第31話 薬草摘み
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今日は乱太郎くんが保健委員会の当番で薬草を摘みに行くというので、私もついていってみることにした。
薬草の種類と効能と生えている場所を覚えておけば、何かの役にたつかもしれない。
「土井先生、今から保健委員会の子達と薬草を採りに行ってきます。」
「え」
土井先生に外出届を渡すと、とても心配そうな顔をされた。
「この前たまみさんが話してた件ですね。医務室で手伝うのではなくて薬草を採りに行くんですか?」
「はい、そこの裏山なのでそんなに遠くないですし。」
そう言うと、土井先生は少しためらいがちにこう言った。
「たまみさん、私が言うのもどうかと思うのですが…、実は保健委員会は何故か不運なことが起こりがちというか…」
「不運?」
そういえば善法寺くんと洗濯したときは物干し竿の土台が倒れてきたのを思い出した。
土井先生はとても心配そうな顔をしている。
「裏山はここから近いとはいえ山賊が出ることもあります。…不慣れな山道で怪我とか危険な生き物とかも…。」
「そ…そんなに危ないのですか……。」
生徒から裏山で遊んできたと聞いたこともあるし、ちょっとピクニック気分だったのだけれどそんなに色々あるところなのか。
恐い…でも土井先生の補佐として役に立つためにもどのような薬草がどのような場所に生えているかとか知っておきたい…。
「…でも、その、6年生も一緒ですし…」
「伊作が?…それは逆に心配な…」
「え?」
「いえ、山は急に天候が変わることもありますし…」
「…今日はそんなに遠くまでは行かないと言ってました。慎重に、気をつけますので、とりあえず行ってみてもいいですか…?」
「たまみさん…」
土井先生は渋る顔をしたけれど、やっぱりお役に立てるようになりたくて私はそのまま押しきって予定通り出発することにした。
「あ、たまみさん!用意は出来ましたか?」
門の近くで乱太郎くんが手を振ってくれた。
今日一緒に行くのは、善法寺くんと乱太郎くん。
「うん、お待たせ!善法寺くんも今日はよろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
善法寺くんがにこやかに挨拶してくれ、私達は裏山へと向かった。
…そして、それは、想像以上だった。
「伊作先輩、今日は落とし穴2回落ちただけなのでラッキーですね!」
「そうだな乱太郎、毒虫や獣に会うこともなくたどり着けたし、橋が壊れていることもなかったし、ラッキーだ!」
普通はそういうことが起こるってことか…。
不運と心配していた土井先生の言葉が思い出されて私は苦笑した。
道中、薬草の生えている場所やその種類や効能などを教えてもらいながらメモをとった。
よく似た草でも色々あるようで勉強になる。
背負ったかごに採った薬草を入れて持ち帰ろうとしたとき、ぽつぽつと雨が降りだした。
「さっきまでは晴れてたのに。」
「よくあることですよ。これから雨足がキツくなると思うので、早く帰りましょう。」
3人で学園に戻ろうとしたとき、近くの茂みでガサガサと音がした。
「!…二人とも、下がって。」
善法寺くんが私と乱太郎くんの前に立ち苦無を持って前を睨む。
すると。
グルルル…
大きな熊が出てきた。
いつぞや遭遇した熊よりもずっと大きく、お腹がすいているのか凶暴そうな唸り声をあげている。
雨足が急に激しくなり、視界が悪くなった。
「乱太郎、たまみさんを連れて逃げろ。こいつは私が何とかするから。」
「え、でも伊作先輩…!」
「私は大丈夫だ。さぁ、早く!」
善法寺くんが力強くそう言うと、おろおろとする私の手を乱太郎くんが引っ張って走りだした。
「たまみさん!行きましょ…うわっ!」
ずるっ!
乱太郎くんがぬかるんだ地面に足を滑らせて斜面をゴロゴロと転がっていった。
「ら、乱太郎くんっ!!」
私は咄嗟に乱太郎くんを掴もうと手を伸ばしたが、その手は空をきって届かなかった。
慌てて追いかけようとするも、足元が滑りそうで下り坂を速く降りることができない。
「わっ!」
踏んだ大きな石が傾いて私はバランスを崩し、倒れまいとして近くの小さな木を掴んだ。
しかしその木は古かったのか地面が弛んでいたのか根元からぐらりと倒れてしまい、私は弧を描くように道から逸れて転がった。
山道から逸れた横の斜面は急な坂になっていて止まらず、咄嗟に他の木に捕まることもできなくて転がり続けた。
「……っ!!」
上か下かも分からないまま、急に体が打ち付けられる痛みがなくなったと思ったら、私は落下していた。
ばしゃんっ!!
