第19.5話 あなたの手
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土井先生の大きな手が好き。
チョークを持つ手。
黒板に文字を書くときの持ち方も、
チョークを投げるときの持ち方も。
カッカッと教室に響くチョークの音さえ好き。
綺麗に書かれた文字も素敵で、消されてしまうのが勿体無いといつも思う。
土井先生が投げたあとのチョークを、実は拾って大事に持っていたりする。
そんなことがバレたら、土井先生はひいてしまうだろうか。
生徒の頭を優しく撫でる手。
ときどき拳骨を落としたりするけれど、
生徒を優しく褒めたり慰めたりするその温かい手。
何度、一年は組の生徒になりたいと思ったことか。
書類をもつ手。
しゅるしゅると巻物を巻いたり、たくさんの荷物も軽々と持つ大きな力強い手。
紙をめくる音すら知的に聞こえて、じっと本を読む姿は素敵すぎてずっと眺めていたいくらい。
一度、あまり見つめすぎていたのか目があってしまったときは恥ずかしかった。
それからはこっそり眺めるように心がけたりしている。
筆を握る手。
さらさらと走る筆の音すらも愛しい。
土井先生の仕事を手伝って彼の筆を借りるとき、ただそれだけのことにも嬉しくなってしまう。
仕事が忙しくてなかなか心触れ合う会話ができないとき、土井先生の筆になりたいなんて思ってしまうことすらある。
たまに私の頬に触れるその手。
私の心がどれだけ高鳴っているか、土井先生は知らないでしょう。
その手にもっと触れてほしいと…もっと触れたいと願ってしまう自分。
……土井先生は、私のことをどう思っているのだろう…。
そんなことを心のなかで考えながら、土井先生の後ろで繕い物をしていると。
「痛っ!」
雑念のせいで指を針で刺してしまった。
「大丈夫ですか?」
土井先生が振り返り慌てて手拭いで刺したところを押さえてくれる。
「血が止まるまでこのまま押さえておきましょう。」
「はい、ありがとうございます…。」
なんだか情けなくなって苦笑いしてごまかす。
すると土井先生は優しく微笑んで、
「たまみさんの手は小さくて柔らかくてほんとに子どもみたいですね。」
「えっ。」
子ども扱いされてしまった。
確かに手が小さいのはよく言われるけれど。
「…子どもじゃないです。」
不服そうに口を尖らせると、土井先生はあははと笑った。
「褒めてるんですよ。」
「ほんとですかぁ?」
「もちろん。…その、可愛いらしいなと、いう意味で…。」
最後の方の言葉はむにゃむにゃと濁されて、よく聞き取れなかった。
聞き返そうとして、止血してくれている彼の手をみたとき……どきりとした。
大きく逞しくて力強く私の指を握る手…。
「……土井先生の手は大きいですよね。」
思わずそう言って、反対の手のひらを土井先生に向けてみた。
すると、何も言わなくても土井先生がそこに手のひらを合わせてくれた。
温かい…
土井先生の温かい手のひらとぴったり重なる。
長い指は、関節ひとつ分以上の差があった。
「…ほんとに小さいな。」
土井先生が静かにそう呟いて、私の手をぎゅっと握りしめた。
彼の大きな手の中にすっぽりと収まってしまった私の手。
「…!!」
息を止め、時が止まったようにその手を見つめた。
私の大好きな、大きくて温かい手。
いつか、この手が私だけを愛でてくれるような、そんな日はくるのだろうか…。
手だけではなくその腕で、その身体で私を包み込んでくれるような日は…くるのだろうか……。
優しくて逞しい彼の手に、私は真っ赤になって俯いた。
チョークを持つ手。
黒板に文字を書くときの持ち方も、
チョークを投げるときの持ち方も。
カッカッと教室に響くチョークの音さえ好き。
綺麗に書かれた文字も素敵で、消されてしまうのが勿体無いといつも思う。
土井先生が投げたあとのチョークを、実は拾って大事に持っていたりする。
そんなことがバレたら、土井先生はひいてしまうだろうか。
生徒の頭を優しく撫でる手。
ときどき拳骨を落としたりするけれど、
生徒を優しく褒めたり慰めたりするその温かい手。
何度、一年は組の生徒になりたいと思ったことか。
書類をもつ手。
しゅるしゅると巻物を巻いたり、たくさんの荷物も軽々と持つ大きな力強い手。
紙をめくる音すら知的に聞こえて、じっと本を読む姿は素敵すぎてずっと眺めていたいくらい。
一度、あまり見つめすぎていたのか目があってしまったときは恥ずかしかった。
それからはこっそり眺めるように心がけたりしている。
筆を握る手。
さらさらと走る筆の音すらも愛しい。
土井先生の仕事を手伝って彼の筆を借りるとき、ただそれだけのことにも嬉しくなってしまう。
仕事が忙しくてなかなか心触れ合う会話ができないとき、土井先生の筆になりたいなんて思ってしまうことすらある。
たまに私の頬に触れるその手。
私の心がどれだけ高鳴っているか、土井先生は知らないでしょう。
その手にもっと触れてほしいと…もっと触れたいと願ってしまう自分。
……土井先生は、私のことをどう思っているのだろう…。
そんなことを心のなかで考えながら、土井先生の後ろで繕い物をしていると。
「痛っ!」
雑念のせいで指を針で刺してしまった。
「大丈夫ですか?」
土井先生が振り返り慌てて手拭いで刺したところを押さえてくれる。
「血が止まるまでこのまま押さえておきましょう。」
「はい、ありがとうございます…。」
なんだか情けなくなって苦笑いしてごまかす。
すると土井先生は優しく微笑んで、
「たまみさんの手は小さくて柔らかくてほんとに子どもみたいですね。」
「えっ。」
子ども扱いされてしまった。
確かに手が小さいのはよく言われるけれど。
「…子どもじゃないです。」
不服そうに口を尖らせると、土井先生はあははと笑った。
「褒めてるんですよ。」
「ほんとですかぁ?」
「もちろん。…その、可愛いらしいなと、いう意味で…。」
最後の方の言葉はむにゃむにゃと濁されて、よく聞き取れなかった。
聞き返そうとして、止血してくれている彼の手をみたとき……どきりとした。
大きく逞しくて力強く私の指を握る手…。
「……土井先生の手は大きいですよね。」
思わずそう言って、反対の手のひらを土井先生に向けてみた。
すると、何も言わなくても土井先生がそこに手のひらを合わせてくれた。
温かい…
土井先生の温かい手のひらとぴったり重なる。
長い指は、関節ひとつ分以上の差があった。
「…ほんとに小さいな。」
土井先生が静かにそう呟いて、私の手をぎゅっと握りしめた。
彼の大きな手の中にすっぽりと収まってしまった私の手。
「…!!」
息を止め、時が止まったようにその手を見つめた。
私の大好きな、大きくて温かい手。
いつか、この手が私だけを愛でてくれるような、そんな日はくるのだろうか…。
手だけではなくその腕で、その身体で私を包み込んでくれるような日は…くるのだろうか……。
優しくて逞しい彼の手に、私は真っ赤になって俯いた。