硝子の誓い
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薄曇りの空の下、波の国は静かに彼らを迎えた。
湿った海風が頬を撫で、遠くには木造の小舟が波間に揺れている。岸辺の道はぬかるみ、潮の匂いが重たく肺に入り込む。鬱蒼と茂った木々の合間から、所々に古びた家屋が見え、まるで時間が止まったような風景が広がっていた。
「……どこか寂しい国だな」
「うん、そうね」
サスケがぽつりと呟くと、サクラもその隣で不安げに辺りを見回す。
「でも海は広くて気持ちいいってばよ!」
ナルトは無邪気に胸を張ったが、その背後でナマエは静かに立ち止まり、海の方角をじっと見つめていた。
(静かすぎる……)
人はたくさんいるはずなのに、その生気が感じられない国。それが波の国第一印象だった。
やがて、波打ち際の道を抜け、一行は依頼主・タズナの家へとたどり着いた。木造の古びた平屋。年季の入った柱とひび割れた壁が、戦火を逃れてきたような佇まいをしている。だが、屋内は意外にも温かく、タズナの娘・ツナミと幼いイナリの出迎えに、旅の疲れもいくらか和らいだ。
しかしそこで、カカシから告げられたのは、あまりに残念な知らせだった。
「ザブザは……生きている。」
カカシの声に一瞬、四人の顔が揃って凍りついた。
その事実は、特にナマエにとって致命的だった。
——敵に見つかる。
それだけは、避けろと教えられてきたからだった。
*****
ザブザとの死闘から一夜明け、ザブザが再度タズナへ襲撃するまでの猶予。
それは、第七班にとって束の間の「準備期間」だった。
タズナの家の裏手にある林に、カカシは四人を呼び出した。カカシは「木登り」の理屈をナルト、サクラ、サスケ、ナマエの前で披露する。
「と まぁ俺がごちゃごちゃ言ったところで体で覚えてもらうしかないんだけど」
4人の前にクナイを投げた。どれでもいいから登ってみろ、と。
ナマエはカカシに一瞬視線を送ったが、特に合図もない。
ナマエが木登りが当然できることなど、カカシは当然把握してるはず。それなのに何も言わないということは、そのまま完遂しろ、いうことだろう。
「よっしゃー!いっくぞォーーー!!」
ナマエは不思議に思いながらも、ナルトの掛け声を合図に、一斉に木へと向かった。
勢いよく励んだものの、つるんと滑り一歩も登れないナルト。
少し上ったものの、木が割れたことによりバランスを崩し、着地がやっとなサスケ。
そして、微笑んで木の上に座るサクラ、それと同じ高さで止まるナマエ。
「……どうやらチャクラコントロールが上手いのは、女の子の方みたいね」
木の上から降りたカカシが、いつもの飄々とした口調で言った。
その言葉に、ナルトは二人を見上げると「すっげー!」と目を輝かせて純粋に感心した。
けれど、もう一人――サスケは明らかに表情を曇らせた。
ナマエと視線が交錯する。
その目には、静かな悔しさが宿っていた。
「どうやら火影に近いのは……サクラかなぁ。うちは一族ってのも、大したことないねぇ?」
からかうように続けたカカシの言葉に、今度はサクラが真っ赤になって叫ぶ。
「うるさいわよ先生!!」
その反応に、ナマエはわずかに表情が緩む。
サクラは今日も、サスケの前では分かりやすい。
カカシの声がわかりやすい刺激になったのか、ナルトとサスケは再び木に向かって走り出す。
今度こそ成功させようと、互いに負けじとチャクラを練る。
“負けられない”という空気が、二人の間にピリピリと張りつめていた。
その様子をひとしきり眺めたあと、カカシはそっと視線を移し、サクラとナマエのもとへ歩み寄る。
「サクラ、ナマエ。お前たちはこの修行はもう十分だ。代わりに、タズナさんの護衛任務を続行してもらう」
いつも通りの軽い口調。けれど、その目の奥には鋭い光が宿っていた。
「サクラ。お前は橋でタズナさんの近くに。異変があればすぐ知らせてくれ」
「はい!」
「ナマエ。お前は森の警戒を。特に広範囲の異常察知を頼む」
「はい」
「それじゃ、解散」
サクラは元気よく返事をし、足早に橋へと向かっていった。
その背を見送りながら、ナマエは静かに思考を巡らせる。
(……最初から、そうするつもりだったんだ)
この森は、今まさにナルトとサスケが木登り修行をしている場所だ。
同時に、タズナのいる建設現場を取り囲むように広がっている。
つまり、敵がタズナを狙うならば、必ず通る導線。
ナルトの監視、そしてタズナの警護――どちらも兼ねられる絶好の配置だった。そしてその配置に私を着かせるための口実が、「木登りはすでにできるから」だったのだろう。
(……そこまで計算して)
呆れと感嘆が入り混じるなか、ナマエは森へ向かおうと足を動かす。
――が、その動きをカカシの声が止めた。
「ナマエ――お前には、別で課題も与える」
その言葉に驚き、カカシの方を振り返る。カカシはいつになく真面目な顔で、静かに言った。
「お前の感知能力を広げる修行だ」
「……!」
