第157幕
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翌日の空はどんよりとした曇天。朝から降り出した雨も強く、傘をさしているのにも関わらず、隊服が濡れてしまっていた。
そんな中でも海は屯所を出て仕事をしていた。詐欺事件の被害者への聞き込みである。
昼食を取ることを忘れるほど被害者宅を周り、犯人についての情報をひたすら集めた。
そのおかげか、漸く犯人の目星がついてきた。
『後は物的証拠さえあればなんとかなるか』
屯所への帰り道。聞き込みで得た情報を頭の中で一つ一つ整理していく。
犯人はやはり単独犯ではなかった。しかも、公的手続きを取って会社を設立している者。
『めんどくせぇな……下手に手を出せば営業妨害だのなんだのって逆に訴えられちまう』
相手は金融会社。有事の際の為に弁護士を雇っているかもしれない。証拠を手にするまでは社内捜査は出来ないだろうし、捕まえることだって難しいだろう。
『証拠をどうやって集めるか……ん?』
やっと犯人を見つけたというのにまた新たにぶつかった壁に頭を悩ませていた海の目に止まった人物。
雨の中、傘をさして立ち尽くす銀時。
こんな所で何をしているのかと声をかけようとしたが、銀時の纏う雰囲気はそんな気軽に声をかけられるようなものではなかった。
『(なに……してんだ?)』
銀時の視線の先にあるのは質屋。
質屋をじっと見つめたまま微動だにしない銀時に海は首を傾げる。
暫くその場で銀時を見ていたが、不意にこちらへと振り返ったことで海の存在に銀時が気づいた。
「あれ?こんなとこで何してんのよ」
『それはこっちのセリフだわ。お前こそこんな所で何してんだよ』
何事も無かったかのように笑う銀時。海は小さくため息をついて、銀時の傍へと寄る。
「散歩?雨の日の散歩もたまにはいいなってな。で、海は?まさかこんな日にも見回り?」
『今日は土方と総悟が見回り。俺は別件で調べ物』
「お忙しい事で」
お疲れ様、と労りの言葉と共に海の頭へと伸びる銀時の手。髪を梳くように撫でられれば、濡れて冷たくなった髪に銀時は顔を顰めた。
「こんな濡れてたら風邪ひくじゃねぇか」
『屯所に帰るつもりだったんだよ。そしたら銀が居たから……』
「帰れなくなっちゃった?」
不意に手を引かれて海は銀時の方へとよろめく。持っていた傘は手から離れて地面へと軽い音を立てて落ちた。
「身体、冷やしすぎ」
『仕方ないだろ。朝から動き回ってたんだから』
背中へと回る銀時の腕。海は銀時の首元へと顔を埋めて与えられる温もりに浸った。
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