第164幕
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『もういい加減にしたらどうだ?』
何度も斬りかかろうとしてくる平子に冷たい眼差しを向ける。諦めずに立ち向かってくる姿には称賛するが、状況が状況なため素直に褒めることは出来ない。
「姐さんが死んでくれたら兄貴は絶望するでしょう?そうしたら兄貴は戦う意味がなくなります。だから死んでください、姐さん」
『短絡的な発想だなそれは』
小さくため息をこぼして刀を横に一閃。平子を振り払うように刀を振ると、平子は近くの民家の中へと吹き飛ばされていった。
「海!」
『銀、ちょっと邪魔すんな』
駆け寄って来ようとしている銀時をひと睨みしてその足を止めさせた。刀を地面へと刺し、海は指をパキパキ鳴らしながら吹き飛ばされた平子へとゆっくりと近づいていく。
『そろそろお灸を据えてやらねぇといけねぇな、平子』
ここまで好き勝手に動いてくれたのだ。多少なりとも怒られる覚悟はあるはず。民家の居間に転がっている平子とカチリと目が合う。海はにこりと微笑んだはずなのに、平子は青ざめた顔で海を見た。
「ご、ご愁傷さま……」
近くで海と平子をそっと見守っていた銀時が哀れみの声色で呟いているのを聞いてから、海は民家の中へと消えていった。
数分後、スッキリとした面持ちで出てきた海を見た銀時は引き攣った笑みを浮かべた。
「め、珍しいじゃねぇか。お前が女、子供に手を出すなんて」
『あ?悪いことしたら叱るのが大人の役目だろうが』
「いや、まぁそうなんだけどね?」
地面に刺したままだった刀を手に取り鞘へと戻す。灸を据えた。これ以上、平子に自分が何かをする必要はないだろう。
肩の荷が下りたと思ったら、今まで忘れていた脇腹と背中の怪我の痛みが主張してきた。痛みに顔を歪め始めた海に銀時が慌てて手を貸した。
「おいおい、大丈夫かよ!」
『あー、これは開いたかもしんねぇ』
「もう無理すんなって」
元より赤く染まっていた白のワイシャツに新しく滲む赤。元々赤だったのでは?と思ってしまうほど海のシャツは真っ赤に染まり、それほど怪我の具合が良くないのだろう。
じくりじくりと痛みが強くなるのを感じながら、銀時になんでもないと強がるも、銀時の眉間に深いシワが刻まれた。
「こんな時まで我慢なんかすんじゃねぇ!お前はもうここを離れろ!」
『んな事言ってらんねぇだろ。こんな状態で放っておけないだろうが!』
まだ乱戦状態のかぶき町。未だに収拾がつかないこの街をおいて一人病院に行くなんてことは出来ない。
そう銀時に訴えたのだが、銀時は海の意見を無視した。
「ダメだ。早く病院に行け」
『お前……人の話聞いてたか?』
「聞いてます。聞いてるから早く行けって言ってんだろうが、このタコ!」
『いっ!?』
ガツンッ!と頭上に落ちる銀時の拳骨。頭を押えて銀時を見やると、怒りに満ちた瞳で海を見ていた。
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