第38話 星空のしたで
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その晩。
私は部屋でそわそわしながら座っていた。
『今夜、部屋で待っていてくれますか。』
土井先生の声が脳裏に響く。
そして昼間の言葉を思い出して赤面し、ぶんぶんと頭を振ったりした。
誰かに見られていたら、絶対挙動不審だと思われていたに違いない。
どれくらいそうしていたのだろう。
一人でドキドキしすぎて疲れてきた頃、障子の隙間から土井先生の声がした。
「たまみさん。」
私は胸の高鳴りを抑えて、そっと障子をあけた。
「すみません、お待たせしてしまいました…。今いいですか?」
私が「はい」と頷くと、土井先生は周りを見渡してから、おもむろに私を横抱きに抱いた。
「!?」
「ちょっと、跳びますよ。」
土井先生は勢いよく跳躍し、一番高い屋根の上まで登るとゆっくり私を降ろして座らせた。
土井先生が私の横に並んで座る。
「今夜は星が綺麗なので…。」
土井先生は夜空を仰いだ。
私もつられて見上げる。
そこには満天の星空が広がっていた。
「すごい…!」
「下から見るよりも、ここから見た方がよく見えますからね。」
星明かりで微かに見える土井先生の横顔。
静かな闇に響くその声も。
美しい夜空と相まって幻想的にすら感じた。
私は星をよく見ようとして上を向いた。
そして次の瞬間、バランスを崩して後ろに倒れそうになった。
「わっ!」
「おっと、」
土井先生の腕が包み込むように支えてくれた。
「す、すみません…!」
慌てて謝ると、そのまま両腕でぎゅっと抱きしめられた。
「……昨日、ちゃんと言えなかったから。」
土井先生が静かに口を開いた。
私は土井先生の胸から顔を外してその目を見つめた。
「…たまみさん。」
真剣な眼差し。
風が土井先生の長い髪を揺らした。
土井先生は一呼吸置いて、凛とした声で言った。
「…きみが好きだ。」
透き通るその声が、星空に響いた。
時が、止まったように感じた。
私は土井先生の衣をぎゅっと握った。
「私も…土井先生が…好き…」
「たまみさん…」
大きな手が私の頬に触れる。
ゆっくりと顔が近づいてきて、私は瞳を閉じた。
土井先生の唇が、私の唇に優しく触れた。
すぐに顔が離れて、胸に甘い痺れを感じながら目を開けると、もう一度、今度は強く口付けられた。
唇を食むように何度も角度を変えて繰り返される口付け。
やがて名残惜しそうにゆっくり離れると、力強く抱きしめられた。
温かく逞しい胸。
土井先生の匂い。
そのまま、静寂のなかでお互いの温もりを感じていた。
「…きみが初めて現れたときは驚いたけど…ここに、来てくれてよかった。」
「土井先生…。」
私はずっと心に引っ掛かっていたことを聞いた。
「私は…どこから来たかもよく分からない人間なのに…私なんかでいいんですか?」
「どこから来たのであっても…何をしていたのであっても、たまみさんはたまみさんだ。」
土井先生が私の頭を撫でた。
「ちょっとうっかりしてるとこもあるけど、真っ直ぐで何事にも一生懸命で…生徒達のことも大事にしてくれて…。」
大きな手が私の顔を胸元に引き寄せる。
「そんなきみを、いつの間にかこんなに………好きになってしまっていた…。」
そう言うと土井先生は私の髪に口付けた。
「…きみこそ、私でいいのかい?」
「土井先生が、いいんです…。」
私は土井先生を見つめながら言った。
「いつも優しくて、でもいざとなったら頼もしくて…いつも私が困ってるときには助けくれて。生徒想いで毎日一生懸命頑張ってて…でも練り物が食べられないとかちょっとお茶目なところもあったりする…そんな土井先生が…大好きです…。」
土井先生は赤くなって嬉しそうに照れて笑った。
そしてふと星を見上げて、静かに言った。
「…前にきみは自分がいつ消えてしまうかも分からないと言っていたけど…それは私達忍者も…誰でもそうだ。特に今という時代は…人は皆、命がいつ尽きてしまうかは分からない…それと同じ事だと思う。」
土井先生は私の髪を撫でた。
「私は…たまみさんがここに居てくれてるだけで…それだけでいい。」
「土井先生…」
「もう、他の誰にも渡さないし……もとの世界にも帰らせないけど…いいかい?」
少し不安そうに覗きこむ瞳。
私は一度目を伏せてから、はっきりと言った。
「…はい。土井先生の傍に居たいです。」
土井先生は安心したように微笑んだ。
「たまみさん…」
土井先生の指が私の顎を上に向け、そのままついばむように何度も土井先生の唇が重ねられた。
合間で無意識にこぼれる吐息に、土井先生が「可愛い…」と小さく呟く。
