第14話 個人レッスン
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今日は少し早目に夕食のお手伝いに来た。
すると茶髪に白い鉢巻をまいた見知らぬ男性が食堂のおばちゃんと話していた。
「こんにちは」と挨拶をすると、彼はこちらを振り返りじろじろと私を見た。
「ん?何だお前さん新入りか?」
「大木先生、彼女は学園長先生の親戚でたまみちゃんっていうのよ。」
「一年は組補佐のたまみです。」
「彼女、食堂のお手伝いもしてくれてるの。たまみちゃん、こちらは忍術学園で以前働いてた大木先生よ。」
「えっ、忍術学園の先生だったんですか!」
「あぁ、今は杭瀬村でラッキョウとネギを作っとる。」
そう言うと大木先生は「今日も沢山持ってきたから食べるといい。」と人懐っこい笑顔で笑った。
「あらやだ、そういえば私ったらお醤油買うの忘れてたわ。たまみちゃん、今日は魚の煮付けだからそのお野菜切っておいて貰っていい?」
「わかりました。」
おばちゃんは急いで買い物に行き、残された大木先生はそのまま腕を組んで私が野菜を準備するところを興味深そうに見ていた。
何だか見られているとやりにくい…。
けれどもともと忍術学園の先生だったということで、私も色々と聞いてみたくなった。
「ラッキョウがお好きなんですか?」
「あぁ、体にもいいし何より美味い。」
「農業って、先生とはまた違って大変なんじゃないですか?」
「まぁそうだが、どこんじょーでなんとかなるもんだ。今やこれで生活もできてるんだからな。」
かかか、と陽気に笑う。
明るい元気な人だな。
自然とこちらも笑顔になる。
「どこんじょーですか。それいいですね。」
「そうだろう。大概のことはこれでどうにかなる!」
遠くで子ども達の笑い声がした。
大木先生がそちらの方を向く。
「…忍術学園に戻りたいなと思うことはありますか?」
大木先生の目がスッと細められた。
しまった、踏み込んだことを聞いてしまったかもしれない。
けれど大木先生は気を悪くする素振りもなくあっさり答えた。
「いいや。今はこれはこれで楽しい。」
「そうですか。…すみません、立ち入ったことを聞きました。」
「構わんよ。」
そう言うと大木先生は突然私の頭巾をひょいととった。
「?」
「んん、中々可愛い顔をしてるな。」
大木先生が顔を近づけてジイッと見てきた。
反応に困っていると、私の頭をぐしゃぐしゃと撫で、頭巾を返してくれた。
「さっきから色々聞いてくるが、農業に興味があるのか?」
「いえ、そういうわけでは…」
「じゃあ」
大木先生がスッと私の腰に手を回した。
「わしに興味があるのか?」
低く艶のある声が耳元で響く。
びっくりして赤くなると、大木先生は嬉しそうにニヤリと笑った。
「ちっ、違います!」
「ははは、照れなくてもいい。可愛いな。」
「や、だからそうじゃなくて…」
「杭瀬村はいいところだぞ。」
人の話を聞かないタイプのようだ。
私は「あ、早く野菜を切らないと!」と言い、そそくさと野菜を切っていった。
「………あ…」
「どうした?」
「いえ、これ、皮も調理するのかなって…。」
「んー?…あぁ、これは皮も食べられる。食堂のおばちゃんは薄く剥いて皮だけ別の料理にしたりしていたな。」
「お詳しいんですね。」
「そりゃ毎日食堂のおばちゃんの飯を食ってたからな。」
「薄くって、これくらいですか?」
「いや、もう少し厚く…そうだそれぐらい。」
大木先生は独り暮らしらしく、料理も手慣れたものだった。
私は時折大木先生に質問しながら和やかに野菜を下準備していった。
「食堂のお手伝いのくせに知らないことが多いな。」
「…すみません、私、記憶がなくて…忍術学園でリハビリも兼ねてお仕事させてもらってるんです。」
大木先生は少し驚いた顔をしたが、それ以上深く聞くこともなく「そうか」と言った。
「…わしのとこに来るか?」
「え?」
「日常生活のことならわしが全部教えてやるぞ。手取り足取り丁寧にな。」
大木先生がおもむろに私の顎をグイッと上に持ち上げた。
突然の真剣な眼差し。
驚きすぎて野菜が転がってしまった。
「い、いえっ、結構です…!」
「遠慮するな。一人くらい養える。」
