絵葉書 -君がくれた、この想いは…-



ミーンミンミン……

届いたのは、たった一枚の絵葉書だった。
サラサラとした小麦色の砂浜。空よりも蒼く広い海。穏やかな白い波。全てを見下ろすように立つ入道雲。
いつもは手紙なのに、珍しいな──そう思いながら片腕で額の汗を拭い、もう一度宛先の面へとひっくり返す。


〖いつも御手紙をありがとうございます。
ソラさんは今、体調を崩され○○療養所に入所しています。〗


ミーンミンミンミン……
何となく感じていた違和感。それが、胸騒ぎへと変わる。

「……」

震える指先。
暑いはずなのに……何も、感じない。
葉書を持つ指先の感覚も。額から伝い流れる汗も。汗ばむ肌に張り付くシャツの不快感も。

ヤケに耳障りな、蝉の音も。


「──!」


いてもたってもいられず、サンダルを突っ掛けたまま走り出す。

その瞬間──時が動き出したかのように暑さが戻る。けたたましい蝉の音。それが辺りに渦巻き、僕の不安を煽る。

まるで、僕の行き先を阻んでいるかのようで。




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