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11月某日。
「クリスマス?うーん……仕事かな」
そう言われて、私は分かっていながらも絶望した。
一度ならいい。
バレンタインもホワイトデーもあまつさえ誕生日ですらも、オンタイムに過ごせなかったことはギリギリで許せた。
でも。
それらがダメだった上でのクリスマスである。
「どうしても…ダメ?」
「うーん……聞いてみるけど…そういうのは、若手が優遇されちゃうからねぇ…」
カカシが、ちょっとだけ申し訳なさそうに目を細めた。
そっか、と落とした声は思ったよりも沈んでいたらしい。カカシがおいで、と腰を手繰り寄せた。
「ごめんね。でも……どうしようもないことなんだ」
分かってる 分かってるよ。分かってる。
それは、もう何百回も自分に言い聞かせてきた。
カカシの仕事は忍びだ。
一般人である私には到底わからない世界で、命を張って誰かを守る仕事だ。
急務があれば、休みなんて吹っ飛ぶ。
“今日は会える”と期待した私がバカをみたことだったって何度あったか。
わかっている。それを承知の上で、カカシと付き合ったことも。
私がずっと好きだった。ずっとずっと、思い続けて、さりげない風を装って出会って、少しずつ嘘の偶然を作り出して、そうやって、ようやく恋人になれたのだ。
それが、今から3年前。でも、彼と過ごした記念日の思い出はひとつもない。
全部仕事。
全部「ごめん」。
彼の仕事は忍びだ。
非戦闘員を守る、大事で、誇れる仕事だ。
分かっているのに、その“大事な仕事”は、私の一番そばにいてほしい瞬間に彼を、ことごとく連れて行ってしまう。
落ち込んでいる日も、大きな仕事が終わった日も、急に寂しくなった日も、クリスマスみたいに、恋人同士でみんなが当たり前のように過ごす日も。
だからこそ苦しい。私ばかりが好きな気がして。
*****
はぁ……。
昨夜の会話を思い出して、私は深く深くため息をついた。
胃の底に石でも沈んでいるみたいな気持ちだった。
私は衣装デザイナーだ。映画や舞台、それに個人発注の忍装束なんかも請け負っている。
布地の質感と色合わせ、縫製ラインの設計、忍びの動きや武器の収納なんて考えてデザインする、地味だけど体力と集中力の要る仕事だ。
在宅で済ませられる仕事も多いが、それは反面、こんなときに気軽に話せる相手がいないと言うことでもある。
時計をちらりと見ると14時。
あ、そうだ
今日は近くのケーキ屋さんのクリスマスケーキの予約開始日だった。
チャコペンを握る手を止めた。
あのケーキ屋さん――数ヶ月前、カカシの誕生日に(当日には会えなかったけど)こっそり買って持っていったバースデーケーキがむちゃくちゃ美味しかった。
…主に私が「美味しい!」って感動してただけなんだけど、確か甘いものが苦手なカカシもちゃんと笑って「うん、美味しいよ」って言ってくれていた。
最近、雑誌でも取り上げられていたみたいだし、予約は早めにしておいた方がいいだろう。
クリスマス当日にカカシがいるかは分からない。でもまあ、数日は日持ちするはずだし、
最悪ひとりでホールケーキをチマチマ食べるのも、一興だろう。
私は電話を手に取り、発信ボタンを押した。
「あ、あの……クリスマスケーキを予約したいのですが」
「はい、クリスマスケーキですね。……あっ」
急に言葉が切れた。
店員さんが口籠ったかのようになると、少々お待ちください、と呼び出し音が流れた。
しばらくして「もしもし」と言う店員さんの声はどこか申し訳なさと疲労を含んだトーンだった。
「お待たせいたしました……申し訳ありません。クリスマスケーキですが、予約がすでにいっぱいでして……」
「えっ?! もう?!」
「はい……本当に申し訳ありません」
私の頭の中で、昭和のアニメみたいな「ガーーーン!」という効果音が鳴り響いた。
確か、予約開始時間は12時、つまりわずか2時でいっぱいになってしまったということだ。
12時・・・ちょうど袖口の布地のデザインが今ひとつ決まらず、四苦八苦していた頃だ。
私は、自分の見込みの甘さと、運のなさと、そしてなんとなく降ってきた孤独感をまとめて呪った。