「大木先生、それくらいにしてもらえますか。」
振り返ると、食堂の入り口に冷ややかな目をした土井先生がいた。
すると茶髪に白い鉢巻をまいた見知らぬ男性が食堂のおばちゃんと話していた。
「こんにちは」と挨拶をすると、彼はこちらを振り返りじろじろと私を見た。
「ん?何だお前さん新入りか?」
「大木先生、彼女は学園長先生の親戚でたまみちゃんっていうのよ。」
「一年は組補佐のたまみです。」
「彼女、食堂のお手伝いもしてくれてるの。たまみちゃん、こちらは忍術学園で以前働いてた大木先生よ。」
「えっ、忍術学園の先生だったんですか!」
「あぁ、今は杭瀬村でラッキョウとネギを作っとる。」
そう言うと大木先生は「今日も沢山持ってきたから食べるといい。」と人懐っこい笑顔で笑った。
「あらやだ、そういえば私ったらお醤油買うの忘れてたわ。たまみちゃん、今日は魚の煮付けだからそのお野菜切っておいて貰っていい?」
「わかりました。」
おばちゃんは急いで買い物に行き、残された大木先生はそのまま腕を組んで私が野菜を準備するところを興味深そうに見ていた。
何だか見られているとやりにくい…。
けれどもともと忍術学園の先生だったということで、私も色々と聞いてみたくなった。
「ラッキョウがお好きなんですか?」
「あぁ、体にもいいし何より美味い。」
「農業って、先生とはまた違って大変なんじゃないですか?」
「まぁそうだが、どこんじょーでなんとかなるもんだ。今やこれで生活もできてるんだからな。」
かかか、と陽気に笑う。
明るい元気な人だな。
自然とこちらも笑顔になる。
「どこんじょーですか。それいいですね。」
「そうだろう。大概のことはこれでどうにかなる!」
遠くで子ども達の笑い声がした。
大木先生がそちらの方を向く。
「…忍術学園に戻りたいなと思うことはありますか?」
大木先生の目がスッと細められた。
しまった、踏み込んだことを聞いてしまったかもしれない。
けれど大木先生は気を悪くする素振りもなくあっさり答えた。
「いいや。今はこれはこれで楽しい。」
「そうですか。…すみません、立ち入ったことを聞きました。」
「構わんよ。」
そう言うと大木先生は突然私の頭巾をひょいととった。
「?」
「んん、中々可愛い顔をしてるな。」
大木先生が顔を近づけてジイッと見てきた。
反応に困っていると、私の頭をぐしゃぐしゃと撫で、頭巾を返してくれた。
「さっきから色々聞いてくるが、農業に興味があるのか?」
「いえ、そういうわけでは…」
「じゃあ」
大木先生がスッと私の腰に手を回した。
「わしに興味があるのか?」
低く艶のある声が耳元で響く。
びっくりして赤くなると、大木先生は嬉しそうにニヤリと笑った。
「ちっ、違います!」
「ははは、照れなくてもいい。可愛いな。」
「や、だからそうじゃなくて…」
「杭瀬村はいいところだぞ。」
人の話を聞かないタイプのようだ。
私は「あ、早く野菜を切らないと!」と言い、そそくさと野菜を切っていった。
「………あ…」
「どうした?」
「いえ、これ、皮も調理するのかなって…。」
「んー?…あぁ、これは皮も食べられる。食堂のおばちゃんは薄く剥いて皮だけ別の料理にしたりしていたな。」
「お詳しいんですね。」
「そりゃ毎日食堂のおばちゃんの飯を食ってたからな。」
「薄くって、これくらいですか?」
「いや、もう少し厚く…そうだそれぐらい。」
大木先生は独り暮らしらしく、料理も手慣れたものだった。
私は時折大木先生に質問しながら和やかに野菜を下準備していった。
「食堂のお手伝いのくせに知らないことが多いな。」
「…すみません、私、記憶がなくて…忍術学園でリハビリも兼ねてお仕事させてもらってるんです。」
大木先生は少し驚いた顔をしたが、それ以上深く聞くこともなく「そうか」と言った。
「…わしのとこに来るか?」
「え?」
「日常生活のことならわしが全部教えてやるぞ。手取り足取り丁寧にな。」
大木先生がおもむろに私の顎をグイッと上に持ち上げた。
突然の真剣な眼差し。
驚きすぎて野菜が転がってしまった。
「い、いえっ、結構です…!」
「遠慮するな。一人くらい養える。」
「大木先生、それくらいにしてもらえますか。」
振り返ると、食堂の入り口に冷ややかな目をした土井先生がいた。