第146幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……兄さん、やっぱりダメ?」
『こんな雨の中、ラジオ体操なんかしたら風邪ひくだろうが』
今日は朝からどんよりとした雲色とジメッとした雨。屯所の玄関で靴を履いて出かけようとしていた朔夜の襟を後ろから引っ張って止めてどこへ行くんだと問えば、これからラジオ体操しに行くんだと言うではないか。
こんな雨の中でラジオ体操なんかすれば風邪をひく。健康のためにやっているはずのものが、逆に不健康になるじゃないかと注意したのだが、朔夜はどうしても行きたいと駄々を捏ねて玄関から一向に離れない。
『いい加減にしろ。ダメだと言ったらダメだ。また明日にしろよ』
「……毎日行くって約束したんだよ、本郷くんに」
俯いてぼそぼそ呟く朔夜。そんな朔夜に呆れたように大きくため息を漏らす俺。
『あの子だってこんな雨の中来るわけないだろ。体が弱いこと知ってるんだろ?なら尚更来ねぇよ』
「……そう……かな」
『親御さんが雨の中でラジオ体操することを許すと思ってるのか?』
優しく問うように言えば、朔夜はゆるゆると首を横に振った。
「許さないと思う」
『だろ?だから、今日は大人しく屯所にいろよ。また明日、神楽と本郷くんとやればいいだろ?』
「う、ん」
まだ納得がいかないと言うような歯切れの悪い返事。それでも多少なりとも諦めがついたのか、履いていた靴を脱いで自分の部屋へとぼとぼ歩いて行った。
『はぁ……。山崎』
「はい!どうしました??」
『悪い、ちょっと出掛けてくるわ』
「え"、こんな雨の中をですか!?」
『ちょっと気になる事があってな』
朔夜が見えなくなってから山崎を呼びつけて、少し外出すると伝えてから俺は屯所を出た。
『有り得ないとは思うんだけどな……』
少しばかり嫌な予感がする。もしかしたらという不安を抱きつつ、足早にいつもの公園へと向かった。
靴が濡れるのもお構い無しに公園へと走っていけば、雨音の中でうっすらと聞こえるラジオ体操の曲。ヒヤリとしたものが背中を伝うのを感じながら急いで音の元へと行けば、本郷が1人そこに佇んでいた。
「あれ……朔夜くんのお兄さん……」
『なんでこんな雨の中やってんだ!』
慌てて自分が着ていた隊服の上着を脱いで彼の頭へと被せる。その時に触れた彼の頬はかなり熱く、真っ赤だった。
「神楽ちゃんと朔夜くんが……来るって……言ってくれたから……だから、僕もって」
『こんな日にまで来なくたっていいんだよ!雨の日くらい休んだって誰も怒りゃしねぇよ!』
ぐったりと倒れ込む本郷を抱きかかえて近くの病院へと走る。病院についた時には、本郷くんは荒い息を吐きながら固く目を閉じていた。
.