第25話 繕い物
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「土井先生、洗濯物乾いた分ここに置きますね。」
「ありがとう。助かります。」
洗濯した忍装束をいつものようにたたんで置くと、土井先生は筆を持ちながらにっこり笑ってくれた。
ふと土井先生のかぶっている頭巾を見ると、糸が出てほころんでいることに気づいた。
「土井先生、ここ、糸が…」
「あ、ほんとだ。」
「直しましょうか?」
「あー、…すみません。」
土井先生は頭巾を外して申し訳なさそうに渡してくれた。
まるで当然のように土井先生の繕い物ができることを嬉しく思った。
でも彼がいつも身にまとう頭巾や装束をこうして手にできることを喜んでると知られたら、もしかしてちょっと変態とか思われたりするのかな…いやでも別におかしなことはしていないし乙女心だよね…?
そんな雑念を抱えながら、私は黒い糸と針を出してちくちくと縫い進めた。
土井先生が筆をさらさらと動かす音。
私が糸をしゅっと引く音。
…いいな。
何だか、夫婦みたい。
思わずにやけそうになる顔を必死にこらえた。
それにしても、土井先生はお洗濯もお裁縫も上手なのに自分のことは無頓着だなと思う。
男の人らしいといえばそうだけど。
というか、土井先生の場合、無頓着くらいにしといてもらわないと女の子が寄ってきたら困る。
この前だって、山本シナ先生からくの一教室の火薬の授業を頼まれたとはりきっていて。
何をどう考えたのか、急に変な格好をして「せっかく頼まれたのに、山本シナ先生に恥をかかせるわけにはいかない。この南蛮風の衣装で授業をしようと思うのですがどう思いますか?」なんて聞くから、思わず「素敵な衣装ですね。」なんて心にもない返事をしてしまった。
案の定、不評だったらしい。
ちょっと気の毒だったけれど、それでいい。
くの一教室で格好いい授業なんかして、女の子達が寄ってきたら困る。
…こういう心配って、先生を好きになってしまったらずっと尽きない心配なのかもしれないけど。
私は縫い終わった糸を切ろうとした。
すると、職員室の障子があけられて声がした。
「失礼します。たまみさんいますかー?」
「きり丸くん。どうしたの?」
「いま図書委員の仕事で貸し出し期限の過ぎてる本を回収に回ってるんですけど、たまみさんの借りてる本が今日までだから覚えてるかなと思って。」
「あっ!忘れてた!」
「図書室行くんで返しときましょうか?」
「ありがとう、取ってくる。」
私は糸をぷつりと切って土井先生に頭巾を返した。
「すまないね、ありがとう。」
「いいえ、ちょっと本を取りに行ってきます。」
私は自室に取りに行った。
「ありがとう。助かります。」
洗濯した忍装束をいつものようにたたんで置くと、土井先生は筆を持ちながらにっこり笑ってくれた。
ふと土井先生のかぶっている頭巾を見ると、糸が出てほころんでいることに気づいた。
「土井先生、ここ、糸が…」
「あ、ほんとだ。」
「直しましょうか?」
「あー、…すみません。」
土井先生は頭巾を外して申し訳なさそうに渡してくれた。
まるで当然のように土井先生の繕い物ができることを嬉しく思った。
でも彼がいつも身にまとう頭巾や装束をこうして手にできることを喜んでると知られたら、もしかしてちょっと変態とか思われたりするのかな…いやでも別におかしなことはしていないし乙女心だよね…?
そんな雑念を抱えながら、私は黒い糸と針を出してちくちくと縫い進めた。
土井先生が筆をさらさらと動かす音。
私が糸をしゅっと引く音。
…いいな。
何だか、夫婦みたい。
思わずにやけそうになる顔を必死にこらえた。
それにしても、土井先生はお洗濯もお裁縫も上手なのに自分のことは無頓着だなと思う。
男の人らしいといえばそうだけど。
というか、土井先生の場合、無頓着くらいにしといてもらわないと女の子が寄ってきたら困る。
この前だって、山本シナ先生からくの一教室の火薬の授業を頼まれたとはりきっていて。
何をどう考えたのか、急に変な格好をして「せっかく頼まれたのに、山本シナ先生に恥をかかせるわけにはいかない。この南蛮風の衣装で授業をしようと思うのですがどう思いますか?」なんて聞くから、思わず「素敵な衣装ですね。」なんて心にもない返事をしてしまった。
案の定、不評だったらしい。
ちょっと気の毒だったけれど、それでいい。
くの一教室で格好いい授業なんかして、女の子達が寄ってきたら困る。
…こういう心配って、先生を好きになってしまったらずっと尽きない心配なのかもしれないけど。
私は縫い終わった糸を切ろうとした。
すると、職員室の障子があけられて声がした。
「失礼します。たまみさんいますかー?」
「きり丸くん。どうしたの?」
「いま図書委員の仕事で貸し出し期限の過ぎてる本を回収に回ってるんですけど、たまみさんの借りてる本が今日までだから覚えてるかなと思って。」
「あっ!忘れてた!」
「図書室行くんで返しときましょうか?」
「ありがとう、取ってくる。」
私は糸をぷつりと切って土井先生に頭巾を返した。
「すまないね、ありがとう。」
「いいえ、ちょっと本を取りに行ってきます。」
私は自室に取りに行った。