突然、水の中に落ちた。
着衣のままでは水の抵抗が大きくてうまく泳げず、何とか水面に顔を出すとそれは川だった。
速い水流に流されて、思うように動けない。
掴まることができるものもなく、私は息をするのに必死でもがき続けたが、頭に強い衝撃を感じ意識を手放した。
薬草の種類と効能と生えている場所を覚えておけば、何かの役にたつかもしれない。
「土井先生、今から保健委員会の子達と薬草を採りに行ってきます。」
「え」
土井先生に外出届を渡すと、とても心配そうな顔をされた。
「この前たまみさんが話してた件ですね。医務室で手伝うのではなくて薬草を採りに行くんですか?」
「はい、そこの裏山なのでそんなに遠くないですし。」
そう言うと、土井先生は少しためらいがちにこう言った。
「たまみさん、私が言うのもどうかと思うのですが…、実は保健委員会は何故か不運なことが起こりがちというか…」
「不運?」
そういえば善法寺くんと洗濯したときは物干し竿の土台が倒れてきたのを思い出した。
土井先生はとても心配そうな顔をしている。
「裏山はここから近いとはいえ山賊が出ることもあります。…不慣れな山道で怪我とか危険な生き物とかも…。」
「そ…そんなに危ないのですか……。」
生徒から裏山で遊んできたと聞いたこともあるし、ちょっとピクニック気分だったのだけれどそんなに色々あるところなのか。
恐い…でも土井先生の補佐として役に立つためにもどのような薬草がどのような場所に生えているかとか知っておきたい…。
「…でも、その、6年生も一緒ですし…」
「伊作が?…それは逆に心配な…」
「え?」
「いえ、山は急に天候が変わることもありますし…」
「…今日はそんなに遠くまでは行かないと言ってました。慎重に、気をつけますので、とりあえず行ってみてもいいですか…?」
「たまみさん…」
土井先生は渋る顔をしたけれど、やっぱりお役に立てるようになりたくて私はそのまま押しきって予定通り出発することにした。
「あ、たまみさん!用意は出来ましたか?」
門の近くで乱太郎くんが手を振ってくれた。
今日一緒に行くのは、善法寺くんと乱太郎くん。
「うん、お待たせ!善法寺くんも今日はよろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
善法寺くんがにこやかに挨拶してくれ、私達は裏山へと向かった。
…そして、それは、想像以上だった。
「伊作先輩、今日は落とし穴2回落ちただけなのでラッキーですね!」
「そうだな乱太郎、毒虫や獣に会うこともなくたどり着けたし、橋が壊れていることもなかったし、ラッキーだ!」
普通はそういうことが起こるってことか…。
不運と心配していた土井先生の言葉が思い出されて私は苦笑した。
道中、薬草の生えている場所やその種類や効能などを教えてもらいながらメモをとった。
よく似た草でも色々あるようで勉強になる。
背負ったかごに採った薬草を入れて持ち帰ろうとしたとき、ぽつぽつと雨が降りだした。
「さっきまでは晴れてたのに。」
「よくあることですよ。これから雨足がキツくなると思うので、早く帰りましょう。」
3人で学園に戻ろうとしたとき、近くの茂みでガサガサと音がした。
「!…二人とも、下がって。」
善法寺くんが私と乱太郎くんの前に立ち苦無を持って前を睨む。
すると。
グルルル…
大きな熊が出てきた。
いつぞや遭遇した熊よりもずっと大きく、お腹がすいているのか凶暴そうな唸り声をあげている。
雨足が急に激しくなり、視界が悪くなった。
「乱太郎、たまみさんを連れて逃げろ。こいつは私が何とかするから。」
「え、でも伊作先輩…!」
「私は大丈夫だ。さぁ、早く!」
善法寺くんが力強くそう言うと、おろおろとする私の手を乱太郎くんが引っ張って走りだした。
「たまみさん!行きましょ…うわっ!」
ずるっ!
乱太郎くんがぬかるんだ地面に足を滑らせて斜面をゴロゴロと転がっていった。
「ら、乱太郎くんっ!!」
私は咄嗟に乱太郎くんを掴もうと手を伸ばしたが、その手は空をきって届かなかった。
慌てて追いかけようとするも、足元が滑りそうで下り坂を速く降りることができない。
「わっ!」
踏んだ大きな石が傾いて私はバランスを崩し、倒れまいとして近くの小さな木を掴んだ。
しかしその木は古かったのか地面が弛んでいたのか根元からぐらりと倒れてしまい、私は弧を描くように道から逸れて転がった。
山道から逸れた横の斜面は急な坂になっていて止まらず、咄嗟に他の木に捕まることもできなくて転がり続けた。
「……っ!!」
上か下かも分からないまま、急に体が打ち付けられる痛みがなくなったと思ったら、私は落下していた。
ばしゃんっ!!
突然、水の中に落ちた。
着衣のままでは水の抵抗が大きくてうまく泳げず、何とか水面に顔を出すとそれは川だった。
速い水流に流されて、思うように動けない。
掴まることができるものもなく、私は息をするのに必死でもがき続けたが、頭に強い衝撃を感じ意識を手放した。