第155幕
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『山崎に張り込み?』
書類を片付けていた海の元へ訪れた土方がこくりと静かに頷いた。
楢崎 鈍兵衛。攘夷浪士であるその男は自分が属している組織から金を盗み逃げ回っていた。元より、凶悪な攘夷浪士として真選組でも追っていた相手である。
そんなやつが組織から抜けて一人彷徨っているなど格好の餌食。これを機に奴を捕まえようというのが土方の計画。それと山崎の見張りはなんの接点があるのか。
『誰を張り込んでるんだ?山崎は』
「鈍兵衛には姉がいる。そいつの元へ逃げ込むだろうよ。その姉貴を山崎に見張らせてる」
『また山崎に無理させやがって……』
「こういうことは山崎の方が適任だろ。何のために監察として働いてんだ」
『それはそうかもしんねぇけど……』
真面目な山崎のことだ。その姉のことを四六時中見張ろうとするだろう。確かに仕事なのだから仕方ないとは言えど、体調を崩してまで行うことでもない。それなら交代制で見張ればいい。
考え込む海に土方は小さく舌打ちをして煙草に火をつける。
「海、てめぇは山崎を甘やかしすぎだ」
『誰が誰を甘やかしてるだと?』
「てめぇが山崎をだ。アイツの仕事は元々そういうもんだ。それ以下でもそれ以上でもねぇ。海、お前山崎の仕事を無くすつもりか?」
煙草の煙をふっと吐き出すと、海は煙たそうに手で払う。
土方の言葉は一理ある。山崎にストップを掛けてしまえば、それは山崎の仕事を邪魔したことになる。
それでもと俯く海に土方はため息をついて立ち上がった。
「行くぞ」
『どこに?』
「山崎が心配なんだろうが」
『行っていいのか?』
「山崎から張り込みの途中経過の報告が来てねぇ。それを聞きに行くだけだ」
だから早く隊服脱いで私服に着替えろ。と土方は言い残して海の部屋を出ていった。
『心配なのは俺だけじゃないんじゃねぇか?』
土方が居なくなった部屋でくすりと笑う海。
隊服から私服へと着替え、屯所の玄関へと行く前に食堂へ寄った海。食堂にいるおばさんに弁当を作って欲しいと声をかけ、それを受け取ると急いで土方の元へと向かった。
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