第157幕
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銀時のところに泊まってから数日後。海は自室にて書類の整理を行っていた。
二徹した頭では思うように考えがまとまらず、手元の書類を何度も見ては項垂れた。
「兄さん、お茶持ってきたけど……」
『朔夜か。悪いな』
襖越しに弟の声が聞こえて顔を上げる。静かに襖が開けられ、そこには心配そうに海を見つめる朔夜の姿。
「また徹夜してるの?」
『ちょっと手のかかる事件が多発しててな』
「どんな事件?」
湯呑みを置くために書類で溢れた机を片付けてスペースを作る。空いた所へと朔夜は持ってきたお茶と羊羹を置いた。
『これは?』
「食堂のおばさんがくれたんだ。疲れてる時は甘いものがいいって」
『そんなに気を遣われてんのか』
「みんなちゃんと兄さんのこと見てるんだよ。だから無理しないでね?」
温かいお茶を飲みながら羊羹を口へと運ぶ。口の中に広がる甘さに海の表情が和らいだ。
その横で朔夜が先程まで海が見ていた書類へと手を伸ばして内容を見る。
事件の内容はどれも詐欺被害。電話で息子を騙り大金を振り込ませた、故意に事故を起こして損害賠償を求められた、など色んな事件がびっしりと書いてあった。
「これ……」
『ここ1.2ヶ月の間のものだ。かなり短いスパンで行われてる。きっと同一犯によるものだな』
「こんな酷いことする人がいるんだ……」
『世の中、金のためなら何でもするっていうのも居るからな』
真面目に仕事をする者もいれば、その者から奪おうとする者もいる。
だからこそ海達がいる。常に目を光らせ、悪さをしようと企む輩がいたら容赦なく捕まえる。
「兄さん、これ僕も手伝っていい?」
『それは構わねぇけど……』
「こんなの見過ごせないよ。絶対捕まえてみせる」
皺になるほど書類を握りしめる朔夜。怒りに打ち震え、被害にあった人たちのことを思って悲しむ姿に海は苦笑いを浮かべる。
『頑張んのは一向に構わないが、この案件は少しめんどくせぇよ?』
「それでもやるよ」
『そ。ならなんも言わねぇ』
この詐欺事件。素人による犯行ではないことは明らかである。そして犯人も複数。捕まえるなら全員捕まえたいところ。
ならば奴らのアジトを見つけなくてはならない。
「ねぇ、兄さん」
羊羹を咀嚼しながら考え込んでいた海に首を傾げた朔夜が、書類の一点を指差して問いかける。
「結婚詐欺ってなに?」
『あぁそれは──』
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