静かな夜に、二人の声だけが人知れず微かに響いていた。
私は部屋でそわそわしながら座っていた。
『今夜、部屋で待っていてくれますか。』
土井先生の声が脳裏に響く。
そして昼間の言葉を思い出して赤面し、ぶんぶんと頭を振ったりした。
誰かに見られていたら、絶対挙動不審だと思われていたに違いない。
どれくらいそうしていたのだろう。
一人でドキドキしすぎて疲れてきた頃、障子の隙間から土井先生の声がした。
「たまみさん。」
私は胸の高鳴りを抑えて、そっと障子をあけた。
「すみません、お待たせしてしまいました…。今いいですか?」
私が「はい」と頷くと、土井先生は周りを見渡してから、おもむろに私を横抱きに抱いた。
「!?」
「ちょっと、跳びますよ。」
土井先生は勢いよく跳躍し、一番高い屋根の上まで登るとゆっくり私を降ろして座らせた。
土井先生が私の横に並んで座る。
「今夜は星が綺麗なので…。」
土井先生は夜空を仰いだ。
私もつられて見上げる。
そこには満天の星空が広がっていた。
「すごい…!」
「下から見るよりも、ここから見た方がよく見えますからね。」
星明かりで微かに見える土井先生の横顔。
静かな闇に響くその声も。
美しい夜空と相まって幻想的にすら感じた。
私は星をよく見ようとして上を向いた。
そして次の瞬間、バランスを崩して後ろに倒れそうになった。
「わっ!」
「おっと、」
土井先生の腕が包み込むように支えてくれた。
「す、すみません…!」
慌てて謝ると、そのまま両腕でぎゅっと抱きしめられた。
「……昨日、ちゃんと言えなかったから。」
土井先生が静かに口を開いた。
私は土井先生の胸から顔を外してその目を見つめた。
「…たまみさん。」
真剣な眼差し。
風が土井先生の長い髪を揺らした。
土井先生は一呼吸置いて、凛とした声で言った。
「…きみが好きだ。」
透き通るその声が、星空に響いた。
時が、止まったように感じた。
私は土井先生の衣をぎゅっと握った。
「私も…土井先生が…好き…」
「たまみさん…」
大きな手が私の頬に触れる。
ゆっくりと顔が近づいてきて、私は瞳を閉じた。
土井先生の唇が、私の唇に優しく触れた。
すぐに顔が離れて、胸に甘い痺れを感じながら目を開けると、もう一度、今度は強く口付けられた。
唇を食むように何度も角度を変えて繰り返される口付け。
やがて名残惜しそうにゆっくり離れると、力強く抱きしめられた。
温かく逞しい胸。
土井先生の匂い。
そのまま、静寂のなかでお互いの温もりを感じていた。
「…きみが初めて現れたときは驚いたけど…ここに、来てくれてよかった。」
「土井先生…。」
私はずっと心に引っ掛かっていたことを聞いた。
「私は…どこから来たかもよく分からない人間なのに…私なんかでいいんですか?」
「どこから来たのであっても…何をしていたのであっても、たまみさんはたまみさんだ。」
土井先生が私の頭を撫でた。
「ちょっとうっかりしてるとこもあるけど、真っ直ぐで何事にも一生懸命で…生徒達のことも大事にしてくれて…。」
大きな手が私の顔を胸元に引き寄せる。
「そんなきみを、いつの間にかこんなに………好きになってしまっていた…。」
そう言うと土井先生は私の髪に口付けた。
「…きみこそ、私でいいのかい?」
「土井先生が、いいんです…。」
私は土井先生を見つめながら言った。
「いつも優しくて、でもいざとなったら頼もしくて…いつも私が困ってるときには助けくれて。生徒想いで毎日一生懸命頑張ってて…でも練り物が食べられないとかちょっとお茶目なところもあったりする…そんな土井先生が…大好きです…。」
土井先生は赤くなって嬉しそうに照れて笑った。
そしてふと星を見上げて、静かに言った。
「…前にきみは自分がいつ消えてしまうかも分からないと言っていたけど…それは私達忍者も…誰でもそうだ。特に今という時代は…人は皆、命がいつ尽きてしまうかは分からない…それと同じ事だと思う。」
土井先生は私の髪を撫でた。
「私は…たまみさんがここに居てくれてるだけで…それだけでいい。」
「土井先生…」
「もう、他の誰にも渡さないし……もとの世界にも帰らせないけど…いいかい?」
少し不安そうに覗きこむ瞳。
私は一度目を伏せてから、はっきりと言った。
「…はい。土井先生の傍に居たいです。」
土井先生は安心したように微笑んだ。
「たまみさん…」
土井先生の指が私の顎を上に向け、そのままついばむように何度も土井先生の唇が重ねられた。
合間で無意識にこぼれる吐息に、土井先生が「可愛い…」と小さく呟く。
静かな夜に、二人の声だけが人知れず微かに響いていた。