第31話 薬草摘み
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私は自分から言い出したことなのに、緊張して声が上ずった。
「…わかりました。じゃああっちを向いているので、服を脱いでこれで拭いて、この布をかぶっててくれますか。」
努めて冷静に、水気を拭く布と、隠れ身の術で隠れるときに使う大きな布を渡した。
彼女は震える手でそれを受けとった。
私は彼女に背を向けて自らも忍装束を脱いで絞り、雨に濡れた体を拭いた。
外はまだ激しい雨と雷が続いていて小屋の屋根を雨が打ちつける。
そのなかで後ろから聞こえてくる、衣擦れの音、水を含む衣が落ちる音、体を拭く音…。
…落ち着け。
これは、彼女のために致し方ないことであって、決してやましい気持ちからでは……。
私の心中の嵐など知るよしもなく、やがてバサッという音がして彼女の声が響いた。
「…できました。」
「そっち、向いてもいいですか?」
私が振り向くと、彼女は大きな布にくるまり体育座りをしてこちらに背を向けていた。
「…いいですか?」
もう一度聞くとたまみさんは頷き、くるまっている布を持つ手をゆるめた。
布が落ちて隙間から見えた白い背中を、後ろから抱きしめるように座る。
自分の胸に触れた彼女の背中はとても冷たかった。
腕を前に回し、冷たくなった足に触れた。
こんなに冷たくなって可哀想に…。
「…土井先生、あったかい…。」
たまみさんが後ろに…私にもたれかかってきた。
…落ち着け。
彼女は弱ってるんだ。
こんなに冷えて辛かったろうに…。
私はぐっと目を閉じると彼女の膝の下と背中に腕を回して持ち上げた。
冷たい床の上に座らなくていいように、私があぐらをかいた上に彼女を乗せて、2人まとめて布にくるまった。
私の膝の上で体育座りをする彼女を、たまごを温めるようにぎゅうっと包み込む。
冷たく冷えた身体が少しでも早く温まるように…。
「…痛いところは無いですか?」
「はい…」
彼女の足をさすって温める。
足首や足の甲、つま先に触れながら痛がる素振りがないか観察してみた。
「感覚は?」
「…あります」
「こう動かしても痛くない?」
「はい」
彼女の反応からするに、冷たくなってはいるが足を痛めてはいないようだ。
同様に腕から指先、頭、首から背中にも触れて確認していく。
そのまま横腹に触れるとたまみさんがピクリと動いた。
「!…痛いですか?」
まさか肋骨を…?
「いえ、くすぐったくて…。」
気づけば彼女は顔を赤くして恥ずかしそうにしていた。
傷めたところがないか確認していたつもりだったが、よく考えると裸の女性の肌をあちこち触ってこれじゃあまるでいやらしい奴みたいじゃないか?!
「す、すみません!その、怪我はないかなと思って…勝手に触ってすみません!」
慌てて謝るとたまみさんは首を振って頬を赤らめて曖昧に微笑んだ。
「いえ……大丈夫、です…。」
…恥ずかしそうに目を伏せるその表情に一瞬どきりとした。
もっと触れたい衝動にかられたが、相手は怪我人だと気持ちを圧し殺して冷静に努める。
…とりあえず捻挫やひねったりしているところはなさそうだ。
「…あの、土井先生…」
「はい?」
「……もっと、くっついてもいいですか?」
たまみさんはそう言うとクシャミをして身震いした。
「はい、もちろん…」
どう温めてあげたら温かいだろうと考えていると、たまみさんはくるりと向きを変えて私にぎゅうっと抱きついた。
「!!」
彼女の冷たい身体が私にぴたりとくっつく。
なんて冷たい…!
いや柔らかくて気持ちいい…!
いやいや違う、温めてあげなくては…!!
彼女の背中に腕を回してぎゅっと抱きしめ返す。
「せんせ…あったかい……」
「………っ」
まてまてまて!
弱っている相手に何を考えて…!
だめだ、今はだめだ…!
心頭滅却すれば火もまた…!
