第158幕
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いくつもの屍が敷き詰められている戦場。敵も味方も倒れ伏して、もはや誰が誰だか分からないほど入り乱れていた。
そんな中、天人達に囲まれ、傷だらけになろうとも刀を握りしめてただ真っ直ぐ前を見ていた。
「あのバカ……どこ行きやがった」
「海のことか?海なら高杉と一緒ではなかったか?」
「気に食わねぇ……」
顔は見えずとも、不機嫌顔をしているのが分かる。頭から垂れてくる血を手の甲で乱暴に拭い、桂は軽く笑った。
「貴様の海大好きは本当にめんどくさいな」
「あ?んだよ、てめぇも海狙いかよ」
「そんなわけあるか。確かに海は可愛らしいかもしれん。だが、あの方向音痴と天然さは俺でも手が焼ける」
「それが可愛いんだろうが。おま、あいつが迷子になって迎えに行った時、どんな顔するか知ってるか?心底安心したって顔してから睨むんだぜ?ツンデレ具合やべぇんだよ」
「はぁ……お前はいつからそんなに変態になったのだ」
「海の為なら変態でもなんでもなれますー」
天人に囲まれているというのに海の話で盛り上がる二人。
だが、それもつかの間。下卑た顔をする天人達の一人が銀時と桂に向けて一歩踏み出した。それに合わせて周りの天人達も少しずつにじり寄ってくる。
「銀時、もはやこれまでか」
戦い続けて疲労が溜まったこの身体でこの数の天人を相手にするのは無謀とも言える。荒い息を整え、多数の天人を見据えた桂が諦めの表情を浮かべた。
「敵の手にかかるより最後は武士らしく、潔く腹を切ろう」
「バカ言ってんじゃねぇよ」
自害することを決めた桂に銀時は立ち上がるように声をかける。真っ白だった衣は敵と自分の血で真っ赤に染まっている。銀時は自分の姿を見てため息を漏らした。
「ったく、これじゃ戻った時にまた文句言われちまう」
きっと、腕を組んで眉間に皺を寄せて怒るだろう。怪我をしたことも、無理をしたことも。
それでも。この場を切り抜ければ彼に会えるというなら。多少の無理くらい許してくれるはず。
「美しく最後を飾りつける暇があるなら。最後まで美しく生きようじゃねぇか」
刀を構えて立つ銀時に桂はそっと微笑む。彼らしい言葉に背を押されて迷いなど消し飛んだ。
「行くぜ、ヅラ。あいつの……海の元に帰るんだ」
「ヅラじゃない。桂だ。まったく、俺もお前と一緒に怒られるではないか」
怒りながらも帰ってきた事に安心して笑う彼に。また血まみれになった服を嫌な顔せずに洗ってくれる彼に。
また五人で笑い合うために。
銀時と桂は迫り来る天人に刀を向けて走り出した。ただ、真っ直ぐ。戻るべき場所の為に。
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