1.
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うちはイタチ。私の幼なじみだ。
顔立ちが良くて、頭も良くて、いつも落ち着いていて、無駄なことは言わない。
そんなイタチと、私がずっと一緒にいたことを不思議がる人も多いけど、私にとってラッキーだったのは苗字家とうちは家が隣同士だったことだ。
だから幼なじみとして昔から一緒に過ごしてきた、それだけのこと。
何も特別な関係じゃない。
……だったはずなのに。
「……ナマエ、体捌きが甘い」
「イタチが早すぎるんだって!」
イタチの言葉に、軽く返して距離を取る。
訓練場の夕暮れ、薄紅に染まった空の下で、私はイタチの指摘に軽く返す。
「“右に回避してそのまま投げ”の流れ、前に教えただろう」
イタチは少し呆れたように言ったが、私も負けじと言い返した。
「覚えてるよ。でもね、私、任務帰りなの知ってるじゃん?七割ぐらいの動きってことで勘弁してくれない?」
「敵は待ってくれない」
「イタチは敵じゃないでしょ?」
そう言って笑ってみせると、イタチは少しだけ眉をひそめた。
「……相変わらず屁理屈は上手だな」
「屁理屈じゃないってば。乙女の都合ってやつ」
「それが屁理屈だ」
いつもの軽口に、イタチは短く息を吐くようにわずかに笑った。
夕焼けに染まる空は、薄紫から茜色にグラデーションを描き、淡い雲がゆっくりと流れている。
「……こうやって話すのは、久しぶりだな」
訓練の合間。少しだけ2人に距離がある、そんな時。イタチがポツリとつぶやいた。
その声は穏やかで、でもどこか、遠い。
私は笑って、わざと軽く返した。
「なんだかんだで、毎日顔は合わせてない?昨日だって夕方、火影邸ですれ違ったし」
「……ああ」
私の言葉に小さく返事をした彼は、それ以上何も言わなかった。
本当は、イタチの言う意味も分かっていた。そして、彼の言う通りだった。
イタチと向き合い、こうしてゆっくり話すのは、実に1カ月ぶりだった。以前は数日に一度は顔を合わせていたのに。
理由は簡単だ。私が、会うのを避けてたから。
彼だけではなく、他の人も、知り合いは全員。
今日、彼から手合わせの誘いがなければ、まだ私とイタチはこうして話していなかったかもしれない。
私は視線を彼からそらして、夕焼けの空を見上げた。赤みを帯びた雲がゆっくりと流れ、風が新芽の匂いを運んでくる。
そんな、静かな間。
風が頬を撫でて通り過ぎてゆく、その時。
突如、後方でザッと足音が響いて、そちらに目を向けた。
「兄貴、こんなとこで何やってんだよ」
そこには、サスケが立っていた。
顔にはいつもの仏頂面。
「……ナマエ姉も」
「サスケ」
私は軽く手を振った。
いつもなら素っ気ないながらも反応を返してくれる彼だったが、今日はほんの少しだけ戸惑ったような、曖昧な表情を見せた。
そしてしばらく私を見た後、私ではなくイタチに話しかけた。
「兄貴が訓練場にいるなんて珍しいな。……なんかあったのか?」
イタチは一瞬だけ弟を見て、それから私に視線をむけた。
「……いや。用事は、もう済んだ。あとはサスケに任せる」
「え?」
「じゃあな、ナマエ」
もう済んだ?なにが?
