第32話 端午の節句
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五月五日は端午の節句。
忍術学園では毎年食堂でちまきを作って皆で食べているらしい。
食堂のお手伝いとして私も大量のちまき作りを手伝った。
「いっただっきまーす!」
可愛い生徒達が笑顔でちまきを次々に食べていく。
その姿に癒されながら、みんなの無病息災を願って頑張って作ったかいがあったなぁと微笑む。
横を見ると、食堂のおばちゃんも満足げに皆の食べる姿を見ていた。
お喋りしながらゆっくりもぐもぐと食べる一年生の横で、食満くんと潮江くんが早食い対決を始めて善法寺くんが止めに入ったり、食堂はみんなの活気で賑わっていた。
「いやはや今年も沢山作りましたなぁ。」
「食堂のおばちゃん、たまみさん、お疲れ様です。」
山田先生と土井先生もにこにこと食堂にやって来た。
その両手には菖蒲の葉が抱えられている。
「みんなで菖蒲もいっぱい採ってきたので使ってください。」
土井先生が食堂のおばちゃんに菖蒲の束を渡した。
ふわりと爽やかな香りがする。
私はそれを繁々と眺めて食堂のおばちゃんに聞いた。
「これはどうするんですか?」
「菖蒲はねぇ、邪気を払うと言われているのよ。菖蒲酒にしたりお風呂に入れて菖蒲湯にしたり…後で一緒に作りましょう。」
「はい!」
お酒を作るのもお風呂に入れるのも面白そう……あ、でもそれなら虫が付いてないかよく見ないと…葉っぱものは要注意だからなぁ……。
真剣な表情で菖蒲の葉をじっくり見ていると、食堂の入り口から大きな声がした。
「端午の節句か、そういえばそんな時期だな!」
振り返ると、大木先生がかご一杯のラッキョウを抱えて食堂に入ってきた。
「あら大木先生、いつもありがとうございます。よければ大木先生も、ちまきいかがですか?」
「食堂のおばちゃん、ではお言葉に甘えて1つ頂こうかな。」
すると大木先生はパッと私の方を見てニッと笑った。
「たまみ、悪いが食べさせてくれないか。」
「はい?」
大木先生は無邪気な子どものようにあんぐりと口をあけてエサを待つ雛鳥みたいになった。
確かに大木先生の両手は土まみれで重そうなかごを持ってはいるけど…。
私がなんと断ろうかと考えるより先に、目の前に黒い背中が現れて視界が遮られた。
土井先生がぐいっと私を後ろに引っ張って自分の背に隠す。
「大木先生、そういうことは…」
「両手が土まみれの荷物でふさがっているから頼んだだけだが。」
「かごを地面に置いて手を洗ってくればいいでしょう。」
睨み合う二人の不穏な空気に私がおろおろとしだすと、突然誰かが大木先生の口にちまきをつっこんだ。
「んむっ!?」
驚いて見るとそこには伝子さんの姿があって。
「やだぁ~あなたたち、私を取り合うのはそれくらいにして落ち着いてちょうだい。ほら、土井先生もあーん?」
「けっ、結構です!」
「む…!ごくん!だ、誰も山田先生などに頼んどりません!」
「などとはなんだ!伝子とお呼び!」
すると、そのとき廊下から大きな声が聞こえてきて。
「大木雅之助ー!そんなにちまきが食べたいなら私が特製のやつを食べさせてやろう!納豆入りのちまきだー!」
「野村雄三!よぉーし、そっちがその気ならこちらもラッキョウ入りのちまきを作って…!!」
「ちょっと2人ともお残しは許しませんよー!!!」
場が混乱してきた状況を見て、食べ終わった生徒達がそそくさと食堂から出ていく。
すると土井先生がくるりと私を振り返り、眉をハの字にして苦笑した。
「……たまみさん、菖蒲の葉、一緒に洗いに行きましょうか。」
「あ、はい…。」
このまま放っておいていいのかなと気にはなったけれど、また変に巻き込まれても困るなぁと思い直し、私は土井先生と菖蒲の葉を穏やかに洗ってやり過ごしたのだった。
