硝子の誓い
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依頼人のタズナとの顔合わせをすませ、一同は波の国へとつづく林道を辿っていた。
隊列に、乾いた風が通り抜ける。その中で弾むナルトの声がやけに元気だ。
「なあなあ、ナマエって、アカデミーにいなかったよな?! 卒業しなくても下忍になれるって、俺ってば全然知らなかった!」
「うーん、まぁ、私、木の葉に所属しない時もあったから。その時に下忍になる資格はもらってたんだ」
ナルトを見る限り、他意はない。純粋に疑問だったんだろう。ナマエは事前に用意してきた回答を口にした。
これは半分本当で、半分嘘だった。戦争孤児という謂れでうちは一族に引き取られるまでは、(木の葉にいたものの)ナマエの一族はどこの里にも属さない態勢を保っていた。一方でそんなタイミングで、ナマエがアカデミー卒業相応の資格を手に入れられるはずがなかった。
しかし単純なナルトは納得したようで、なるほどなー、そっか〜と肯いている。サスケがちらりとナマエ見たのがわかったが、彼女はそれには反応しなかった。
「それにしても、変なタイミングよね〜!もっと早くから混ざればいいのに」
「そうだよね…でも三代目のことだから、いろいろ考えがあるんだと思うよ」
「あのじいさんがか〜〜!?」
三代目は、おそらく里の巨大戦力にも危険分子にもなりうるナルト、サスケが里の離れる機会が多くなるアカデミー卒業を待っていたのだろうと思うが、それは口には出せなかった。
「あのな、火影様はすごい人なんだぞ」
前を行くカカシの声はいつもと変わらない。でも、その歩幅にはわずかな変化があった。
ナマエは、ふと左手の先――道端の濁った水たまりに視線を落とす。微弱だけど――そこに、肌がピリつくようなチャクラの揺れがあった。
……何か、いる。
――昔からそうだった。
他人のチャクラや、それによる副産物に近づくと、空気がざわつくように体がわずかに反応する。肌で“感じて”しまうこの体質は、苗字の血だ。
日常生活には多少過敏ではあるが――危機を察知するには、十分すぎる能力だ。
――だが、私は今、下忍だ。
その危険を皆に伝えるわけには行かない。
ナマエは水たまりを迂回して足取りをとった。
サクラが遅れるようについてきたナマエを不審に思い声をかける――
「なに、どうしたの、ナマエ?」
そう言い終えた瞬間――水たまりが爆ぜた。
「えっ、なに――」
仮面の男二人――鎖で繋がれた霧隠れの抜け忍・鬼兄弟が、水しぶきを上げて飛び出す。
(出てきた……!)
水しぶきに触れた瞬間、ざらついた感情が流れ込む。
カカシの動きを確認するも、――カカシは捕らえられたまま動かない。
(えっ……!?)
「一匹目」
「キャァーーー!!」
(もしかして――)
カカシがバラバラになるのと、ナマエがその意図を読み取ったのはほぼ同時だった。
とはいえ、ナマエにも任務がある。ただ見守ってる訳にもいかない。
3人に目をやると、サクラとナルトが硬直しているのが見える。初めての接敵、とっさに動けたのはナマエだけだった。
瞬間、ナマエは即座に前に出た。
「二匹目」
「サスケ……右!」
一瞬の間のあと、舌打ち混じりにサスケが動いた。
「……わかってる!」
男たちがナマエに直進してくるのを確認すると、ナマエはすかさず木の幹に足をかけて逆宙返りでかわしながら、クナイを抜く。
着地と同時に、敵の動きを“読む”。武器使いへは、叩き込まれている。
男の鎖がナマエを囲む前に、サスケに指示をだし、男たちの鎖をサスケが止めるのを確認した。
木を蹴って、鋭く飛び込むその姿――体幹と重心移動の癖、昔と少しも変わっていない。
サスケの蹴りが男の鎖を逸らす。が、敵もそれほど甘くないようですぐに立ち上がり、一方はナルトのほうへもう一方はタズナの方へ向かっていく。
「サスケ……サクラの方!」
「あぁ!」
「おじさん、下がってぇ!」
その隙にナマエはナルトに向かっていたもう一人の男の足を払うように回り込み――喉元にクナイを突きつけた。
3人には聞こえないよう、殺気を込めて男の耳元で呟く。
「動いたら、殺す」
「……なっ!」
その直後――
ズンッ!
何の前触れもなく、木の影から現れたカカシが、彼らの背後を突き飛ばして羽交い締めにした。
「ふぅ。いい連携だったね、サスケ、ナマエ」
「か、カカシ先生〜〜!!」
にこりとした笑み。相変わらずのほほんとしているようで締めるときは締めてくれる。
ナルトがぽかんと口を開けている。
サクラはすでにタズナの前に立ち、両腕を広げるようにして護っていたものの、カカシが現れたことに安堵したようだ。
「よかった……無事……!」
彼女の手が微かに震えていたのを、ナマエは見逃さなかった。
「くそ……!」
ナルトが拳を握りしめ、唇をかみしめている。
ナマエはそっと、サスケに目を向けると、彼はナルトの方を見て挑発的によぉ、と声をあげたところだった。
「ケガはねーかよ、ビビリ君」
「!」
(……言い過ぎ)
内心そう思ったが、口には出さなかった。
いくら訓練を積んでいようと、実戦経験がなければ誰だって腰を抜かす。
ナルトが落ち込むようだったら、あとで慰めよう。そう思った時、カカシが「里に帰るか」と試すようにナルトを見た。
(えっ・・・)
その時だった。ナルトが思い切り自身の手にクナイを指したのは。派手に血を散らしながら、ナルトはニヤリ顔で続ける。
「俺がこのクナイでおっさんを守る!任務…続行だ!」
「…!」
ナマエは驚きの目でナルトを見つめた。
その無鉄砲で後先を何も考えていない、けれど強い意志を感じるその行動に、ナマエは少しだけ目眩がした。
(……理解できない)
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20260413 加筆修正