硝子の誓い
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「う……」
ナマエが次に目を覚ましたとき、自分が誰かの背中にいることに気づいた。緩やかに揺れる視界の先には、見慣れた黒髪と背中。
「…目が覚めたかよ」
サスケの声だった。その声に意識が一気に覚醒する。
「…ナルトは……!?」
「ナマエっ!気がついたか?! 大丈夫かよ!?」
その声は、いつもより少しだけ近かった。
覗き込むように顔を寄せてくるナルトに、ナマエは一瞬だけ目を見開く。
――生きてる
その事実に気づいて、わずかに息が抜けた。
ナマエを心配する言葉に、少しだけらしいな、と思う。
すぐ隣でサクラが安堵の息を漏らした。
「良かった…ほんとに心配したんだから」
カカシは彼らの様子をちらりと見るも、何も告げなかった。
ナマエの視野がようやく広がり始め、自分がサスケに背負われて運ばれていることに気づく。視界に映る風景が少しずつ流れていく。どうやら移動中らしい。
(助かったんだ……)
どうやって? 誰が?
細かいことは分からなかったが、彼らに助けられたことだけは確かだった。
「…ありがとう。助けてくれて」
その言葉に、サスケは小さく鼻を鳴らしてそっぽを向いた。ナルトはにししと笑って、
「いーんだってばよ!」
と、いつもの調子で応える。サクラが、戦闘の経緯を簡単に説明してくれた。
「そっか……」
ナマエは、どこか肩の力が抜けたように目を閉じた。
サスケは無言でナマエを抱えながら、先ほどのカカシの言葉を一人思い出していた。
*****
ザブザとの戦いの直後。白い面の男の気配が消えたのを確認し、カカシは全員を集めて話を切り出していた。
「全員、聞いてほしい。タズナさん、あなたもだ」
チャクラを使い果たしたカカシは地面に腰を下ろしながら、表情を引き締めて言う。
「ナマエのことだ」
場が静まり返る。
「ナマエの周り、さっき光ってたよな!?それに術が消えて…! あれ、どういうことなんだってば!?」
ナルトのは驚きに満ちた声をあげたが、カカシは手を軽く挙げて制し、静かに説明を始めた。
「ナマエは、“術を無効化する”能力を持っている」
「無効化? そんなこと……できるの……?」
サクラが眉を寄せて問い返す。
カカシは淡々と続けた。
「術ってのは、チャクラを組み上げた“形”だ」
カカシは淡々と言う。
「ナマエはそれを、崩せる」
「崩す……?」
「簡単に言えば、相手の術に“干渉して壊す”」
サクラが息を呑む。
「だが普通は無理だ。術の構造を読み取るだけでも至難の業だからな」
「なんかよくわかんねーけど…!ナマエって、すっげぇ奴なんだな!」
「あぁ。だからこそ、お前らに言っておく」
ナルトが無邪気に声を上げる。カカシの声が低く、重くなった。
「ナマエの能力のことは、忘れろ」
「……え?」
「はぁ?」
「無理に決まってんじゃん……」
ナルト、サクラ、サスケの声がかぶる。
「正確には、“見なかったことにしてくれ”だな」
「…!」
そうカカシが言い換えると、その言葉に、サスケの瞳だけが僅かに揺れた。
うちはの血を引くサスケだけが、すぐに察したようだ。
「ナマエの力は、希少で、そして危険だ」
カカシは静かに語り始めた。
「だが、それは同時に危険で、狙われやすい能力であるということだ。現に、過去に何度も、その力を巡って争いが起きてきた。」
カカシの言葉に、三人の目が見開かれる。
里は、ナマエの身を守るため、苗字一族は“全滅した”ことにした。ナマエの存在は極秘扱い。こんなところで表立って使っていい術じゃない」
「そんな……!」
カカシは伏せ目になりながらも、続けた。
「でも、ナマエは使った。――それが結果的に、お前らを、守った」
沈黙が落ちた。ナルトはゆっくりと、まだ意識の戻らないナマエの方に目を向けた。
そして、子供らしいまっすぐな声で言った。
「……わかったってばよ。誰にも言わねぇ。絶対に」
サクラもこくりと頷き、サスケは無言で同意を示した。
カカシは最後に、タズナへと視線を向ける。
「タズナさん、あなたも、どうかご内密に」
「あ、あぁ……もちろんだとも」
全員の同意が取れたのを確認し、カカシが続けた。
「ま、幸い追手に気づかれた様子はない。ザブザも倒した。お前らが忘れてくれればそれで済む話だ」
言葉を締めくくったカカシは、どこか軽く言っているように見えたが、その表情は明らかに硬かった。
