絵葉書 -君がくれた、この想いは…-

緊張するのを必死に抑えながら、ソラのいるベッドへと向かう。
一歩、また一歩と近付く度に、微笑んだ彼の表情が少しずつ陰りを見せ始めていた。

「……ごめんね、ヒロ。僕はもう、目が見えなくなってしまって……」
「──!」

言われて初めて気付く。
細めた瞼の奥に潜む黒眼が、灰色に濁っている事に。

「ヒロ。いつも楽しい手紙をありがとう。
僕は、生まれつき体が弱くて……小さい頃から、入退院を繰り返していたんだ」

穏やかで、優しい中性的な声。
寂しそうに奏でるそれは、俺の心を簡単に抉る。

「八歳の頃かな。その頃からずっと、家に帰れなくなって。
最初は、学校の友達がお見舞いに来てくれたんだけど、その内誰も来なくなって。……見かねた同室のおばさんが、文通を勧めてくれたんだ」
「……」
「だから、同い年のヒロから手紙が届いた時は……嬉しかった。
もう、二度と経験する事のできない学生生活を、ヒロが教えてくれたから」
「……」
「手紙を読んだ後、目を瞑って想像するとね……ヒロと一緒にいるような気がして。辛い入院生活も、キツイ治療も、手術も、頑張れた」
「……」
「いつも、ヒロを近くに感じていたんだよ」

少しだけ伏せたソラの瞳から、涙が溢れて零れ落ちる。

「ありがとう。……あの日、僕を見つけてくれて」



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