2.
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うちはイタチ。私の幼なじみだ。
感情の読めない、掴めないところがある。
でも私は昔から彼が人として好きだった。
その理由に気付いたのは、数ヶ月前、自分なりの大失恋―恋人だったレンとの別れ―を経験してからだった。
別れても翌日が来ることが恨めしかったあの日、私は張り裂けそうな心を引きずりながら歩いていた。
おそらくだいぶ普段とはかけ離れた暗い表情をしていたせいだろう。すれ違った友人たちは「何かあったの?」と聞いた。
「大丈夫?」「元気出して」「言えるようになったら教えて」と心配そうに言ってくれた友人たち。
どれもありがたい言葉だった。
でも、誰にも気持ちを吐露することはできなかった。レンと付き合っていることは(一人を除いて)誰にも話していなかったからだ。親しい友人に告げるのはどことなく気恥ずかしい思いもあったし、そういうことはレンが嫌がりそうな気がしたからだ。
ただーー
それは、どんなに辛い時も取り持つ人がいないことを意味していて。
別れてからは、"誰かに相談していれば違ったかもしれない"と、的外れな後悔もした。
友人たちとイタチは明確に違った。
あれは、レンと別れた翌週だった。
ボロボロのメンタルで迎えた任務、その帰り道。きっと一日の中でいちばんひどい顔をしていたときに、イタチとばったり出会った。
何も気づかなかったわけじゃないだろうに、イタチは何事もなかったように、いつもの無表情で声をかけてきた。
「何かあったのか」その一言もなく、ただ、本当に、普通に。
しばらく話して、私は思った。
(あぁ、"いつもの毎日"ってこんな感じだったよな……)
そう思った瞬間、私はそこで気が緩み、初めて人前で泣いたのだ。
私が泣いても、イタチは何も言わなかった。
ただ、泣き止むのを待ってくれた。
その後、おそらく真っ赤な目をしたであろう私に、「甘栗甘の期間限定団子は食べたのか」と聞いた。
いつも通り、でも、いつも私から誘うばかりで彼からは出たことのない甘栗甘の話。
その時、私は気付いたのだ。
イタチの居心地の良さは、何も言わないことだと。
そして、何も言わなくても許してくれることだと。
*****
午後――第七訓練場。
「ちくしょー! もう一回だってばよー!!」
ナルトの怒鳴り声が青空に突き抜ける中、はたけカカシは木の幹に背を預け、文庫本を片手に穏やかに過ごしていた。
露わになった口元はどこか優しげで、時折ふっと笑みの気配を滲ませる。
「焦るとチャクラは乱れるぞ、ナルト。落ち着いてやれ」
「落ち着いてできたら、とっくに火影になってるってばよ!」
「それはずいぶんと遠い夢だな」
「なんだとー!? 先生、今笑っただろ!?」
そんな騒ぎの中、ふと風が変わる。木々の間をすり抜けるように、ナマエが静かに姿を現した。
「カカシさん。修行の途中だったんですね」
その声に、カカシが顔を上げる。彼の目が細くなり、ほんの一瞬だけ柔らかな色が浮かぶ。
「……ナマエ」
「あっ、ナマエ!!」
「“ナマエさん”でしょ、ナルト」
「いてっ!」
ナルトの後頭部にカカシの拳が軽く振り下ろされると、サクラが呆れたようにため息をついた。
かつてナマエは第七班の補助任務にあたったことがある。
タズナの護衛任務で人手が足らず、カカシのパックン経由の伝達で、火影様からお呼びがかかったことは記憶に新しい。
ナマエはナルトたちの6つほど年上だったが、ナマエの親しみのある雰囲気もあってすっかり第七班に溶け込んでいた。
「任務帰り?今日は終わるの早いのね」