――これは、すぐに火影様へ報告するべき案件だな、と。
*****
ズキッ
「……っ」
突然の頭痛にナマエは、頭を押さえた。
吸収結界の反動だ。
――術は、チャクラの“波”でできている。
音が波であるように、チャクラにも“波長”がある。
吸収結界はそれを読み取り、“逆位相”でぶつけることで、分離したチャクラを取り込む。結果として、術を打ち消すことができる術式だ。
だが――
「っ……!」
こめかみの奥が焼ける。
血塗れの子供たち。道具のように捨てられる光景。
(……来る)
吸収したチャクラが、ただのチャクラで終わらないことをナマエは知っている。
チャクラは、身体と精神エネルギーの混合体。
術に込められた“精神エネルギー”は術者の感情・意志・記憶断片と深く結びついている。つまり、それを吸収するということは、術者の思念をもその体に取り込むということだ。
それが、何よりの毒だった。
記憶が、感情が、燃えるような熱となってナマエの脳内を焼く。
「っ……!」
サスケの襟を思わず掴む。
「おい、大丈夫か?」
「……う……」
深く、深く呼吸をして、やり過ごす。幸い、吸収量が少なかったせいか、感情の残滓もすぐに薄れていった。
「ナマエ、大丈夫か?」
「無理しないで…!」
ナルトとサクラが不安げに顔を覗き込む中で、ナマエはゆっくりとまぶたを開いた。視界はまだ霞んでいたが、二人の声ははっきりと届いていた。
「……もう、大丈夫。…サスケ、下ろして」
背中に感じていた温もりが離れていく。サスケは無言のまま、そっとナマエの体を地面へ下ろした。その動きには、どこかぎこちなさと、しかし確かな気遣いが混ざっていた。
サスケの背から降りると、その地面の固さと同じように胸に重いものが落ちた。
任務は成功した。護衛対象も生きている。
それなのに――
(……私は、命令に背いた)
あの時――ただ、夢中だった。命令も、禁じられていた力のことも忘れて、ただ、
(……助けないと、って)
そこまで考えて、言葉が止まる。
命令もなく、動いたことなんて――
それが何なのか、分からない。
――自分が、分からない。
ふと気がつくと、サスケがナマエの方を見ていた。
「……ありがとう、サスケ」
思い出したかのようにナマエが礼を告げても、サスケは答えず、ふいと目を逸らす。そのまま何かから逃げるように、森の小道を歩き出す。
だが、ほんの数歩で足を止めた。
背を向けたまま、ぽつりと呟く。
「……次に一人で無茶したら、許さねぇからな」
静かな声だった。怒鳴り声でも、咎める口調でもない。ただ、何かを押し殺したような、想いがこもっていた。
ナマエは、一瞬、息を呑んだ。
「え……?」
反射的に言葉を返す前に、サスケはもう歩き出していた。まるでそれ以上の言葉を拒むように。
「サスケ……」
あの言い方は、昔と同じだった。
サスケを家族だと、思っていたあの頃と。
胸の奥に、わずかな熱が残る。
「サスケってば、なにカッコつけてんだよーっ!」
後ろから、ナルトのちょっと拗ねたような声が響く。
いつも通りの、けれど、どこか安心を運んでくれる声だった。
ナマエは、目を伏せる。
――任務に関係ないことだ。
……そう、思うべきなのに。
こぼれそうになった何かを、押し込めるようにして――ただ、前を見た。
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20260415 加筆修正</a>
ナマエが次に目を覚ましたとき、自分が誰かの背中にいることに気づいた。緩やかに揺れる視界の先には、見慣れた黒髪と背中。
「…目が覚めたかよ」
サスケの声だった。その声に意識が一気に覚醒する。
「…ナルトは……!?」
「ナマエっ!気がついたか?! 大丈夫かよ!?」
その声は、いつもより少しだけ近かった。
覗き込むように顔を寄せてくるナルトに、ナマエは一瞬だけ目を見開く。
――生きてる
その事実に気づいて、わずかに息が抜けた。
ナマエを心配する言葉に、少しだけらしいな、と思う。
すぐ隣でサクラが安堵の息を漏らした。
「良かった…ほんとに心配したんだから」
カカシは彼らの様子をちらりと見るも、何も告げなかった。
ナマエの視野がようやく広がり始め、自分がサスケに背負われて運ばれていることに気づく。視界に映る風景が少しずつ流れていく。どうやら移動中らしい。
(助かったんだ……)
どうやって? 誰が?
