第162幕
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「キャサリン様、いい加減お休みになってください。もう2日間その調子ですよ。私には休息は必要ありません。代わりますから、キャサリン様」
集中治療室にいるお登勢を呆然と見つめるキャサリンに連れ添っているたまが声をかけるも反応はない。
2日前、病院からお登勢が刺されて入院していると聞いた時は驚いた。急いでキャサリンと共に荷物を纏め、たまはスナックを飛び出した。
お登勢は次郎長に刺された。お登勢と共に運ばれてきた銀時が一言呟いていたのは覚えている。
きっとあの時だろう。海と銀時が新八たちにあの男を託した時。あの後何かがあったに違いない。多くを語らない銀時にたまはそう悟った。
ふと、後ろを振り返る。椅子に座る子供達も疲労の溜まった顔を浮かべていた。キャサリンと同じく、寝ずにお登勢の容態を見守っている。
「海様が見られたらきっと怒りますね」
子供が無理をするんじゃないと言って二人を寝かせるはず。二人を叱りつけている海のイメージが目に浮かぶが、瞬きをした後に残ったのは子供達の姿だけ。
あの日、病院に来たのは銀時とお登勢の二人だけ。海の姿はなかった。
「どこに行ってしまわれたんですか」
あの人が傍に居てくれるだけで安心できるのに。少なくとも、子供たちの精神的には彼が必要だろう。
音もなく消えてしまった彼。銀時に聞いても首を横に振るだけで何も答えてはくれなかった。否、銀時も海の行方を知らないのだろう。
海がいつも着ている真選組の隊服を手に持っていた銀時。悔しそうに顔を歪め、"また俺はアイツを……"と苦しげに漏らしていた。
「神楽ちゃんも少し休んだら?」
不意に新八が神楽へと声をかけるのが聞こえた。声色から疲労がピークに達しているのが分かる。早くあの二人を休ませなくては。お登勢を思うあまり、二人が身体を壊しては元も子もないのだから。
「人んちですやすや眠れるほど尻軽女じゃないネ。それに寝て起きた時、もしバアさんが……」
「大丈夫だよ。きっと大丈夫。一旦家に帰って休んだ方がいい。みんなまで倒れたら誰が一番悲しむか……それにきっと海さんも……」
「……海どこにいるアルか。こんな大事な時にどこ行ってるネ」
「…………神楽ちゃん」
天井を見つめながらぼそりと呟く神楽に新八が顔を上げる。海が居ない不安に押しつぶされそうな顔をしながら。
「海様……どこにいらっしゃるんですか」
早く戻ってきてください。でないとこの子たちの心が、銀時様の心が。崩れ落ちてしまいます。
泣きそうな表情を浮かべる神楽と新八にたまは拳を強く握りしめた。
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