「……寒さ、マシになってきました?」
平静を装い聞いてみる。
「…まだ寒いけど…土井先生がいてくれるから安心です…」
たまみさんは甘えた口調で私の肩に冷たい頬をくっつけた。
「……っ!」
これは人命救助というか医療行為だ…!
邪な気持ちを持ってはいかん…!
そう自分に言い聞かせ暗示をかける。
だが、好いた相手とこれほど素肌を密着させて平静でいられるわけもなく。
ましてやここは誰もいない密室で…。
いかん、そんなことを考えていては余計に…!
「…土井先生……。」
「……はい。」
「……………」
「……………」
…気まずい!
私はとりあえずごまかすために何か話題はないかと考えを巡らせた。
その間も手は無意識のうちに彼女の背中や手足を撫でて温めて、全体的に少しずつ温度が戻ってきているのを感じた。
…すべすべして柔らかくて気持ちいいな。
じゃなくて!
「えー、熊は、子熊が近くにいて警戒心が強くなっていたらしいですよ。」
何か話さねば。
「そうなんですか、前に見たのより大きくて焦りました。」
いま焦っているのは私なのですが。
「そういえば2回目ですよね、熊に会うの」
「はい、びっくりしすぎて心臓が止まるかと思いました。」
「これからは、保健委員を手伝うのは学園のなかにいるときだけにしてください。私の心臓がもたない…。」
この早鐘を打つ心臓の音が彼女に聞こえているのではないかとヒヤヒヤする。
「わかりました…すみません。」
「たまみさんは悪くないですよ。ただ運が悪かっただけです。」
「土井先生の仰ったとおりでしたね…」
「まさかこんなことになるとは私も思いませんでしたが…。」
ほんとに。
まさかこんな形で…きみにこんな風に触れることになるなんて。
もどかしくておかしくなりそうだ。
「あ、あの…土井先生…?」
無意識のうちに強く抱きしめていた。
「!…す、すまない。つい…」
私は大きく息を吐いた。
「もう少しで雷も遠のくでしょう。それまで…もう少しの辛抱です。」
半ば自分に言い聞かせるようにそう呟いて、私は外の音に耳を澄ませた。
「…わかりました。じゃああっちを向いているので、服を脱いでこれで拭いて、この布をかぶっててくれますか。」
努めて冷静に、水気を拭く布と、隠れ身の術で隠れるときに使う大きな布を渡した。
彼女は震える手でそれを受けとった。
私は彼女に背を向けて自らも忍装束を脱いで絞り、雨に濡れた体を拭いた。
外はまだ激しい雨と雷が続いていて小屋の屋根を雨が打ちつける。
そのなかで後ろから聞こえてくる、衣擦れの音、水を含む衣が落ちる音、体を拭く音…。
…落ち着け。
これは、彼女のために致し方ないことであって、決してやましい気持ちからでは……。
私の心中の嵐など知るよしもなく、やがてバサッという音がして彼女の声が響いた。
「…できました。」
「そっち、向いてもいいですか?」
私が振り向くと、彼女は大きな布にくるまり体育座りをしてこちらに背を向けていた。
「…いいですか?」
もう一度聞くとたまみさんは頷き、くるまっている布を持つ手をゆるめた。
布が落ちて隙間から見えた白い背中を、後ろから抱きしめるように座る。
自分の胸に触れた彼女の背中はとても冷たかった。
腕を前に回し、冷たくなった足に触れた。
こんなに冷たくなって可哀想に…。
「…土井先生、あったかい…。」
たまみさんが後ろに…私にもたれかかってきた。
…落ち着け。
彼女は弱ってるんだ。
こんなに冷えて辛かったろうに…。
私はぐっと目を閉じると彼女の膝の下と背中に腕を回して持ち上げた。
冷たい床の上に座らなくていいように、私があぐらをかいた上に彼女を乗せて、2人まとめて布にくるまった。
私の膝の上で体育座りをする彼女を、たまごを温めるようにぎゅうっと包み込む。
冷たく冷えた身体が少しでも早く温まるように…。
「…痛いところは無いですか?」
「はい…」
彼女の足をさすって温める。
足首や足の甲、つま先に触れながら痛がる素振りがないか観察してみた。
「感覚は?」
「…あります」
「こう動かしても痛くない?」
「はい」
彼女の反応からするに、冷たくなってはいるが足を痛めてはいないようだ。
同様に腕から指先、頭、首から背中にも触れて確認していく。
そのまま横腹に触れるとたまみさんがピクリと動いた。
「!…痛いですか?」
まさか肋骨を…?
