第163幕
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「なんで……ここに……」
『何でだろうな?』
にこりと微笑む海が平子の足元へと何かを投げつける。平子は咄嗟にその場から飛び退いて地面に落ちたものを見て舌打ちを漏らした。
「あいつら……!」
『見張りがうっかり屋さんで助かったわ。簡単にあの牢を抜けることが出来た』
地面に落ちているのは海を閉じ込めていた牢の鍵の束。それは平子がここに来る前に海の様子を見てこいと命令したあの二人の男に持たせた物。
「両手は塞がってたはずなのに!なんで!!」
『それは自分で考えろ』
牢は次郎長によって出された。だが、そんな事がバレれば裏切りとして次郎長は刺されかねない。今こんな状況で面倒事を増やすのは良くないと、建物を出る前に海はあの二人組から鍵を奪い取っていた。
自力であそこから抜け出てきたと思わせるために。
「桜樹……」
『あー……オカマバーの。どうも』
「どうもじゃないわよ!アンタ怪我は……!」
『なんとか?まぁ、道に迷ってふらつくぐらいの余裕はあったから。そのせいで来るの遅れちゃったけどな』
あはは、と軽く笑う海に言葉を無くす西郷。西郷の横から顔を出したアゴ美が心配そうに海をじっと見つめていたが「あの子!ワイシャツ真っ赤よ!ママ!」と海のワイシャツを見た途端吠え始めた。
「海さん!」
「海!!」
『子供らも元気そうで何よりだわ』
海の姿を見るなり嬉しそうに手を振る二人。そんな二人にうるさそうな顔をする人物が一人。
「バカ」
『ごめん』
「心配したんだからな」
『うん。わかってる』
素っ気なく言う銀時に海は俯きがちに返事をする。そんな海の頭上へと投げられる上着。慌てて手に取ろうと上着に手を伸ばして受け取った。
「そんな格好でウロウロすんな」
『お、おう……?ん?』
「そんなんじゃ足んねぇかもしんねぇけど、無いよりかはマシだろ?」
上着の中から出てきたのは包み紙。それを開けば、白いまんじゅうが出てきた。
『あぁ……そういうことか』
いつだったかお登勢に聞かされた話。海と銀時の関係を知ったお登勢が、海に話した銀時のこと。自分がいない間に銀時が一人苦労していたのだと。
『お母さんみたいだな』
まんじゅうを見つめた後、それを口の中へと入れる。数日ぶりの食べ物の摂取に胃がまだ足りぬと貪欲にも音を鳴らした。
『銀、人手が足りなさそうだと思ったから何人か声掛けてきたわ』
「え?」
真選組の上着に腕を通しながら呟く海。その海の後ろから続々と来た応援に銀時たちは目を丸くした。
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