Rain -拗らせた恋の行く末は…- side story


「あんな別れ方したから、気になってて。ずっと考えてたんだよ。
──大空だったら、どうしたかってな」
「……」
「教室の隅っこで、一人ポツンと座ってる実雨の後ろ姿を見る度に……胸が張り裂けそうに痛くてよ。
……声、掛けてやんなきゃなって思いながらも……また実雨を傷つけんじゃねーかって。その一歩が踏み出せなくてよ」
「……」
「だから、実雨の方から話し掛けてきてくれた時……凄ぇ嬉しかったんだぜ。これでも」

そう言って、今井くんが僕に笑顔を見せてくれる。
不器用ながらも、今まで見た事のないくらい……柔らかくて。優しくて。

「もしまた、今日みてぇな事があったら、俺が庇ってやる。
助けてやるから……心配すんな」

今井くんの、大きくて温かい手。
その手が滑り下り、僕の頬を包んだ後、意地悪げに頬をきゅっと摘まむ。

「な?」
「………うん」

心が、震える。
また涙が零れそうになり、慌てて目を伏せるけど……

「ああもう、……泣くんじゃねぇ」

少し慌てながらも呆れたトーンで、今井くんが自身の袖口を伸ばし、その涙の跡をグイと拭ってくれる。




時折吹く風のせいで、寒い筈なのに……

大空の形見である指輪の入った左胸が、じんわりと温かくなったような気がした。








END

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