「いえ、くすぐったくて…。」
気づけば彼女は顔を赤くして恥ずかしそうにしていた。
傷めたところがないか確認していたつもりだったが、よく考えると裸の女性の肌をあちこち触ってこれじゃあまるでいやらしい奴みたいじゃないか?!
「す、すみません!その、怪我はないかなと思って…勝手に触ってすみません!」
慌てて謝るとたまみさんは首を振って頬を赤らめて曖昧に微笑んだ。
「いえ……大丈夫、です…。」
…恥ずかしそうに目を伏せるその表情に一瞬どきりとした。
もっと触れたい衝動にかられたが、相手は怪我人だと気持ちを圧し殺して冷静に努める。
…とりあえず捻挫やひねったりしているところはなさそうだ。
「…あの、土井先生…」
「はい?」
「……もっと、くっついてもいいですか?」
たまみさんはそう言うとクシャミをして身震いした。
「はい、もちろん…」
どう温めてあげたら温かいだろうと考えていると、たまみさんはくるりと向きを変えて私にぎゅうっと抱きついた。
「!!」
彼女の冷たい身体が私にぴたりとくっつく。
なんて冷たい…!
いや柔らかくて気持ちいい…!
いやいや違う、温めてあげなくては…!!
彼女の背中に腕を回してぎゅっと抱きしめ返す。
「せんせ…あったかい……」
「………っ」
まてまてまて!
弱っている相手に何を考えて…!
だめだ、今はだめだ…!
心頭滅却すれば火もまた…!
「……寒さ、マシになってきました?」
平静を装い聞いてみる。
「…まだ寒いけど…土井先生がいてくれるから安心です…」
たまみさんは甘えた口調で私の肩に冷たい頬をくっつけた。
「……っ!」
これは人命救助というか医療行為だ…!
邪な気持ちを持ってはいかん…!
そう自分に言い聞かせ暗示をかける。
だが、好いた相手とこれほど素肌を密着させて平静でいられるわけもなく。
ましてやここは誰もいない密室で…。
いかん、そんなことを考えていては余計に…!
「…土井先生……。」
「……はい。」
「……………」
「……………」
…気まずい!
私はとりあえずごまかすために何か話題はないかと考えを巡らせた。
その間も手は無意識のうちに彼女の背中や手足を撫でて温めて、全体的に少しずつ温度が戻ってきているのを感じた。
…すべすべして柔らかくて気持ちいいな。
じゃなくて!
「えー、熊は、子熊が近くにいて警戒心が強くなっていたらしいですよ。」
何か話さねば。
「そうなんですか、前に見たのより大きくて焦りました。」
いま焦っているのは私なのですが。
「そういえば2回目ですよね、熊に会うの」
「はい、びっくりしすぎて心臓が止まるかと思いました。」
「これからは、保健委員を手伝うのは学園のなかにいるときだけにしてください。私の心臓がもたない…。」
この早鐘を打つ心臓の音が彼女に聞こえているのではないかとヒヤヒヤする。
「わかりました…すみません。」
「たまみさんは悪くないですよ。ただ運が悪かっただけです。」
「土井先生の仰ったとおりでしたね…」
「まさかこんなことになるとは私も思いませんでしたが…。」
ほんとに。
まさかこんな形で…きみにこんな風に触れることになるなんて。
もどかしくておかしくなりそうだ。
「あ、あの…土井先生…?」
無意識のうちに強く抱きしめていた。
「!…す、すまない。つい…」
私は大きく息を吐いた。
「もう少しで雷も遠のくでしょう。それまで…もう少しの辛抱です。」
半ば自分に言い聞かせるようにそう呟いて、私は外の音に耳を澄ませた。