「クリスマス?うーん……仕事かな」
そう言われて、私は分かっていながらも絶望した。
一度ならいい。
バレンタインもホワイトデーもあまつさえ誕生日ですらも、オンタイムに過ごせなかったことはギリギリで許せた。
でも。
それらがダメだった上でのクリスマスである。
「どうしても…ダメ?」
「うーん……聞いてみるけど…そういうのは、若手が優遇されちゃうからねぇ…」
カカシが、ちょっとだけ申し訳なさそうに目を細めた。
そっか、と落とした声は思ったよりも沈んでいたらしい。カカシがおいで、と腰を手繰り寄せた。
「ごめんね。でも……どうしようもないことなんだ」
分かってる 分かってるよ。分かってる。
それは、もう何百回も自分に言い聞かせてきた。
カカシの仕事は忍びだ。
一般人である私には到底わからない世界で、命を張って誰かを守る仕事だ。
急務があれば、休みなんて吹っ飛ぶ。
“今日は会える”と期待した私がバカをみたことだったって何度あったか。
わかっている。それを承知の上で、カカシと付き合ったことも。
私がずっと好きだった。ずっとずっと、思い続けて、さりげない風を装って出会って、少しずつ嘘の偶然を作り出して、そうやって、ようやく恋人になれたのだ。
それが、今から3年前。でも、彼と過ごした記念日の思い出はひとつもない。
全部仕事。
全部「ごめん」。
彼の仕事は忍びだ。
非戦闘員を守る、大事で、誇れる仕事だ。
分かっているのに、その“大事な仕事”は、私の一番そばにいてほしい瞬間に彼を、ことごとく連れて行ってしまう。
落ち込んでいる日も、大きな仕事が終わった日も、急に寂しくなった日も、クリスマスみたいに、恋人同士でみんなが当たり前のように過ごす日も。
だからこそ苦しい。私ばかりが好きな気がして。
*****
はぁ……。
昨夜の会話を思い出して、私は深く深くため息をついた。
胃の底に石でも沈んでいるみたいな気持ちだった。
私は衣装デザイナーだ。映画や舞台、それに個人発注の忍装束なんかも請け負っている。
布地の質感と色合わせ、縫製ラインの設計、忍びの動きや武器の収納なんて考えてデザインする、地味だけど体力と集中力の要る仕事だ。
在宅で済ませられる仕事も多いが、それは反面、こんなときに気軽に話せる相手がいないと言うことでもある。
時計をちらりと見ると14時。
あ、そうだ
今日は近くのケーキ屋さんのクリスマスケーキの予約開始日だった。
チャコペンを握る手を止めた。
あのケーキ屋さん――数ヶ月前、カカシの誕生日に(当日には会えなかったけど)こっそり買って持っていったバースデーケーキがむちゃくちゃ美味しかった。
…主に私が「美味しい!」って感動してただけなんだけど、確か甘いものが苦手なカカシもちゃんと笑って「うん、美味しいよ」って言ってくれていた。
最近、雑誌でも取り上げられていたみたいだし、予約は早めにしておいた方がいいだろう。
クリスマス当日にカカシがいるかは分からない。でもまあ、数日は日持ちするはずだし、
最悪ひとりでホールケーキをチマチマ食べるのも、一興だろう。
私は電話を手に取り、発信ボタンを押した。
「あ、あの……クリスマスケーキを予約したいのですが」
「はい、クリスマスケーキですね。……あっ」
急に言葉が切れた。
店員さんが口籠ったかのようになると、少々お待ちください、と呼び出し音が流れた。
しばらくして「もしもし」と言う店員さんの声はどこか申し訳なさと疲労を含んだトーンだった。
「お待たせいたしました……申し訳ありません。クリスマスケーキですが、予約がすでにいっぱいでして……」
「えっ?! もう?!」
「はい……本当に申し訳ありません」
私の頭の中で、昭和のアニメみたいな「ガーーーン!」という効果音が鳴り響いた。
確か、予約開始時間は12時、つまりわずか2時でいっぱいになってしまったということだ。
12時・・・ちょうど袖口の布地のデザインが今ひとつ決まらず、四苦八苦していた頃だ。
私は、自分の見込みの甘さと、運のなさと、そしてなんとなく降ってきた孤独感をまとめて呪った。
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