その声には、いつもの軽さが一切なかった。
冗談でもなければ、気まぐれでもない。
これは“先生"としての指導だと、すぐに分かった。
「具体的な方法は……俺にも分からない。だが、お前の術は相手のチャクラの“波長”を読み取ることから始まる。必要なのは、“波を感じ取れる静けさ”だ」
「静けさ……?」
呟くように問い返すと、カカシは頷いて続ける。
「そうだ。お前が他人のチャクラを感知するには――まず、自分のチャクラの“波”をできるだけ抑えなきゃならない」
その言葉が、胸の奥にすとんと落ちた。
(……言われてみれば)
チャクラは波長。
それを感じ取るということは、外の微細な振動を拾うこと。
けれど、自分からノイズのようにチャクラが漏れていれば、それは雑音となって波をかき消してしまう。
水面に例えれば分かりやすい。
静かな水に石を投げれば、美しい波紋が広がる。
だが、水面が最初から乱れていれば、投げられた石の波紋はすぐに消えてしまう。
つまり――外の波を拾うには、自分の内側を限りなく静かに保たなければならない。
脳裏に蘇るのは、あの戦いの記憶。
カカシが“水牢の術”に囚われる直前、ザブザのチャクラが水に満ちていたことに、ナマエは直前まで気づけなかった。
距離は近かった。気づけるはずだった。
けれど、あのときの自分は、焦りと混乱の只中にいた。心が乱れていた。
だから――近くにあった、ザブザの波長を、拾えなかった。
(……あの一戦で、それを見抜いたの?)
ナマエは静かにカカシを見る。
その眼差しは穏やかだが、奥底に鋭利な洞察を潜ませている。
見抜かれていた。自分の術の癖、限界、そして可能性までも。
――この人、やっぱり只者じゃない。
息を吸い込み、静かに吐く。
内側のさざ波を、少しずつ鎮めるように。
「……やってみます」
短くそう応えると、カカシはふっと目元を緩め、やわらかく笑った。
「頼むぞ。あいつらの警護も含めて、な」
ナマエは小さく頷いた。
その一拍を確認するように、カカシは霧の中へと身を溶かしていった。
残された林の空気は、澄んでいた。
風がひとすじ、葉を撫でる。
ナマエは静かに目を閉じ、感覚を研ぎ澄ませる。
広がる森、揺れる気配、踏みしめられる土の振動。
すべての波を感じ取るために――
自分の心とチャクラが、限りなく“静”へと近づくように。
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読んだよぽちり
20260418 加筆修正</a>
湿った海風が頬を撫で、遠くには木造の小舟が波間に揺れている。岸辺の道はぬかるみ、潮の匂いが重たく肺に入り込む。鬱蒼と茂った木々の合間から、所々に古びた家屋が見え、まるで時間が止まったような風景が広がっていた。
「……どこか寂しい国だな」
「うん、そうね」
サスケがぽつりと呟くと、サクラもその隣で不安げに辺りを見回す。
「でも海は広くて気持ちいいってばよ!」
ナルトは無邪気に胸を張ったが、その背後でナマエは静かに立ち止まり、海の方角をじっと見つめていた。
(静かすぎる……)
人はたくさんいるはずなのに、その生気が感じられない国。それが波の国第一印象だった。
やがて、波打ち際の道を抜け、一行は依頼主・タズナの家へとたどり着いた。木造の古びた平屋。年季の入った柱とひび割れた壁が、戦火を逃れてきたような佇まいをしている。だが、屋内は意外にも温かく、タズナの娘・ツナミと幼いイナリの出迎えに、旅の疲れもいくらか和らいだ。
しかしそこで、カカシから告げられたのは、あまりに残念な知らせだった。
「ザブザは……生きている。」
カカシの声に一瞬、四人の顔が揃って凍りついた。
その事実は、特にナマエにとって致命的だった。
——敵に見つかる。
それだけは、避けろと教えられてきたからだった。
*****
ザブザとの死闘から一夜明け、ザブザが再度タズナへ襲撃するまでの猶予。
それは、第七班にとって束の間の「準備期間」だった。
タズナの家の裏手にある林に、カカシは四人を呼び出した。カカシは「木登り」の理屈をナルト、サクラ、サスケ、ナマエの前で披露する。
「と まぁ俺がごちゃごちゃ言ったところで体で覚えてもらうしかないんだけど」
4人の前にクナイを投げた。どれでもいいから登ってみろ、と。
ナマエはカカシに一瞬視線を送ったが、特に合図もない。
ナマエが木登りが当然できることなど、カカシは当然把握してるはず。それなのに何も言わないということは、そのまま完遂しろ、いうことだろう。
「よっしゃー!いっくぞォーーー!!」
ナマエは不思議に思いながらも、ナルトの掛け声を合図に、一斉に木へと向かった。
勢いよく励んだものの、つるんと滑り一歩も登れないナルト。
少し上ったものの、木が割れたことによりバランスを崩し、着地がやっとなサスケ。
そして、微笑んで木の上に座るサクラ、それと同じ高さで止まるナマエ。
「……どうやらチャクラコントロールが上手いのは、女の子の方みたいね」