カカシは、いつもの穏やかな声で答える。
あくまで自然体――だが、ほんの一瞬だけ、彼の目がナマエの手を見た。
刃物がかすったような傷。
「それ、任務でか?」
カカシがナマエの手を指差す。
「はい、ちょっと油断しまして」
「ふうん。珍しいな」
「……実はですね、よくやってます」
「そういうことは自分から言わなくてもいいんだがな」
カカシが軽口を交わせるのも、彼女が相手だからだ。ナマエが笑うと、カカシも目元を緩めた。
「……カカシ先生って、ナマエさんには甘いわよね」
二人のやりとりを見て、サクラがぼそっと呟く。ナルトは「なんか優しさの感じが違うってばよ」とボヤき、サスケは視線だけでそのやりとりを追った。
けれど、カカシはそれをさらりと流した。
「みんなも、ナマエくらい力をつけてくれるともっと楽できるんだけどねぇ」
「そんなのすぐ追いつくってば!」
「お前が一番遠いだろ」
「何を?!」
「相変わらず、みんな仲良しだねぇ」
その一言にナルトとサスケが「コイツとは違うけどな!」と同時に叫び、サクラが「ハモってるし」と呆れたように言う。
――カカシはナマエに優しい。
ナマエ自身でもそう思う時がある。
けれど、その優しさの根元に、ナマエは心当たりがあった。
カカシが何かと気にかけてくるようになったのは、ナマエが、カカシの"同期"であるレンと付き合いだした頃からだったからだ。
もともと大っぴらに公言している恋愛ではなかったが、なぜかカカシは薄々感づいていたようで、付き合ってからも時折心配の言葉をかけてくれていた。
そしてなんとなく、レンと別れてからも、そのままの関係性が続いている。
ナマエは時折思う。もし兄がいたらこんな感じなのかも知れない――と。
「で、なーに。何か急用?」
カカシの問いに、ナマエは少し声を潜める。
「次の任務のことで、ちょっと気になることがあって……」
その言葉に、カカシの目がわずかに鋭さを増した。
だが、言葉は穏やかだった。
「祭りの件か? どうした?」
「祭りー?!なになに、何かあったの?」
食い気味で割り込んできたナルトに、カカシは「関係ないでしょ」と嗜めた。
祭りとは、木ノ葉隠れの里で年に一度開催される伝統行事「灯火(ともしび)祭」のことである。
五大国の中でも比較的平和な里である木の葉だからこそ、”住民と忍がともに過ごす「感謝と祈りの祭典」”として根付いている祭典だ。
その最後に行われる慰霊の儀式ーー火影岩前の"灯篭流し"を見に、カップルやファミリーで他里から訪れる人も多い。
そしてそれは中忍選抜試験より遥かに、木の葉の里に人が集まる時でもあった。
警護体制を強化するのも当然で、カカシはその総指揮を、ナマエはその一角を任されていた。
ナマエは視線を下げ、少しだけ考え込む。
「念のための確認なので……また後でも大丈夫です」
一瞬、沈黙。
カカシの視線がナマエを見つめた。そこには上忍としての鋭さがあった。
「そうか。後でもいいが、気になることがあれば早めに教えてくれ」
その言葉に、ナマエはうなずき、提案が受け入れられたことに少し安心した。
ナルトの元へと視線を戻すと、また何やらドタバタが始まっていた。
「サクラちゃ〜ん、俺と祭りに行くってのは…」
「ねぇねぇ、サスケくん!サスケくんは誰かと行く約束してる?!」
「…くだらない」
サスケとナマエの視線が噛み合うとナマエはニヤリと笑った。
サスケは次に言われる言葉を予感し、はぁ、とため息をついた。
「サスケ、相変わらずだね。ナルトも、諦めずに誘いなね!じゃねっ」
「おい! 言い逃げはズルいってばよー!!」
訓練場を後にするナマエの背に、ナルトの叫び声と、仲間たちの笑い声が優しく響いていた。