細かいことは分からなかったが、彼らに助けられたことだけは確かだった。
「…ありがとう。助けてくれて」
その言葉に、サスケは小さく鼻を鳴らしてそっぽを向いた。ナルトはにししと笑って、
「いーんだってばよ!」
と、いつもの調子で応える。サクラが、戦闘の経緯を簡単に説明してくれた。
「そっか……」
ナマエは、どこか肩の力が抜けたように目を閉じた。
サスケは無言でナマエを抱えながら、先ほどのカカシの言葉を一人思い出していた。
*****
ザブザとの戦いの直後。白い面の男の気配が消えたのを確認し、カカシは全員を集めて話を切り出していた。
「全員、聞いてほしい。タズナさん、あなたもだ」
チャクラを使い果たしたカカシは地面に腰を下ろしながら、表情を引き締めて言う。
「ナマエのことだ」
場が静まり返る。
「ナマエの周り、さっき光ってたよな!?それに術が消えて…! あれ、どういうことなんだってば!?」
ナルトのは驚きに満ちた声をあげたが、カカシは手を軽く挙げて制し、静かに説明を始めた。
「ナマエは、“術を無効化する”能力を持っている」
「無効化? そんなこと……できるの……?」
サクラが眉を寄せて問い返す。
カカシは淡々と続けた。
「術ってのは、チャクラを組み上げた“形”だ」
カカシは淡々と言う。
「ナマエはそれを、崩せる」
「崩す……?」
「簡単に言えば、相手の術に“干渉して壊す”」
サクラが息を呑む。
「だが普通は無理だ。術の構造を読み取るだけでも至難の業だからな」
「なんかよくわかんねーけど…!ナマエって、すっげぇ奴なんだな!」
「あぁ。だからこそ、お前らに言っておく」
ナルトが無邪気に声を上げる。カカシの声が低く、重くなった。
「ナマエの能力のことは、忘れろ」
「……え?」
「はぁ?」
「無理に決まってんじゃん……」
ナルト、サクラ、サスケの声がかぶる。
「正確には、“見なかったことにしてくれ”だな」
「…!」
そうカカシが言い換えると、その言葉に、サスケの瞳だけが僅かに揺れた。
うちはの血を引くサスケだけが、すぐに察したようだ。
「ナマエの力は、希少で、そして危険だ」
カカシは静かに語り始めた。
「だが、それは同時に危険で、狙われやすい能力であるということだ。現に、過去に何度も、その力を巡って争いが起きてきた。」
カカシの言葉に、三人の目が見開かれる。
里は、ナマエの身を守るため、苗字一族は“全滅した”ことにした。ナマエの存在は極秘扱い。こんなところで表立って使っていい術じゃない」
「そんな……!」
カカシは伏せ目になりながらも、続けた。
「でも、ナマエは使った。――それが結果的に、お前らを、守った」
沈黙が落ちた。ナルトはゆっくりと、まだ意識の戻らないナマエの方に目を向けた。
そして、子供らしいまっすぐな声で言った。
「……わかったってばよ。誰にも言わねぇ。絶対に」
サクラもこくりと頷き、サスケは無言で同意を示した。
カカシは最後に、タズナへと視線を向ける。
「タズナさん、あなたも、どうかご内密に」
「あ、あぁ……もちろんだとも」
全員の同意が取れたのを確認し、カカシが続けた。
「ま、幸い追手に気づかれた様子はない。ザブザも倒した。お前らが忘れてくれればそれで済む話だ」
言葉を締めくくったカカシは、どこか軽く言っているように見えたが、その表情は明らかに硬かった。
――これは、すぐに火影様へ報告するべき案件だな、と。