そう思っている間にイタチは静かに背を向け、去っていった。
夕風が彼の黒髪を揺らした。
表情の読めないその後ろ姿を見送る。
訓練場には私とサスケだけが残され、しん、とした沈黙が少しだけ続いた。
その沈黙に、サスケからわずかな怒りを感じて、私はひとつ息をついたあと、サスケに話しかけた。
「……サスケ、元気だった?」
「元気だった、じゃねぇだろ。」
想像していた通り、少し怒っているようだ。
「……なんで急に来なくなったんだよ」
声は低かったけど、いつもの鋭さで言う彼に私は思わず小さく苦笑した。
そうなのである。
うちは家と苗字家は隣家で、特別な用がなくとも、私とサスケは毎日のように顔を合わせていた。
私が親を戦争で亡くしてからは特に、サスケの母ミコトさんが気にかけてくれたのもあって、よく私はうちは家にお邪魔していた。
けれどそれをここ1ヶ月ほど、私は意図的に避けていた。
イタチは任務で不在が多いからしばらくの間気付かなかったのかもしれないけれど、サスケはすぐに異変に気付いただろう。
何も言わずにただ謝る私に、サスケはため息を一つつき、バッサリと言い切った。
「レンと付き合ってたって、本当だったのか?」
「…サスケのその、前置きなく突っ込んでくるところ、好きだよ…」
サスケは何も言わずに私を見ていた。その目はから逃げるようにして、私はおでこに手をやった。
レンは私が先月まで付き合っていた恋人の名前だ。
付き合っていたことも、別れたことも、数人しか知らないと思うけれど、人の口には戸は立てられぬと言う。どこかでサスケも聞いたのだろう。
しばらく沈黙が続いたが、私はそれ以上何も言わなかった。聞かれても言うつもりもなかった。
そんな私に気付いたサスケは、「はぁ」とはっきりとわかるため息をつき、掌を少しだけ握りしめてから、そっと声を続けた。
「……今日はうち寄れよ。夕飯、すき焼きらしいし」
突然すぎる、その可愛い誘いに、思わず吹き出してしまった。
どうやら彼の中で私まだ、お肉で釣られる子供のまま変わっていないらしい。
「……サスケってば、ほんとに」
私は笑った。けれど、その笑いの裏で、少しだけ胸の奥があたたかくなったのも、事実だった。
「じゃあ、久しぶりにお邪魔しようかな」
返事をすると、サスケはふいと目をそらしたまま、小さく頷いた。
2人と話さなくなって、1ヶ月が経った今。
これをきっかけに、私たちの距離は少しずつ変わり始めることになる―――
春の風が、ふたたび頬を撫でた。
顔立ちが良くて、頭も良くて、いつも落ち着いていて、無駄なことは言わない。
そんなイタチと、私がずっと一緒にいたことを不思議がる人も多いけど、私にとってラッキーだったのは苗字家とうちは家が隣同士だったことだ。
だから幼なじみとして昔から一緒に過ごしてきた、それだけのこと。
何も特別な関係じゃない。
……だったはずなのに。
「……ナマエ、体捌きが甘い」
「イタチが早すぎるんだって!」
イタチの言葉に、軽く返して距離を取る。
訓練場の夕暮れ、薄紅に染まった空の下で、私はイタチの指摘に軽く返す。
「“右に回避してそのまま投げ”の流れ、前に教えただろう」
イタチは少し呆れたように言ったが、私も負けじと言い返した。
「覚えてるよ。でもね、私、任務帰りなの知ってるじゃん?七割ぐらいの動きってことで勘弁してくれない?」
「敵は待ってくれない」
「イタチは敵じゃないでしょ?」
そう言って笑ってみせると、イタチは少しだけ眉をひそめた。
「……相変わらず屁理屈は上手だな」
「屁理屈じゃないってば。乙女の都合ってやつ」
「それが屁理屈だ」
いつもの軽口に、イタチは短く息を吐くようにわずかに笑った。
夕焼けに染まる空は、薄紫から茜色にグラデーションを描き、淡い雲がゆっくりと流れている。
「……こうやって話すのは、久しぶりだな」
訓練の合間。少しだけ2人に距離がある、そんな時。イタチがポツリとつぶやいた。
その声は穏やかで、でもどこか、遠い。
私は笑って、わざと軽く返した。
