第39話 振り返れば
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たまみさんを部屋に送り届けて、私はそのまま自室には戻らず少し歩いてから帰ることにした。
山田先生が眠りについてから部屋を出てきたつもりだが、気持ちを落ち着かせてから自室に戻ろうと思った。
池の近くにしゃがみこみ大きく息を吐き出す。
思い出すのは先程の彼女の嬉しそうな笑顔。
…よかった。
やっと、気持ちが通じあえた…。
抱きしめたときの感触を思い出す。
小さく温かな彼女の体。
艶やかな髪のいい香り。
柔らかい唇…。
思い出してまた顔が赤くなる。
唇を重ねたときに漏れ聞こえた彼女の吐息と微かな声。
その声が想像以上に可愛くて、一瞬、我を忘れそうになった。
私はまた大きく息を吐いて頭をかいた。
いかんいかん、落ち着くためにこうしているのに。
私は立ち上がり、あてもなく歩いてみた。
食堂の近くを通りすぎる。
たまみさんが食堂の手伝いをするようになって、最初は随分と大人気なくやきもちをやいたものだ。
一年は組の生徒達も寂しがって、結果として何故か一緒に風呂に入ることになって…。
思い出して笑ってしまった。
あのあと、は組の奴らが私達と一緒に風呂に入ったとか自慢したものだから、その誤解…誤解と言いきれるのか微妙だが…を解くのに非常にものすごくかなり苦労した。
何だかそんな苦い思い出も、今となれば楽しかったなと思った。
彼女は食堂でもとても熱心に料理を学んでいて、最近では彼女が最初から最後まで作った料理が出されるときもあるほどになった。
初めてうちに来て雑炊を作ってくれたときも感動したが、食堂で彼女の料理を食べる度に心温まる気持ちになった。
ときに元気に、ときに穏やかによく笑う彼女は、生徒達ともあっという間に打ち解けて。
カウンターで他の教師や生徒と楽しげに話す姿を見る度に気になってちらちらと様子を伺っていたが、そんな彼女が私を選んでくれたことを嬉しく思う。
ふと、地面に咲いている花が目に入った。
そういえば、彼女は花売りや内職のバイトも頑張っているな。
初めて町へ花を売りに行くと聞いたときは心配で後から見に行き、案の定悪い客がいて危ない目にあいそうになっていたり。
きり丸からバイトのいろはを教えて貰っているようだが危なっかしくて目が離せない。
潮干狩りに行くと聞いたときも心配になって一緒に行ったが、これは逆に私もびしょ濡れになって帰った。
普段、子ども達の前では『教師』をしている私だが、彼女の前では教師じゃなく童心にかえって楽しんでいる自分がいた。
他にも熊やサソリに襲われかけたり、崖から落ちたり川で流されたり…思えば一年は組の生徒達と同じくらい色々なことが起きた。
…彼女といると飽きることがないな。
私はくすりと笑った。
二人で職員室で仕事をしているときも、そうでないときも、彼女となら沈黙が全然気にならなかった。
なぜか穏やかに流れる時間がとても心地よかった。
こうして振り返ってみると、この短い間にたまみさんとの思い出はたくさんできていて。
これからも一緒に色々あるんだろうな。
その隣にいるのが自分であることに嬉しくなった。
…さて、そろそろ部屋に戻るか。
私は自室に向かって歩き始めた。
山田先生が眠りについてから部屋を出てきたつもりだが、気持ちを落ち着かせてから自室に戻ろうと思った。
池の近くにしゃがみこみ大きく息を吐き出す。
思い出すのは先程の彼女の嬉しそうな笑顔。
…よかった。
やっと、気持ちが通じあえた…。
抱きしめたときの感触を思い出す。
小さく温かな彼女の体。
艶やかな髪のいい香り。
柔らかい唇…。
思い出してまた顔が赤くなる。
唇を重ねたときに漏れ聞こえた彼女の吐息と微かな声。
その声が想像以上に可愛くて、一瞬、我を忘れそうになった。
私はまた大きく息を吐いて頭をかいた。
いかんいかん、落ち着くためにこうしているのに。
私は立ち上がり、あてもなく歩いてみた。
食堂の近くを通りすぎる。
たまみさんが食堂の手伝いをするようになって、最初は随分と大人気なくやきもちをやいたものだ。
一年は組の生徒達も寂しがって、結果として何故か一緒に風呂に入ることになって…。
思い出して笑ってしまった。
あのあと、は組の奴らが私達と一緒に風呂に入ったとか自慢したものだから、その誤解…誤解と言いきれるのか微妙だが…を解くのに非常にものすごくかなり苦労した。
何だかそんな苦い思い出も、今となれば楽しかったなと思った。
彼女は食堂でもとても熱心に料理を学んでいて、最近では彼女が最初から最後まで作った料理が出されるときもあるほどになった。
初めてうちに来て雑炊を作ってくれたときも感動したが、食堂で彼女の料理を食べる度に心温まる気持ちになった。
ときに元気に、ときに穏やかによく笑う彼女は、生徒達ともあっという間に打ち解けて。
カウンターで他の教師や生徒と楽しげに話す姿を見る度に気になってちらちらと様子を伺っていたが、そんな彼女が私を選んでくれたことを嬉しく思う。
ふと、地面に咲いている花が目に入った。
そういえば、彼女は花売りや内職のバイトも頑張っているな。
初めて町へ花を売りに行くと聞いたときは心配で後から見に行き、案の定悪い客がいて危ない目にあいそうになっていたり。
きり丸からバイトのいろはを教えて貰っているようだが危なっかしくて目が離せない。
潮干狩りに行くと聞いたときも心配になって一緒に行ったが、これは逆に私もびしょ濡れになって帰った。
普段、子ども達の前では『教師』をしている私だが、彼女の前では教師じゃなく童心にかえって楽しんでいる自分がいた。
他にも熊やサソリに襲われかけたり、崖から落ちたり川で流されたり…思えば一年は組の生徒達と同じくらい色々なことが起きた。
…彼女といると飽きることがないな。
私はくすりと笑った。
二人で職員室で仕事をしているときも、そうでないときも、彼女となら沈黙が全然気にならなかった。
なぜか穏やかに流れる時間がとても心地よかった。
こうして振り返ってみると、この短い間にたまみさんとの思い出はたくさんできていて。
これからも一緒に色々あるんだろうな。
その隣にいるのが自分であることに嬉しくなった。
…さて、そろそろ部屋に戻るか。
私は自室に向かって歩き始めた。