第146幕
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「神楽ちゃんと朔夜くんすごいね。今んとこ皆勤じゃん」
「ありがとうございます!このハンコ貰うのが楽しみで、毎日頑張ってるんです!」
「そうなの?毎日来てくれるのはこちらとしても嬉しいねぇ」
ぽんっとハンコを押してもらったカードを受け取る。そこにはいくつもの赤いハンコが押されていた。今月の頭から始めたラジオ体操。毎日欠かさず来ているので、どこにも空白は無い。
一つ一つ増えていくハンコににやける顔を抑えて神楽の方へと目を向けた。
「神楽ちゃんもいっぱい貯まったね」
「当たり前ネ。1度やると決めたら最後までやり通す。それが私アル」
「さすが神楽ちゃん!」
えっへん。と腰に手を当ててドヤ顔で言う神楽。そんな神楽にハンコを押してくれたおじさんが、神楽の遅刻ギリギリの参加に心配そうな声を掛けた。
「でも、神楽ちゃん。いっつもあんなぎりぎりに滑り込んでたらそのうちハンコ逃しちゃうぞ?朔夜くんみたいに5分前にここに来てるとかは出来なさそう?」
「寝不足は美容の大敵ネ。女は1分1秒でも多く睡眠を取らなければいけないアル」
「さっすが!山姥みたいな頭して人前に出てくるだけあるわ」
「神楽ちゃん、美容って言って気を遣うのはわかるけど……なんか矛盾してるんだよね……」
「あ、朔夜くんもそう思う??」
「なんだよ朔夜。なんか文句アルか!」
「文句はないよ!文句はないけど……」
「男だったらハッキリ言えヨ。そんなんだから海みたいに強くなれないネ」
「そこになんで兄さんが出てくるのさ!」
ハッキリ言うか言わないかで強さが決まるのなら常にハッキリ物事を言っている。そんなんで強くなれるなら苦労などはしないだろう。
兄と比べられるのは別に構わない。むしろ兄が凄いのだと褒められている気がして嬉しく思う。ただ、彼女は偶によく分からない比べ方をしてくるから腑に落ちない。
ムッと眉間に皺を寄せて不機嫌顔で神楽を見れば、まぁまぁと指導員のおじさんがその場を収めようと口を挟む。
「でも、2人ともホント偉いよ。かぶき町の子供なんてみんなスレちゃってこんな行事相手にしないもの。来るのは健康オタクかじいさんばあさんだけ。子供は神楽ちゃんと朔夜くんくらい……あっ、もう1人いたか」
指導員のおじさんはちらりと左側の方へと目を向ける。釣られてその先を見れば、別の指導員からハンコをもらっている男の子の姿。自分や神楽とそう歳の変わらない子が嬉しそうにハンコをもらっているのが見えた。
「あれ、本郷尚君。彼も今んとこ皆勤だね。なんでも体が弱いとかで健康のために参加してるらしいんだけど、偉いよ彼は。体操開始15分前には必ず来てるもの」
「ふーん……」
「僕より早い。やる気満々なんですね」
「そうだね。だから神楽ちゃんも彼を見習って早めに来るようにしたらどうだい?」
「神楽ちゃんのことだからいつか寝坊しそうだもんね……」
本郷くんをじっと見つめてブツブツと何かを言っている神楽に苦笑いを零し、ふと公園に設置されている時計を見ればもう帰る時間。
おじさんと神楽に一声掛けてから僕は屯所に戻るべく走り出した。
「あの本郷くんって子……また明日来るかな!」
また明日から楽しみが増える。まだ話したことも無い彼。もしかしたら友達になれるかもしれないという期待を胸に屯所へと急いだ。
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