*****
ズキッ
「……っ」
突然の頭痛にナマエは、頭を押さえた。
吸収結界の反動だ。
――術は、チャクラの“波”でできている。
音が波であるように、チャクラにも“波長”がある。
吸収結界はそれを読み取り、“逆位相”でぶつけることで、分離したチャクラを取り込む。結果として、術を打ち消すことができる術式だ。
だが――
「っ……!」
こめかみの奥が焼ける。
血塗れの子供たち。道具のように捨てられる光景。
(……来る)
吸収したチャクラが、ただのチャクラで終わらないことをナマエは知っている。
チャクラは、身体と精神エネルギーの混合体。
術に込められた“精神エネルギー”は術者の感情・意志・記憶断片と深く結びついている。つまり、それを吸収するということは、術者の思念をもその体に取り込むということだ。
それが、何よりの毒だった。
記憶が、感情が、燃えるような熱となってナマエの脳内を焼く。
「っ……!」
サスケの襟を思わず掴む。
「おい、大丈夫か?」
「……う……」
深く、深く呼吸をして、やり過ごす。幸い、吸収量が少なかったせいか、感情の残滓もすぐに薄れていった。
「ナマエ、大丈夫か?」
「無理しないで…!」
ナルトとサクラが不安げに顔を覗き込む中で、ナマエはゆっくりとまぶたを開いた。視界はまだ霞んでいたが、二人の声ははっきりと届いていた。
「……もう、大丈夫。…サスケ、下ろして」
背中に感じていた温もりが離れていく。サスケは無言のまま、そっとナマエの体を地面へ下ろした。その動きには、どこかぎこちなさと、しかし確かな気遣いが混ざっていた。
サスケの背から降りると、その地面の固さと同じように胸に重いものが落ちた。
任務は成功した。護衛対象も生きている。
それなのに――
(……私は、命令に背いた)
あの時――ただ、夢中だった。命令も、禁じられていた力のことも忘れて、ただ、
(……助けないと、って)
そこまで考えて、言葉が止まる。
命令もなく、動いたことなんて――
それが何なのか、分からない。
――自分が、分からない。
ふと気がつくと、サスケがナマエの方を見ていた。
「……ありがとう、サスケ」
思い出したかのようにナマエが礼を告げても、サスケは答えず、ふいと目を逸らす。そのまま何かから逃げるように、森の小道を歩き出す。
だが、ほんの数歩で足を止めた。
背を向けたまま、ぽつりと呟く。
「……次に一人で無茶したら、許さねぇからな」
静かな声だった。怒鳴り声でも、咎める口調でもない。ただ、何かを押し殺したような、想いがこもっていた。
ナマエは、一瞬、息を呑んだ。
「え……?」
反射的に言葉を返す前に、サスケはもう歩き出していた。まるでそれ以上の言葉を拒むように。
「サスケ……」
あの言い方は、昔と同じだった。
サスケを家族だと、思っていたあの頃と。
胸の奥に、わずかな熱が残る。
「サスケってば、なにカッコつけてんだよーっ!」
後ろから、ナルトのちょっと拗ねたような声が響く。
いつも通りの、けれど、どこか安心を運んでくれる声だった。
ナマエは、目を伏せる。
――任務に関係ないことだ。
……そう、思うべきなのに。
こぼれそうになった何かを、押し込めるようにして――ただ、前を見た。
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20260415 加筆修正</a>