Rain -拗らせた恋の行く末は…- side story

「今まで、悪かったな。
お前に気持ちが無いの解ってて、強引に俺のオンナにして。
実雨を傷つけて、辛い思い……させちまってよ」

今井くんを映す瞳のスクリーンが、次第にぼやけていく。
瞬きする間もなく、溢れてくる熱いものが次々と零れ、頬を濡らす。

「……」

そんな事、ない……
今井くんは、優しいよ。
優しすぎるよ……
……僕には、勿体ない位に……


「………おい、泣くな」

僕の異変に気付いた今井くんが、慌てて僕に手を伸ばす。
涙で濡れた頬を拭う……武骨な指。 

間近で合う、瞳と瞳。
その間を、冷たい冬風が吹き抜ける。

「……」


………ああ、終わったんだ。

今井くんとは……もう……


そう、感じずにはいられなかった。
鋭く真っ直ぐに向けられた、今井くんの瞳の中に──もうあの日の熱情は、何処にも見当たらない。

それに酷くホッとしながらも、何処か感傷的な気持ちにもなって。
涙で潤む瞳を、少しだけ揺らす。


「………ねぇ。今井くん」

ゆっくりと瞬きをし、深呼吸をする。
それに答えるかのように、真っ直ぐ僕を見ながら、今井くんの瞼が僅かに持ち上がる。

「……時々でいいから。
またこうして……一緒にお喋りしたり、お昼食べたり……しても、いいかな……?」

そう言い切った後、不安に苛まれて揺れていた瞳を、真っ直ぐ今井くんに向ける。

……こんなの、許される筈ない。
一度離れていった人は──もう二度と
戻ってこないんだから……

そう何処かで諦めながらも、何も無かった事にはしたくなくて。
友達にはなれなくても──目が合った時、挨拶を交わせる程度の関係では、いたくて──


「だったら。今度から皆で飯食おうぜ」

「………え」


柔らかな溜め息の後、瞳を緩めた今井くんが、真剣に答えてくれる。
それは、予想もしていなかった言葉で。頭の中が処理できずに、パニック状態になる。

「今朝はあんな感じになっちまったけど。根はいい奴等だから。
その内アイツらも、実雨の魅力に気付くだろ」
「……」

一体、何が起きたんだろう。
動揺する僕の頭に手を乗せ、今井くんが優しくよしよしする。


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