第146幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それからというもの、変わらず毎日ラジオ体操に行っていたのだが、お盆が近づくにつれてラジオ体操をやる人は段々と少なくなっていった。
今ではもう自分と神楽とあの皆勤の本郷だけ。指導員の田中さんも実家に帰るということで、カードに押すハンコは各自持ってこいとの書き置きを残して消えた。
「神楽ちゃん、ハンコどうする?」
「お前が押せヨ」
「あ、うん」
差し出された神楽のカードに自分のハンコを押す。ならば自分のカードはどうするか。自分の名前のハンコを押すのはなんか違う気がする。カードを見つめたまま悩んでいる僕へと躊躇いがちな声が掛けられた。
「あ、あの……おじさん今日来ないって聞いてたから僕ハンコ持ってきたんだけど……押そうか?」
「ほんと!?」
「うん」
「なら、君のカードには僕が押すよ!」
「いいの?ありがとう!」
互いにカードを交換してハンコを押し合う。自分のカードに押された本郷というハンコをじっと見つめた。
「何やってるアルか」
「ハンコ押してもらったんだよ。自分のカードに自分の名前があるなんておかしいでしょ?」
「そんなの気にしないネ。やったもんはやったんだから」
「そうだけどさ……」
後で兄に見られた時に不思議がられる。理由を話せば分かってくれるだろうけど、それでもやはり違う人の名前がいい。と言う僕に神楽はふーんと気の抜けた返事。
「お前は夏休みどこも行かないアルか?ひょっとしてお前ん家も金がないアルか?」
「ちょっと、神楽ちゃん!」
場所を移して公園のベンチ。3人仲良く座りながら休憩していた中、不意に神楽が口を開いた。
「大丈夫、気にしないで。お金っていうか……僕体が弱くて頻繁に病院に顔出さなきゃいけないから、あんまり遠出は出来なくて」
「そっか、金はあっても体がいうこときかないアルか。世の中うまくいかないアルな。私は体はピンピンだけど、金はピーピーネ」
「それが一番だよ。僕なんてこんな体だからいっつも何でも長続きしなくて寺子屋にもロクに通えてないし……。朔夜くんは?どこにも行かないの?」
沈んだ気分を晴らすために本郷は話題を変えるように僕の方へと話を振ってきた。僕は苦笑いを浮かべながら頭を横に振る。
「こいつは仕事が忙しくてどこにもいけないネ」
「仕事?朔夜くん仕事してるの?」
「うん。僕、真選組の隊員なんだ」
「真選組の!?すごいね!」
「そんなことないよ。兄さんが居なければ僕は入ることなかっただろうし」
兄がいたから真選組に入った。兄が真選組として働いていた姿に憧れて、自分も誰かの役に立つ仕事がしたいと思って入隊した。と話せば、本郷は目を大きく開いて驚いていた。
「すごいや……僕とそう変わらなさそうなのに。立派だね」
「そ、そんなことないって!あっ!?ごめん、僕そろそろ帰らなくちゃ!」
時計を見ればもう朝食を食べ終わっている時間。神楽と本郷に慌てて別れを告げて公園を飛び出した。
.