忍術学園では毎年食堂でちまきを作って皆で食べているらしい。
食堂のお手伝いとして私も大量のちまき作りを手伝った。
「いっただっきまーす!」
可愛い生徒達が笑顔でちまきを次々に食べていく。
その姿に癒されながら、みんなの無病息災を願って頑張って作ったかいがあったなぁと微笑む。
横を見ると、食堂のおばちゃんも満足げに皆の食べる姿を見ていた。
お喋りしながらゆっくりもぐもぐと食べる一年生の横で、食満くんと潮江くんが早食い対決を始めて善法寺くんが止めに入ったり、食堂はみんなの活気で賑わっていた。
「いやはや今年も沢山作りましたなぁ。」
「食堂のおばちゃん、たまみさん、お疲れ様です。」
山田先生と土井先生もにこにこと食堂にやって来た。
その両手には菖蒲の葉が抱えられている。
「みんなで菖蒲もいっぱい採ってきたので使ってください。」
土井先生が食堂のおばちゃんに菖蒲の束を渡した。
ふわりと爽やかな香りがする。
私はそれを繁々と眺めて食堂のおばちゃんに聞いた。
「これはどうするんですか?」
「菖蒲はねぇ、邪気を払うと言われているのよ。菖蒲酒にしたりお風呂に入れて菖蒲湯にしたり…後で一緒に作りましょう。」
「はい!」
お酒を作るのもお風呂に入れるのも面白そう……あ、でもそれなら虫が付いてないかよく見ないと…葉っぱものは要注意だからなぁ……。
真剣な表情で菖蒲の葉をじっくり見ていると、食堂の入り口から大きな声がした。
「端午の節句か、そういえばそんな時期だな!」
振り返ると、大木先生がかご一杯のラッキョウを抱えて食堂に入ってきた。
「あら大木先生、いつもありがとうございます。よければ大木先生も、ちまきいかがですか?」
「食堂のおばちゃん、ではお言葉に甘えて1つ頂こうかな。」
すると大木先生はパッと私の方を見てニッと笑った。
「たまみ、悪いが食べさせてくれないか。」
「はい?」
大木先生は無邪気な子どものようにあんぐりと口をあけてエサを待つ雛鳥みたいになった。
確かに大木先生の両手は土まみれで重そうなかごを持ってはいるけど…。
私がなんと断ろうかと考えるより先に、目の前に黒い背中が現れて視界が遮られた。
土井先生がぐいっと私を後ろに引っ張って自分の背に隠す。
「大木先生、そういうことは…」
「両手が土まみれの荷物でふさがっているから頼んだだけだが。」
「かごを地面に置いて手を洗ってくればいいでしょう。」
睨み合う二人の不穏な空気に私がおろおろとしだすと、突然誰かが大木先生の口にちまきをつっこんだ。
「んむっ!?」
驚いて見るとそこには伝子さんの姿があって。
「やだぁ~あなたたち、私を取り合うのはそれくらいにして落ち着いてちょうだい。ほら、土井先生もあーん?」
「けっ、結構です!」
「む…!ごくん!だ、誰も山田先生などに頼んどりません!」
「などとはなんだ!伝子とお呼び!」
すると、そのとき廊下から大きな声が聞こえてきて。
「大木雅之助ー!そんなにちまきが食べたいなら私が特製のやつを食べさせてやろう!納豆入りのちまきだー!」
「野村雄三!よぉーし、そっちがその気ならこちらもラッキョウ入りのちまきを作って…!!」
「ちょっと2人ともお残しは許しませんよー!!!」
場が混乱してきた状況を見て、食べ終わった生徒達がそそくさと食堂から出ていく。
すると土井先生がくるりと私を振り返り、眉をハの字にして苦笑した。
「……たまみさん、菖蒲の葉、一緒に洗いに行きましょうか。」
「あ、はい…。」
このまま放っておいていいのかなと気にはなったけれど、また変に巻き込まれても困るなぁと思い直し、私は土井先生と菖蒲の葉を穏やかに洗ってやり過ごしたのだった。