第35話 噂の調査
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そこから暫く歩いたとき、周りが見たことのない風景であることに気づいた。
「あれ、これって来た道と違うような…」
「今頃気づいたんですか?」
「えっ」
驚いて利吉さんを見上げると、彼は少し先を指差した。
「ここは金楽寺へ行く道の途中なんですけど、景色の綺麗なところがあるんです。」
指の先を見ると、そこには大きな花畑が広がっていた。
「わぁ…!すごい!!」
一面の花畑で、色とりどりの花が咲き乱れ、甘い香りがした。
「こんなところがあるんですね…知りませんでした!」
利吉さんは頷いた。
「私も最近知ったんです。…以前の私なら素通りしているところですが、これを見たときに是非あなたに見せたいと思いまして…。」
利吉さんは私にゆっくりと向き直った。
真剣な瞳が真っ直ぐに私を見つめる。
「今まで忍として、冷たい世界の汚いものも多く見てきましたが…でも、それだけじゃなくて、世の中にはまだもっと綺麗なものとか心動かされるようなものがある…。」
利吉さんが私の手を握った。
「あなたに会ってから、私の世界の色は変わりました。それまで何でもなかったようなことが、ささやかなことが楽しく感じられるんです。」
利吉さんが私の腕をそっと引いて、ぎゅっと抱き締めた。
「たまみさんは私が行く先々で見聞きしてきた話を楽しそうに聞いてくれますが…私は、あなたにも色んな世界を見せたい。…忍術学園の中だけでなく、もっと外の世界を…外にある色んな素晴らしいものをもっと見せたいんです…。」
「利吉さん…」
利吉さんは広がる花畑に目を向けた。
その目は遠くを見ているけれど、とても真剣なものだった。
これほどストレートに好意を示してくれるなんて…。
…でも、申し訳ないけれど、私には想い人がいる。
利吉さんは以前、答えはゆっくり決めてほしいと言っていたけれど不誠実なことはよくない。
…きちんと言わなければ。
私が口を開こうとしたそのとき。
「たまみさん」
利吉さんの人差し指が私の唇をトンとふさいだ。
「私がこんな風にあなたを想っているのは…迷惑ですか?」
悲しげなその顔に、私は頭をふった。
「迷惑とかそういうのではなくて…私は」
「なら、いいんです。」
利吉さんは私の頭を抱きかかえて自分の胸に押しあてた。
「…あなたの気持ちが、今…どこにあるかは、知っています。でも、迷惑でないなら…私にももう少し時間をください。」
「利吉さん…」
離れようとすると、更にきつく抱きしめられた。
「…土井先生は私にとっても兄のような…忍としても人としても尊敬している人です。でも…それでも諦められないくらいどうしようもなく…たまみさんのことが……」
真剣な想いが伝わってきて胸に刺さった。
そこには愛情だけでなく理屈では動けない心情の吐露があり、何と返せばよいのか言葉を探した。
いっそのこと、自分の正体を…異なる世界から来た、普通ではない人間だと話してしまおうか。
でも、それでは学園長先生との約束を反故にしてしまう。
…なら、明かせる範囲での真実を…。
「…私は、自分が何者かも分かっていない…得体の知れない人です。過去にどこで何をしていたかも分かりません。どうしてそこまで…。」
「たまみさんが、たとえ敵に送り込まれた間者であっても構いません。例えば何かの催眠術とかで記憶を消して潜入させられているとかそんな事情があったとしても。逆に、何かに狙われて忍術学園で匿われているのだとしても。…何があっても私はあなたの味方です。邪魔なものは私が排除して、あなたを守ってみせます。」
利吉さんの目が鋭くなった。
まるでそんなことは想定内とでもいうように即答されて驚くと、利吉さんは慌てて言葉を足した。
「あ、決してあなたを疑っているとかではなくて。もしそうであってもたまみさんへの気持ちは変わらないということです。」
利吉さんは私の髪をサラリとすくい髪に口づけた。
「…嫌ですか?」
「嫌とかじゃなくて……私は利吉さんの気持ちに応えることが」
そう言かけると、利吉さんは私の背をぎゅっと抱きしめて肩口で囁くように遮った。
「たまみさんが嫌じゃないなら…、もう少しこのまま……。」
懇願するような切実な声音に、私は抵抗する腕の力をゆるめた。
もういっそ、嘘でも嫌だと言うべきだったろうか。
鋭利な刀で切るように、とりつく島もないほどに遠ざけた方が優しいのかもしれない。
でも、もし自分が利吉さんの立場だったら…世界の色を変えてしまうほどの相手…私でも色んな意味で時間がほしいと願うと思った。
