第162幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「帰る家なんてありゃしないよ。あんたちに居場所はもうここにはない」
「西郷さん!」
意気消沈していた神楽たちの前に現れたのは、花束を手に持った西郷。西郷を見て驚き、立ち上がった新八へと花束を投げつけ、呆れた声でボヤいた。
「バカなヤツだよ。あれほど逃げろと言ったのに」
「西郷さん……あの時の電話もしかして……」
お登勢スナックに掛かってきた電話。お登勢は銀時からの電話だと言っていたが、本当は西郷からの忠告。
「すまなかった……なんて言うつもりはないよ。私は何も出来なかった。それにこれからも……」
俯く西郷が覚悟を決めたように前を向く。険しい表情で言い放った言葉は新八たちをドン底へと落とした。
「明後日、あんたらの店は私たち四天王勢力によって打ち壊される」
「えっ……」
「明後日だ。それまでに荷物まとめてこの街から出ていきな」
「な、なんでそんな事に!」
西郷から受け取った花束を床へと叩きつけ、新八は西郷に詰め寄る。
「聞こえなかったかい?もうこの街にあんたらの居場所はないって。街中が、かぶき町そのものがあんたたちの敵なんだよ」
冷たく言い放つ西郷に青ざめていく新八。どうしてそうなったのか、何が原因なのか分からない新八には受け入れ難い事実。
「ガキでも人質に取られたか」
「銀さん……」
西郷の後ろからふらりと出てきたのは右腕に包帯を巻き、顔に手当をされた銀時。
「連中、どうやら私を試すつもりらしい。私にも私の守らなきゃいけないもんがあるんでね」
息子もオカマバーの仲間たちも守らなければいけない。その為なら例え顔見知りの人間相手だったとしても牙を剥く。容赦はしない、と目が語る。
「パー子、こいつらのこと頼めるかい?」
「心配要らねぇ。もう店は畳むつもりだ。あとは好きにやってくれ」
銀時の言葉に驚く新八と神楽。どういう事だと二人が問い詰めるよりも先にキャサリンが銀時の胸ぐらを掴んで壁へと押しやった。
「テンメー!オ登勢サンニコンナマネサレテ、店マデ潰サレテ尻尾巻イテ逃ゲルツモリカー!」
「戦えってのか、冗談よせよ。次郎長一人でもこのザマで、海でさえも敵わないのによ」
その言葉に西郷が眉をピクリと上げる。ちらりと視線を彷徨わせて首を傾げた。
「オ前ガソンナタマカヨ!アホノ坂田ァ!出テクナラ、テメエダケ出テイキナ!私ハ……私ハ!」
「ババアが何で一人で行ったか分かるか?俺たち守るためだよ。それでも死にてえなら勝手に残って、勝手に死にな。どうせ万事屋もババアの店も畳むんだ。もう俺たちは赤の他人。それぞれ好きにやりゃいい。俺も好き勝手やらせてもらうぜ」
胸ぐらを掴んでいるキャサリンの手を掴んで離し、銀時は一人歩き出す。その背中へと西郷が鋭い眼光を飛ばした。
「あんた、あの黒いのはどうしたんだ」
西郷の言葉に踏み出した足を止めて銀時は立ち止まる。
「いつも一緒にいるあの黒いのはどうしたんだ?」
「お前には関係ないだろ」
「大いに関係あるわ。あいつには大分世話になったからね」
「あっそ。だから?」
冷たく返す銀時に西郷は眉間に深いシワを寄せる。
「パー子、あの子は……」
「うるせぇって言ってんのが分かんねぇのか!!!!」
「ぎ、銀ちゃん……!」
廊下に響き渡る程の怒号で西郷を黙らした銀時はそのまま背を向けて歩き出す。懐にある海の上着を着物越しに抱きながら。
「……また、守れなかったんだよ」
.