第155幕
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すみませんと何度も謝る山崎に苦笑いを浮かべて宥めていると、玄関の方から男の声が聞こえて山崎と海は身構える。
そんな二人を横目に土方は玄関へと顔を出し、何かを受け取って戻ってきた。
『お前……』
「副長……!」
土方の手にあるのは美味しそうなラーメン。それを見た海は"なんだ、ちゃんと山崎のこと考えてたんじゃねぇか"と感心し、部下を気遣った土方に向けて緩く笑みを向けた。
が、そのラーメンは山崎に手渡されることはなく、土方本人が麺を啜っていた。
「やっぱり海さんが最後の良心ですね……」
『すまん。後で土方にはキツく言っておく』
とりあえず今はその弁当で我慢してくれと海が申し訳なさそうに言うと、山崎は弁当を大切そうに抱えて何度もお礼を言った。
「で、どんな女だった?楢崎 幸は」
ラーメンを啜りながら監視対象の女性を見遣る土方。山崎も弁当を食べながら窓の隙間から女性を見つめる。
「普通にいい子でしたけど。少なくとも、俺が見張ってた五日間はね。とても凶悪な攘夷浪士の姉とは思えないくらい」
「ほう……総悟の例に漏れず、きょうだいってのは片方がダメだと片方はしっかり育つんだな」
『それは俺に対する嫌味か?土方』
山崎の横でラーメンを食べる土方を睨む海。
「副長補佐も朔夜くんもいい子だと思いますけどね、俺は!」
すかさずフォローをする山崎に海はため息をついて睨んでいた目を閉じた。山崎は土方を肘でつついて注意すれば、土方はバツが悪そうに"すまん"と呟いた。
「海さん、鈍兵衛の方はどうですか?」
『相変わらずだな。隊士と元お仲間さんに見つからないように逃げ回ってる……が、時間の問題だろう』
鈍兵衛を追っているのは海たちだけではない。かつての仲間からも追われている身なのだ。隠れられる場所も狭まってくる。
鈍兵衛が逃げられる場所は最早、唯一の肉親である姉の場所しかない。
「姉を餌に弟を釣るなんてあんまり気持ちのよくない話ですね」
「じゃあ、このまま弟ほったらかしにすんのが気持ちのいい話か?それに鈍兵衛を追ってる浪士たちもヤツを捕まえるための餌としてあの女を狙ってきたとしたら……」
きっと彼女も無事では済まないだろう。見張りの本来の理由としてはあまり気の進まない事かもしれない、だが、彼女を守るという体での見張りであれば罪悪感も何も無いだろう。
『山崎、お前はあの女性を守ってやってくれ。俺達もここにいて山崎の手伝いをしたいけど、鈍兵衛を追ってる攘夷浪士の方もどうにかしねぇと』
だから、山崎にしか頼めないのだと頭を下げる海。山崎は海に頭をあげるように声をかけ、海の頼みなのであれば全力で職務を全うすると胸を張って笑った。
「いや、頼んだの俺なんだけど」
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