木の上から降りたカカシが、いつもの飄々とした口調で言った。
その言葉に、ナルトは二人を見上げると「すっげー!」と目を輝かせて純粋に感心した。
けれど、もう一人――サスケは明らかに表情を曇らせた。
ナマエと視線が交錯する。
その目には、静かな悔しさが宿っていた。
「どうやら火影に近いのは……サクラかなぁ。うちは一族ってのも、大したことないねぇ?」
からかうように続けたカカシの言葉に、今度はサクラが真っ赤になって叫ぶ。
「うるさいわよ先生!!」
その反応に、ナマエはわずかに表情が緩む。
サクラは今日も、サスケの前では分かりやすい。
カカシの声がわかりやすい刺激になったのか、ナルトとサスケは再び木に向かって走り出す。
今度こそ成功させようと、互いに負けじとチャクラを練る。
“負けられない”という空気が、二人の間にピリピリと張りつめていた。
その様子をひとしきり眺めたあと、カカシはそっと視線を移し、サクラとナマエのもとへ歩み寄る。
「サクラ、ナマエ。お前たちはこの修行はもう十分だ。代わりに、タズナさんの護衛任務を続行してもらう」
いつも通りの軽い口調。けれど、その目の奥には鋭い光が宿っていた。
「サクラ。お前は橋でタズナさんの近くに。異変があればすぐ知らせてくれ」
「はい!」
「ナマエ。お前は森の警戒を。特に広範囲の異常察知を頼む」
「はい」
「それじゃ、解散」
サクラは元気よく返事をし、足早に橋へと向かっていった。
その背を見送りながら、ナマエは静かに思考を巡らせる。
(……最初から、そうするつもりだったんだ)
この森は、今まさにナルトとサスケが木登り修行をしている場所だ。
同時に、タズナのいる建設現場を取り囲むように広がっている。
つまり、敵がタズナを狙うならば、必ず通る導線。
ナルトの監視、そしてタズナの警護――どちらも兼ねられる絶好の配置だった。そしてその配置に私を着かせるための口実が、「木登りはすでにできるから」だったのだろう。
(……そこまで計算して)
呆れと感嘆が入り混じるなか、ナマエは森へ向かおうと足を動かす。
――が、その動きをカカシの声が止めた。
「ナマエ――お前には、別で課題も与える」
その言葉に驚き、カカシの方を振り返る。カカシはいつになく真面目な顔で、静かに言った。
「お前の感知能力を広げる修行だ」
「……!」
その声には、いつもの軽さが一切なかった。
冗談でもなければ、気まぐれでもない。
これは“先生"としての指導だと、すぐに分かった。
「具体的な方法は……俺にも分からない。だが、お前の術は相手のチャクラの“波長”を読み取ることから始まる。必要なのは、“波を感じ取れる静けさ”だ」
「静けさ……?」
呟くように問い返すと、カカシは頷いて続ける。
「そうだ。お前が他人のチャクラを感知するには――まず、自分のチャクラの“波”をできるだけ抑えなきゃならない」
その言葉が、胸の奥にすとんと落ちた。
(……言われてみれば)
チャクラは波長。
それを感じ取るということは、外の微細な振動を拾うこと。
けれど、自分からノイズのようにチャクラが漏れていれば、それは雑音となって波をかき消してしまう。
水面に例えれば分かりやすい。
静かな水に石を投げれば、美しい波紋が広がる。
だが、水面が最初から乱れていれば、投げられた石の波紋はすぐに消えてしまう。
つまり――外の波を拾うには、自分の内側を限りなく静かに保たなければならない。
脳裏に蘇るのは、あの戦いの記憶。
カカシが“水牢の術”に囚われる直前、ザブザのチャクラが水に満ちていたことに、ナマエは直前まで気づけなかった。
距離は近かった。気づけるはずだった。
けれど、あのときの自分は、焦りと混乱の只中にいた。心が乱れていた。
だから――近くにあった、ザブザの波長を、拾えなかった。
(……あの一戦で、それを見抜いたの?)
ナマエは静かにカカシを見る。
その眼差しは穏やかだが、奥底に鋭利な洞察を潜ませている。
見抜かれていた。自分の術の癖、限界、そして可能性までも。
――この人、やっぱり只者じゃない。
息を吸い込み、静かに吐く。
内側のさざ波を、少しずつ鎮めるように。
「……やってみます」
短くそう応えると、カカシはふっと目元を緩め、やわらかく笑った。
「頼むぞ。あいつらの警護も含めて、な」
ナマエは小さく頷いた。
その一拍を確認するように、カカシは霧の中へと身を溶かしていった。
残された林の空気は、澄んでいた。
風がひとすじ、葉を撫でる。
ナマエは静かに目を閉じ、感覚を研ぎ澄ませる。
広がる森、揺れる気配、踏みしめられる土の振動。
すべての波を感じ取るために――
自分の心とチャクラが、限りなく“静”へと近づくように。
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読んだよぽちり
20260418 加筆修正</a>
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