ることになったのだった。
(おまけ)
「学園に着くまでに乾かなかったですね…」
「海水はべとべとしますしね。とりあえず、山田先生に見つかる前に塩を落として着替えなくては…」
「私がなんだって!?」
「「や、山田先生っ!」」
「帰りが遅いと思ったら、なんだ2人ともずぶ濡れで。乱太郎達はどうした?」
「えー、乱太郎達は魚を売りに行きました。我々はその…はは、ちょっと波に濡れてしまいまして。」
「……まぁ、怪我がないなら構わんが。さっさと風呂に入ってきなさい。」
「あはは、すみません…」
「2人で入るんじゃないぞ。」
「当たり前ですっ!!」