夏風に気づかず
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(ifイタチ里抜けなし)
夏の終わり。
じりじりと肌を焼くような陽射しが照りつけ、空には雲ひとつない。木の葉の里の外れ、小さな川辺にある訓練場では、水音に混じって蝉の声がけたたましく響いていた。
緑に囲まれた静かなその場所は、風が吹くたびに木々の葉が揺れ、ささやくような音を立てる。
「ふぅ……今日はさすがに暑すぎるねぇ」
木陰に腰を下ろしたナマエが、冷えた水筒を首筋に当てて息を吐いた。
長めの修行のあと、ようやくとれた小休憩。隣ではサスケが黙って水を飲み、少し離れた石の上に座るイタチは涼しい顔で風を受けていた。
「水、いる?」
そう返したのは、ナマエだった。落ち着いた物腰と穏やかな言葉選びが特徴で、ナマエはイタチの恋人でもある。ナマエが水筒を差し出すと、サスケは一瞬きょとんとしたように彼女を見たあと、すぐに目を逸らして首を横に振る。
「……自分のがある」
「うん、知ってる。でもそっちはぬるいんじゃないかなって」
ナマエが微笑むと、サスケは小さく舌打ちして目をそらした。
だが、結局は何も言わずにそれを受け取り、喉を潤した。その仕草が、ほんの少しだけ柔らかい。
「素直でよろしい」
「は?」
「イタチが言ってたよ。最近、褒められても無視、手伝っても無視、話しかけても無視される時があるって」
「……兄貴、余計なことばっかり言うな」
「事実だ」
少し離れた場所からイタチが静かに返した。その声音に責める色はなく、むしろ柔らかな微笑を含んでいる。ナマエはくすくすと笑って、ふと過去を思い出したようにつぶやいた。
「無視じゃないけど、そういえば私、昔よくサスケくんに睨まれてたよね?」
「……は?」
「ほら、初めて会った時とか!すごい視線感じたのに、私が見たら顔を背けるし」
「……」
「私、なんか怒らせたかなって、けっこう真面目に悩んでたんだよ?」
冗談のつもりだったが、サスケの表情がわずかに曇る。手にした水筒を見つめたまま、彼は言葉をのみ込んだ。ナマエの言葉のひとつひとつが、胸の奥を静かに突く。
そんなやりとりを見ていたイタチが、ちらりと横目で静止をかけるようにナマエを見た。
「そのくらいにしてやれ」
「……ごめん、嫌だった?」
ナマエは少し戸惑いながら、サスケの顔を覗き込む。
その後、ふっと笑顔を浮かべて、付け足すように言った。
「でも、今は違うよね。最近のサスケくん、やさしくなったっていうか……」
ナマエはふと思いついたように笑顔で続ける。
「サクラちゃんのおかげかな?」
──その一言で、空気が凍った。
サスケがピタリと動きを止めた。
手にした水筒を握る指先が白くなる。呼吸すら忘れたように、肩がこわばっている。
「……どういう意味だ」
声が低く、深い場所から響いてきた。
怒気を押し殺したその声音に、ナマエは戸惑うように目を瞬かせる。
「いや……サスケ最近変わったし、サスケと一緒の班になったって言うサクラちゃんのおかげなのかな…って」
「やめろ」
鋭い語気。
ナマエは息をのむ。
サスケはそれ以上何も言わず、水筒をナマエに返すと、背を向けて歩き出した。
「お前には一生わからない」
ぽつりとこぼれたその言葉は、夏の風に紛れて、ナマエの耳には届かない。
その様子を見ていたイタチは、はぁ、と大きくため息をつき、ナマエの隣に腰を下ろした。
「……ナマエ」
「……うん」
「お前はたまに、何も知らないまま地雷を踏む」
呆れとも諦めともつかない声音だった。
「……え、どういうこと?」
「あいつも年頃なんだ。わかってやれ」
ナマエが訝しげに首を傾げるのを見ながら、イタチは遠ざかっていく弟の背を目で追った。
好きになった相手が、身内の恋人――
好意を表現するのすら難しい年頃の、その複雑な気持ちに、ナマエが気づく日は来るのだろうか。
