第6話 花売り

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主人公

「町に着きましたよ~!」

人通りが多く、目につきやすそうなところに場所をとる。
すると3人はあっという間に女の子の売り子姿になった。
伝子さんとは違う可愛らしいその姿に微笑ましく思いながら、忍者は女装するのも普通のことなのだなと驚いた。
しかしここは私が最年長、先陣をきって頑張ろうと気合いをいれた。

「お花はいかがですかー!大事な人への贈り物にも、お部屋をパッと明るくする飾りにも、髪飾りにも、仏壇やお墓のお供え物にも、今なら旬のお花がお得ですよー!」

めいっぱいの笑顔で声をだして客引きをする。
最初は誰も寄ってこなかったが、暫くすると次々とお客さんが買ってくれるようになり、収穫したお花のほとんどが売れてしまった。

たまみさんすごいですね~!」

「やっぱり俺の目に狂いはなかった…!この調子であと少し売り切りましょう!」

「ぼく、お腹すいちゃった~!」

マイペースなしんべヱくんのお腹の虫がなる。

「あとちょっとだから私売っておこうか?三人は食べてきていいよ~。」

「あ、俺腹へってないから。乱太郎、しんべヱと行ってこいよ。」

「わかった。じゃあいつものおうどん屋さんにいるね!」

「わーい、おうどん食べよう!」

そう言って2人は女装を解いて町中に走っていった。
すると、遠くの方から「閉店安売りだよー!半額以下に値下げしてまーす!おまけもあげますよー!」という声が聞こえてきた。
きり丸くんの耳がぴくりと動き、目が小銭になる。

たまみさん、ちょっと見てきていいですか?」

苦笑しながら頷くと、きり丸くんは女装したまま走っていってしまった。
一人になり若干心細くなるも、全部売り切ろうと先程と同じように声かけをしていく。

「いいねぇ。」

突然、帯刀した大きな男性がニヤニヤしながら近寄ってきた。
嫌な予感がしたけれど「おひとついかがですか?」と営業スマイルを向ける。

「あぁ、貰おうかな。」

「ありがとうございます!どの花にしますか?」

「こちらを頂こう。」

無造作にガシッと手首を掴まれた。

…こちら、とは。
まさか……私のこと?
えっ、ちょっ……いやいや、どうしよう。

「えっと……すみませんが…」

「堅いこと言うなよ。高く買うぜ?」

「いえ、そういうのはちょっと…」

「優しく言ってるうちに着いてきた方が身のためだぞ。」

カチッと音がして、男が腰の刀の柄に触れた。
どうしよう。
こわい。
助けを求めようと思ったが、恐怖で声が出なかった。
男が私の腕をひいて連れて行こうとする。
そのとき

「触るな。」

低く短い声。
男が痛みに顔を歪めて私の手を離した。
見上げると、そこには

「土井先生っ…!」

男の腕を土井先生がひねりあげていた。

「な、なんだてめぇ!」

「命が惜しかったら帰れ。」

「なっ…!こいつっ!」

男が刀を抜こうと手を伸ばすと、腰にあるはずの刀がなくなっていた。

「これか?」

土井先生が男の刀を喉元につきつける。

「優しく言ってるうちに失せた方が身のためだぞ。」

その目はひどく冷たく、ただの脅しには見えなかった。

「…くそっ!」

一瞬で気圧された男が慌てて走り去っていく。
土井先生は残された刀を近くの草むらに放り投げた。

「大丈夫ですか?」

優しい声。
こちらを振り向いた土井先生はいつもの優しい目をしていた。

「…ぁ……」

安堵なのか嬉しさなのか、声が震えた。
涙が出そうになって、自分で思うより恐かったのだと気づいた。

「ど…どうして、ここに…?」

「…心配で来てしまいました。」

土井先生は眉をハの字にして苦笑いした。

「あとをつけるつもりはなかったのですが…すみません、しかしもう少し早く見つけていれば…恐い思いをさせてしまいましたね。」

私はふるふると首を振って、土井先生の手を握った。
大きくてあたたかい手。

「嬉しい…ありがとうございます。」

土井先生はぎゅっと手を握り返して微笑んでくれた。
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