結局、返すべき言葉を見つけらなくて、私は黙ったまま利吉さんの腕の中でその鼓動を聞いていた。
「あれ、これって来た道と違うような…」
「今頃気づいたんですか?」
「えっ」
驚いて利吉さんを見上げると、彼は少し先を指差した。
「ここは金楽寺へ行く道の途中なんですけど、景色の綺麗なところがあるんです。」
指の先を見ると、そこには大きな花畑が広がっていた。
「わぁ…!すごい!!」
一面の花畑で、色とりどりの花が咲き乱れ、甘い香りがした。
「こんなところがあるんですね…知りませんでした!」
利吉さんは頷いた。
「私も最近知ったんです。…以前の私なら素通りしているところですが、これを見たときに是非あなたに見せたいと思いまして…。」
利吉さんは私にゆっくりと向き直った。
真剣な瞳が真っ直ぐに私を見つめる。
「今まで忍として、冷たい世界の汚いものも多く見てきましたが…でも、それだけじゃなくて、世の中にはまだもっと綺麗なものとか心動かされるようなものがある…。」
利吉さんが私の手を握った。
「あなたに会ってから、私の世界の色は変わりました。それまで何でもなかったようなことが、ささやかなことが楽しく感じられるんです。」
利吉さんが私の腕をそっと引いて、ぎゅっと抱き締めた。
「たまみさんは私が行く先々で見聞きしてきた話を楽しそうに聞いてくれますが…私は、あなたにも色んな世界を見せたい。…忍術学園の中だけでなく、もっと外の世界を…外にある色んな素晴らしいものをもっと見せたいんです…。」
「利吉さん…」
利吉さんは広がる花畑に目を向けた。
その目は遠くを見ているけれど、とても真剣なものだった。
これほどストレートに好意を示してくれるなんて…。
…でも、申し訳ないけれど、私には想い人がいる。
利吉さんは以前、答えはゆっくり決めてほしいと言っていたけれど不誠実なことはよくない。
…きちんと言わなければ。
私が口を開こうとしたそのとき。
「たまみさん」
利吉さんの人差し指が私の唇をトンとふさいだ。
「私がこんな風にあなたを想っているのは…迷惑ですか?」
悲しげなその顔に、私は頭をふった。
「迷惑とかそういうのではなくて…私は」
「なら、いいんです。」
利吉さんは私の頭を抱きかかえて自分の胸に押しあてた。
「…あなたの気持ちが、今…どこにあるかは、知っています。でも、迷惑でないなら…私にももう少し時間をください。」
「利吉さん…」
離れようとすると、更にきつく抱きしめられた。
「…土井先生は私にとっても兄のような…忍としても人としても尊敬している人です。でも…それでも諦められないくらいどうしようもなく…たまみさんのことが……」
真剣な想いが伝わってきて胸に刺さった。
そこには愛情だけでなく理屈では動けない心情の吐露があり、何と返せばよいのか言葉を探した。
いっそのこと、自分の正体を…異なる世界から来た、普通ではない人間だと話してしまおうか。
でも、それでは学園長先生との約束を反故にしてしまう。
…なら、明かせる範囲での真実を…。
「…私は、自分が何者かも分かっていない…得体の知れない人です。過去にどこで何をしていたかも分かりません。どうしてそこまで…。」
「たまみさんが、たとえ敵に送り込まれた間者であっても構いません。例えば何かの催眠術とかで記憶を消して潜入させられているとかそんな事情があったとしても。逆に、何かに狙われて忍術学園で匿われているのだとしても。…何があっても私はあなたの味方です。邪魔なものは私が排除して、あなたを守ってみせます。」
利吉さんの目が鋭くなった。
まるでそんなことは想定内とでもいうように即答されて驚くと、利吉さんは慌てて言葉を足した。
「あ、決してあなたを疑っているとかではなくて。もしそうであってもたまみさんへの気持ちは変わらないということです。」
利吉さんは私の髪をサラリとすくい髪に口づけた。
「…嫌ですか?」
「嫌とかじゃなくて……私は利吉さんの気持ちに応えることが」
そう言かけると、利吉さんは私の背をぎゅっと抱きしめて肩口で囁くように遮った。
「たまみさんが嫌じゃないなら…、もう少しこのまま……。」
懇願するような切実な声音に、私は抵抗する腕の力をゆるめた。
もういっそ、嘘でも嫌だと言うべきだったろうか。
鋭利な刀で切るように、とりつく島もないほどに遠ざけた方が優しいのかもしれない。
でも、もし自分が利吉さんの立場だったら…世界の色を変えてしまうほどの相手…私でも色んな意味で時間がほしいと願うと思った。
結局、返すべき言葉を見つけらなくて、私は黙ったまま利吉さんの腕の中でその鼓動を聞いていた。