その音の中に、ほんの少しだけ――カカシの視線も、確かにあった。
感情の読めない、掴めないところがある。
でも私は昔から彼が人として好きだった。
その理由に気付いたのは、数ヶ月前、自分なりの大失恋―恋人だったレンとの別れ―を経験してからだった。
別れても翌日が来ることが恨めしかったあの日、私は張り裂けそうな心を引きずりながら歩いていた。
おそらくだいぶ普段とはかけ離れた暗い表情をしていたせいだろう。すれ違った友人たちは「何かあったの?」と聞いた。
「大丈夫?」「元気出して」「言えるようになったら教えて」と心配そうに言ってくれた友人たち。
どれもありがたい言葉だった。
でも、誰にも気持ちを吐露することはできなかった。レンと付き合っていることは(一人を除いて)誰にも話していなかったからだ。親しい友人に告げるのはどことなく気恥ずかしい思いもあったし、そういうことはレンが嫌がりそうな気がしたからだ。
ただーー
それは、どんなに辛い時も取り持つ人がいないことを意味していて。
別れてからは、"誰かに相談していれば違ったかもしれない"と、的外れな後悔もした。
友人たちとイタチは明確に違った。
あれは、レンと別れた翌週だった。
ボロボロのメンタルで迎えた任務、その帰り道。きっと一日の中でいちばんひどい顔をしていたときに、イタチとばったり出会った。
何も気づかなかったわけじゃないだろうに、イタチは何事もなかったように、いつもの無表情で声をかけてきた。
「何かあったのか」その一言もなく、ただ、本当に、普通に。
しばらく話して、私は思った。
(あぁ、"いつもの毎日"ってこんな感じだったよな……)
そう思った瞬間、私はそこで気が緩み、初めて人前で泣いたのだ。
私が泣いても、イタチは何も言わなかった。
ただ、泣き止むのを待ってくれた。
その後、おそらく真っ赤な目をしたであろう私に、「甘栗甘の期間限定団子は食べたのか」と聞いた。
いつも通り、でも、いつも私から誘うばかりで彼からは出たことのない甘栗甘の話。
その時、私は気付いたのだ。
イタチの居心地の良さは、何も言わないことだと。
そして、何も言わなくても許してくれることだと。
*****
午後――第七訓練場。
「ちくしょー! もう一回だってばよー!!」
ナルトの怒鳴り声が青空に突き抜ける中、はたけカカシは木の幹に背を預け、文庫本を片手に穏やかに過ごしていた。
露わになった口元はどこか優しげで、時折ふっと笑みの気配を滲ませる。
「焦るとチャクラは乱れるぞ、ナルト。落ち着いてやれ」
「落ち着いてできたら、とっくに火影になってるってばよ!」
「それはずいぶんと遠い夢だな」
「なんだとー!? 先生、今笑っただろ!?」
そんな騒ぎの中、ふと風が変わる。木々の間をすり抜けるように、ナマエが静かに姿を現した。
「カカシさん。修行の途中だったんですね」
その声に、カカシが顔を上げる。彼の目が細くなり、ほんの一瞬だけ柔らかな色が浮かぶ。
「……ナマエ」
「あっ、ナマエ!!」
「“ナマエさん”でしょ、ナルト」
「いてっ!」
ナルトの後頭部にカカシの拳が軽く振り下ろされると、サクラが呆れたようにため息をついた。
かつてナマエは第七班の補助任務にあたったことがある。
タズナの護衛任務で人手が足らず、カカシのパックン経由の伝達で、火影様からお呼びがかかったことは記憶に新しい。
ナマエはナルトたちの6つほど年上だったが、ナマエの親しみのある雰囲気もあってすっかり第七班に溶け込んでいた。
「任務帰り?今日は終わるの早いのね」
カカシは、いつもの穏やかな声で答える。
あくまで自然体――だが、ほんの一瞬だけ、彼の目がナマエの手を見た。
