第157幕
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電車が止まり扉が開く。キャサリンと共に降りた海は小さく欠伸を漏らす。
時間は既に日付を越えていた。
『居そうか?』
駅構内をフラフラと歩き回るキャサリンに声をかけるが、末次郎らしき人物はどこにも居ない。
電車も最終だったらしく、速やかにホームから出るようにとアナウンスが流れた。
『(……やっぱり……か)』
嫌な予感はしていた。だからキャサリンについてきたのだ。
末次郎の姿を探して駅を出るキャサリン。その後をひっそりと海もついていった。
一日中、末次郎を探し続けたキャサリン。一緒に店を開くはずだった場所も、一緒に住むはずだった家も違う人が居た。
彼女が騙された。と気づいたのは、自身の預金を確認した時だろう。
雪が降る寒空の下、呆然とした顔で公園のベンチに座るキャサリン。
風邪をひくといけないと言って、海はキャサリンの肩へと自分の隊服の上着をかけてその場から少し離れた所で電話をかけた。
『……クロだった』
たった一言電話の相手に伝えれば、相手は悔しそうに嗚咽を漏らしていた。
『やる事はわかってるな?』
"わかってる……"
涙声で返事をする朔夜にこの件に関わらせるにはまだ早かったかと後悔の念。
『朔夜、無理なら土方に代わっても構わないからな』
"ううん。大丈夫。やるって言ったのは僕だから。最後までちゃんとやり遂げるよ"
知り合いが結婚詐欺にあい傷ついてしまったことを自分の事のように悲しみ泣きじゃくっている朔夜に海は何も言えずに黙り込んだ。
もう少し早くわかっていればこんな事にはならなかったかもしれない。気づいた時には後の祭り。
ちらりとキャサリンを見れば、傷心中の彼女へと声をかけるホームレスの男。狙っているのはキャサリンが持っている酒だろう。
キャサリンから男を離そうと動き出した時、キャサリンが酒を抱きしめてボロボロと泣き始め、男がひたすらキャサリンに頭を下げた。
"兄さん?"
『いや、なんでもない。朔夜、そっちの事は任せたからな。多分、お前が行く頃には終わってると思うが』
"え?それどう言う──"
朔夜の言葉を最後まで聞くことなく海は携帯を閉じる。
お登勢から渡された酒の意味を知ったキャサリンは涙が枯れてしまうのではないかと思うほど泣き続けていた。
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