絵葉書 -君がくれた、この想いは…-
受付でソラの病室を聞き、逸る気持ちを抑えつつ、足早に階段を駆け上る。
顔なんて、知らない。
今までどう生きてきたのかも、知らない。
思い返せば、ソラは俺の話を聞くばかりで、自分の事を余り話さなかった。
──クソ。
何でもっと、ソラの話を聞かなかったんだよ。自分の事ばっかりで、俺は、俺は。クソ……
病室の前に立ち、ドアノブに手を掛ける。
緊張で震える指。ここまできて、急に足が竦む。
突然、見ず知らずの男が入ってきたら、ソラはどう思うだろう。
もし俺だと知ったら、ソラはどんな反応するだろうか──
「……!」
風に戦ぐ白いカーテン。
引き戸を開けて直ぐ目に飛び込んできたのは──それを眺めるかの様に、角度をつけたリクライニングベッドにもたれる男性。
痩せ細り、幾つも管が繋がれ、着ている病衣と大差ない程肌が白い。
肩までかかる長い髪は、色素が抜けてしまったんだろうか。白銀色のそれが、風に靡いてキラキラと輝く。
「………誰?」
ゆっくりと、彼が此方に顔を向ける。
少しだけ幼さの残る顔立ち。大きな瞳に長い睫。透き通る肌に際立つ、薄赤紅色した唇──
──ドクンッ
首を少し傾げた彼の姿は、窓から射す眩い光に溶け込んで美しく輝き、俺は不謹慎ながら、胸が高鳴ってしまった。
「ヒロだよ……ソラ」
熱くなる頬に恥ずかしさを覚えながらそう答えれば、ソラが僅かに目を見開く。
「………ヒロ?」
「うん」
「本当に、ヒロなの?」
ソラの口角が少し上がり、優しく目を細める。
「うん。ソラに、会いに来た」