刃物がかすったような傷。
「それ、任務でか?」
カカシがナマエの手を指差す。
「はい、ちょっと油断しまして」
「ふうん。珍しいな」
「……実はですね、よくやってます」
「そういうことは自分から言わなくてもいいんだがな」
カカシが軽口を交わせるのも、彼女が相手だからだ。ナマエが笑うと、カカシも目元を緩めた。
「……カカシ先生って、ナマエさんには甘いわよね」
二人のやりとりを見て、サクラがぼそっと呟く。ナルトは「なんか優しさの感じが違うってばよ」とボヤき、サスケは視線だけでそのやりとりを追った。
けれど、カカシはそれをさらりと流した。
「みんなも、ナマエくらい力をつけてくれるともっと楽できるんだけどねぇ」
「そんなのすぐ追いつくってば!」
「お前が一番遠いだろ」
「何を?!」
「相変わらず、みんな仲良しだねぇ」
その一言にナルトとサスケが「コイツとは違うけどな!」と同時に叫び、サクラが「ハモってるし」と呆れたように言う。
――カカシはナマエに優しい。
ナマエ自身でもそう思う時がある。
けれど、その優しさの根元に、ナマエは心当たりがあった。
カカシが何かと気にかけてくるようになったのは、ナマエが、カカシの"同期"であるレンと付き合いだした頃からだったからだ。
もともと大っぴらに公言している恋愛ではなかったが、なぜかカカシは薄々感づいていたようで、付き合ってからも時折心配の言葉をかけてくれていた。
そしてなんとなく、レンと別れてからも、そのままの関係性が続いている。
ナマエは時折思う。もし兄がいたらこんな感じなのかも知れない――と。
「で、なーに。何か急用?」
カカシの問いに、ナマエは少し声を潜める。
「次の任務のことで、ちょっと気になることがあって……」
その言葉に、カカシの目がわずかに鋭さを増した。
だが、言葉は穏やかだった。
「祭りの件か? どうした?」
「祭りー?!なになに、何かあったの?」
食い気味で割り込んできたナルトに、カカシは「関係ないでしょ」と嗜めた。
祭りとは、木ノ葉隠れの里で年に一度開催される伝統行事「灯火(ともしび)祭」のことである。
五大国の中でも比較的平和な里である木の葉だからこそ、”住民と忍がともに過ごす「感謝と祈りの祭典」”として根付いている祭典だ。
その最後に行われる慰霊の儀式ーー火影岩前の"灯篭流し"を見に、カップルやファミリーで他里から訪れる人も多い。
そしてそれは中忍選抜試験より遥かに、木の葉の里に人が集まる時でもあった。
警護体制を強化するのも当然で、カカシはその総指揮を、ナマエはその一角を任されていた。
ナマエは視線を下げ、少しだけ考え込む。
「念のための確認なので……また後でも大丈夫です」
一瞬、沈黙。
カカシの視線がナマエを見つめた。そこには上忍としての鋭さがあった。
「そうか。後でもいいが、気になることがあれば早めに教えてくれ」
その言葉に、ナマエはうなずき、提案が受け入れられたことに少し安心した。
ナルトの元へと視線を戻すと、また何やらドタバタが始まっていた。
「サクラちゃ〜ん、俺と祭りに行くってのは…」
「ねぇねぇ、サスケくん!サスケくんは誰かと行く約束してる?!」
「…くだらない」
サスケとナマエの視線が噛み合うとナマエはニヤリと笑った。
サスケは次に言われる言葉を予感し、はぁ、とため息をついた。
「サスケ、相変わらずだね。ナルトも、諦めずに誘いなね!じゃねっ」
「おい! 言い逃げはズルいってばよー!!」
訓練場を後にするナマエの背に、ナルトの叫び声と、仲間たちの笑い声が優しく響いていた。
その音の中に、ほんの少しだけ――カカシの視線も、確かにあった。