彼の吐いた小さなため息だけが、熱を帯びた夏の空に静かに溶けていった。
夏の終わり。
じりじりと肌を焼くような陽射しが照りつけ、空には雲ひとつない。木の葉の里の外れ、小さな川辺にある訓練場では、水音に混じって蝉の声がけたたましく響いていた。
緑に囲まれた静かなその場所は、風が吹くたびに木々の葉が揺れ、ささやくような音を立てる。
「ふぅ……今日はさすがに暑すぎるねぇ」
木陰に腰を下ろしたナマエが、冷えた水筒を首筋に当てて息を吐いた。
長めの修行のあと、ようやくとれた小休憩。隣ではサスケが黙って水を飲み、少し離れた石の上に座るイタチは涼しい顔で風を受けていた。
「水、いる?」
そう返したのは、ナマエだった。落ち着いた物腰と穏やかな言葉選びが特徴で、ナマエはイタチの恋人でもある。ナマエが水筒を差し出すと、サスケは一瞬きょとんとしたように彼女を見たあと、すぐに目を逸らして首を横に振る。
「……自分のがある」
「うん、知ってる。でもそっちはぬるいんじゃないかなって」
ナマエが微笑むと、サスケは小さく舌打ちして目をそらした。
だが、結局は何も言わずにそれを受け取り、喉を潤した。その仕草が、ほんの少しだけ柔らかい。
「素直でよろしい」
「は?」
「イタチが言ってたよ。最近、褒められても無視、手伝っても無視、話しかけても無視される時があるって」
「……兄貴、余計なことばっかり言うな」
「事実だ」
少し離れた場所からイタチが静かに返した。その声音に責める色はなく、むしろ柔らかな微笑を含んでいる。ナマエはくすくすと笑って、ふと過去を思い出したようにつぶやいた。
「無視じゃないけど、そういえば私、昔よくサスケくんに睨まれてたよね?」
「……は?」
「ほら、初めて会った時とか!すごい視線感じたのに、私が見たら顔を背けるし」
「……」
「私、なんか怒らせたかなって、けっこう真面目に悩んでたんだよ?」
冗談のつもりだったが、サスケの表情がわずかに曇る。手にした水筒を見つめたまま、彼は言葉をのみ込んだ。ナマエの言葉のひとつひとつが、胸の奥を静かに突く。
そんなやりとりを見ていたイタチが、ちらりと横目で静止をかけるようにナマエを見た。
「そのくらいにしてやれ」
「……ごめん、嫌だった?」
ナマエは少し戸惑いながら、サスケの顔を覗き込む。
その後、ふっと笑顔を浮かべて、付け足すように言った。
「でも、今は違うよね。最近のサスケくん、やさしくなったっていうか……」
ナマエはふと思いついたように笑顔で続ける。
「サクラちゃんのおかげかな?」
──その一言で、空気が凍った。
サスケがピタリと動きを止めた。
手にした水筒を握る指先が白くなる。呼吸すら忘れたように、肩がこわばっている。
「……どういう意味だ」
声が低く、深い場所から響いてきた。
怒気を押し殺したその声音に、ナマエは戸惑うように目を瞬かせる。
「いや……サスケ最近変わったし、サスケと一緒の班になったって言うサクラちゃんのおかげなのかな…って」
「やめろ」
鋭い語気。
ナマエは息をのむ。
サスケはそれ以上何も言わず、水筒をナマエに返すと、背を向けて歩き出した。
「お前には一生わからない」
ぽつりとこぼれたその言葉は、夏の風に紛れて、ナマエの耳には届かない。
その様子を見ていたイタチは、はぁ、と大きくため息をつき、ナマエの隣に腰を下ろした。
「……ナマエ」
「……うん」
「お前はたまに、何も知らないまま地雷を踏む」
呆れとも諦めともつかない声音だった。
「……え、どういうこと?」
「あいつも年頃なんだ。わかってやれ」
ナマエが訝しげに首を傾げるのを見ながら、イタチは遠ざかっていく弟の背を目で追った。
好きになった相手が、身内の恋人――
好意を表現するのすら難しい年頃の、その複雑な気持ちに、ナマエが気づく日は来るのだろうか。
彼の吐いた小さなため息だけが、熱を帯びた夏の空に静かに溶けていった。
1/1ページ