これは、バームクーヘンエンドか Rain-拗らせた恋の行く末は…- スピンオフ


「……なんで、僕を避けんの?」

目が合っただけでも、あからさまに避けられ。
我慢出来なくなった僕は、授業が終わって席を立とうとする樹を捕まえ、廊下に引っ張り出した。

「本当に嫌だと思ってる?」
「……」
「なぁ、樹!」

引き下がらなかった。
今度は、曖昧にする訳にはいかない。
樹の胸元を掴み、壁際にまで詰め寄って見上げる。

「………思ってないよ」
「じゃあ、何で? 東生がヘンな事言ったせいか?
そんなの気にすんなよ。今まで通り、普通にしてろって!」

樹の返答にホッとしながらも、調子に乗った僕は……多分、樹をコントロールしようとしたのかもしれない。
樹への想いを伏せたまま……

「……ごめん。それは無理」

困ったように眉尻を下げ、視線を逸らし……樹が僅かに口角を持ち上げる。

「……!」

それ以上、何も言えなかった。
離れるしか、なかった。
怒鳴る事も縋りつく事も、出来ずに。

本当は悔しくて。泣きたくて。
心の中はぐしゃぐしゃだったのに──




「愛咲には何度も告って、何度もフラれてんだけどな」

溜め息をついた東生の唇が、言葉を紡ぐ。

「………え」
「何だよ。意外か?」

照れ隠しなのか。東生が口元を少しだけ綻ばせる。

「初めて告った時、『愛月が好きだから絶対無理』って、ハッキリ言われてさ。
むしゃくしゃしてて。
……なのにお前は、愛咲の気持ちに全然気付かねぇで。いっつも樹と顔突き合わせてホモってっから。……ムカついて、つい……」
「……」

何だよソレ。
完全に、八つ当たりじゃん。

──ああ、そうか。
だからコイツ、みんなで遊園地行こうって言い出したのか。

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