「なんだかんだで、毎日顔は合わせてない?昨日だって夕方、火影邸ですれ違ったし」
「……ああ」
私の言葉に小さく返事をした彼は、それ以上何も言わなかった。
本当は、イタチの言う意味も分かっていた。そして、彼の言う通りだった。
イタチと向き合い、こうしてゆっくり話すのは、実に1カ月ぶりだった。以前は数日に一度は顔を合わせていたのに。
理由は簡単だ。私が、会うのを避けてたから。
彼だけではなく、他の人も、知り合いは全員。
今日、彼から手合わせの誘いがなければ、まだ私とイタチはこうして話していなかったかもしれない。
私は視線を彼からそらして、夕焼けの空を見上げた。赤みを帯びた雲がゆっくりと流れ、風が新芽の匂いを運んでくる。
そんな、静かな間。
風が頬を撫でて通り過ぎてゆく、その時。
突如、後方でザッと足音が響いて、そちらに目を向けた。
「兄貴、こんなとこで何やってんだよ」
そこには、サスケが立っていた。
顔にはいつもの仏頂面。
「……ナマエ姉も」
「サスケ」
私は軽く手を振った。
いつもなら素っ気ないながらも反応を返してくれる彼だったが、今日はほんの少しだけ戸惑ったような、曖昧な表情を見せた。
そしてしばらく私を見た後、私ではなくイタチに話しかけた。
「兄貴が訓練場にいるなんて珍しいな。……なんかあったのか?」
イタチは一瞬だけ弟を見て、それから私に視線をむけた。
「……いや。用事は、もう済んだ。あとはサスケに任せる」
「え?」
「じゃあな、ナマエ」
もう済んだ?なにが?
そう思っている間にイタチは静かに背を向け、去っていった。
夕風が彼の黒髪を揺らした。
表情の読めないその後ろ姿を見送る。
訓練場には私とサスケだけが残され、しん、とした沈黙が少しだけ続いた。
その沈黙に、サスケからわずかな怒りを感じて、私はひとつ息をついたあと、サスケに話しかけた。
「……サスケ、元気だった?」
「元気だった、じゃねぇだろ。」
想像していた通り、少し怒っているようだ。
「……なんで急に来なくなったんだよ」
声は低かったけど、いつもの鋭さで言う彼に私は思わず小さく苦笑した。
そうなのである。
うちは家と苗字家は隣家で、特別な用がなくとも、私とサスケは毎日のように顔を合わせていた。
私が親を戦争で亡くしてからは特に、サスケの母ミコトさんが気にかけてくれたのもあって、よく私はうちは家にお邪魔していた。
けれどそれをここ1ヶ月ほど、私は意図的に避けていた。
イタチは任務で不在が多いからしばらくの間気付かなかったのかもしれないけれど、サスケはすぐに異変に気付いただろう。
何も言わずにただ謝る私に、サスケはため息を一つつき、バッサリと言い切った。
「レンと付き合ってたって、本当だったのか?」
「…サスケのその、前置きなく突っ込んでくるところ、好きだよ…」
サスケは何も言わずに私を見ていた。その目はから逃げるようにして、私はおでこに手をやった。
レンは私が先月まで付き合っていた恋人の名前だ。
付き合っていたことも、別れたことも、数人しか知らないと思うけれど、人の口には戸は立てられぬと言う。どこかでサスケも聞いたのだろう。
しばらく沈黙が続いたが、私はそれ以上何も言わなかった。聞かれても言うつもりもなかった。
そんな私に気付いたサスケは、「はぁ」とはっきりとわかるため息をつき、掌を少しだけ握りしめてから、そっと声を続けた。
「……今日はうち寄れよ。夕飯、すき焼きらしいし」
突然すぎる、その可愛い誘いに、思わず吹き出してしまった。
どうやら彼の中で私まだ、お肉で釣られる子供のまま変わっていないらしい。
「……サスケってば、ほんとに」
私は笑った。けれど、その笑いの裏で、少しだけ胸の奥があたたかくなったのも、事実だった。
「じゃあ、久しぶりにお邪魔しようかな」
返事をすると、サスケはふいと目をそらしたまま、小さく頷いた。
2人と話さなくなって、1ヶ月が経った今。
これをきっかけに、私たちの距離は少しずつ変わり始めることになる―――
春の風が、ふたたび頬を撫でた。