第158幕
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"ねぇ、先生。僕も銀みたいに強くなれるかな?"
"なれますよ。海ならきっと"
"ほんと!?なら僕頑張る!"
にこやかに笑いかけて、海の頭を優しく撫でてくれた大きな手。父親のように優しく包み込んでくれた彼はもうここにはいない。
「松陽先生……!」
燃え盛る村塾を呆然と見つめる海。横には泣き崩れている銀時。
あぁ、もう自分たちに笑いかけてくれるあの人はいないんだと。もう助けてくれる人はいなくなってしまったんだ。
絶望に浸る海は泣くことも悲しむことも出来ず、ただ呆然と燃えゆく塾を見つめることしか出来なかった。
「俺……たち……どうすれば……」
『銀……』
泣きじゃくる銀時が海へと投げかける。それに答えられるほど海は大人でもなく、必死に考えを巡らせたが、答えは出なかった。
『(銀は……僕が守らなきゃ)』
先生からもらった本を力強く胸に抱く。あの人が教えてくれたことは多くはなかったが、それでも生きていくのに大切なことを教えてくれた。
先生が銀時と海を守っていたように、今度は自分が銀時を守る番だと心に誓った。
『銀……銀時、立て』
「海……?」
『大丈夫。俺がいるから』
「お前……」
『大丈夫。俺はずっとそばに居るから』
そう言って振り返った海は一筋の涙を流して笑った。失われてしまった物は戻らない。嘆き悲しんでる暇があるなら残されたものを守らなくては。
その為に強くなる。銀時を自分の身を守れるほどに強くなってみせる。
新たに決意した海は萌えて崩れゆく村塾を目に焼きつけるようにじっと見つめた。ここで立てた誓いを忘れぬように。
『俺が……守るから』
もう銀時が泣かないように。泣かせないように。
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