第161幕
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雨の中、墓石の前に力なく座るお登勢。いつもの小馬鹿にしたような言葉も彼女が好き好んでいた煙草の香りもなかった。
ただあるのは赤。腹部を刺されたお登勢から流れ出る血は雨に流されて銀時と海の足元へと伝ってきていた。
『……お……とせさん……?』
呆然と見つめる銀時と海。間に合わなかった、遅すぎた。すぐに救急車を呼ばなくてはいけないのはわかっている。だが、目の前の出来事に海の身体は凍りついて動かなかった。
「おめぇさんが銀時か」
そんな二人の後ろで煙管を吸う男。
「一足遅かったな。夫婦仲良くおいらが葬ってやったよ。こいつも奇縁ってやつかねぇ。おめぇさん、確かお登勢に恩があって用心棒代わりしてたんだってなぁ。そいつはもうしめえだ。お役御免だよ」
灰色の空を見上げながら紫煙を吐く次郎長。お登勢に免じて命は取らないでやる。だからこの街から消えろ。
そう呟いた次郎長の顔面へとぶつけられる木刀。次郎長は墓石にぶつかりながら吹き飛ばされていった。
「海」
『……ん』
次郎長へと歩いていく銀時に海は小さく頷く。隊服の上着を脱いでお登勢へと被せる。胸ポケットから取り出した携帯で病院に電話をした。
『ごめん、お登勢さん……間に合わなくて……ごめん』
泣きそうな顔で謝り続ける海。
救急車を呼び終えた頃には銀時と次郎長の方も決着がついていた。
「あんたも元いた巣に戻りな」
『銀時……は』
「あのあんちゃんも出ていくだろうよ」
ゆらりと立ち上がる海に目を細める。お登勢を見つめたまま振り返らない海に次郎長は刀へと手を伸ばした。
「無駄なことだ。大人しくお家帰りな、黒猫」
"あんたも大変そうだねぇ、黒猫"
それはお登勢が海をバカにする時に呼ぶあだ名。やめてくれと何度言ってもやめなかったお登勢に海は何度ため息をついたことやら。
『その名で呼ぶな』
「……若いもんにしては大層な殺気を出すじゃねぇか」
先程やり合った白夜叉もそうだが、この男も桁違いに強い。
「あんたあの男の番らしいな。白夜叉に閃光か」
ズリッと海が足を動かす音が聞こえて次郎長は身構える。瞬きの間に海は手にした刀を次郎長へと振りかざしていた。
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