第153幕
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店内をグルグルと回ってみたものの、朔夜に渡すプレゼントを中々決められない海。
山崎から幾つか提案されたが、悩むだけで首を縦に振ろうとはしなかった。
『プレゼントってこんな悩むのかよ……世の中の親ってすげぇな……』
「普段から見てますからね。多分、欲しい物とか常々把握してるんですよ。それに子供なら親にこれが欲しいって強請ると思うんで」
『アイツ強請らねぇんだよ……』
「それは副長補佐に迷惑掛けたくないとかじゃないですか?」
『……別にそれくらい……』
あぁ、本当にこの姿を朔夜本人に見せたい。むしろこれがプレゼントになるのではないかと山崎は一人心の中で呟く。海も普段からその態度で接してあげれば、今日この日をこんなに悩まなくて済んだのではないだろうか。
『子供が欲しがりそうなもんなんか分かんねぇわ』
「朔夜くんの好きな物とか知らないんですか?」
『………………』
無言から伝わる知らないという言葉。眉間に皺を寄せてショーケースの中に入った玩具を睨むように見る海。
もうこれなら一層のこと、プレゼントなど買わずにケーキだけ買ってあげればいいのではないだろうか。
「副長補佐、今日はとりあえずケーキだけ買いに行きましょうか」
『プレゼントは?』
「それは後日、朔夜くんに聞くとしてです。今日はケーキ買って、朔夜くんといっぱい話してあげてください」
『……分かった』
渋々だが、海は頷いてショーケースから顔を上げる。山崎オススメだというケーキ屋へと立ち寄り、クリスマスケーキをホールで買って二人は屯所へと歩き出す。
「ちゃんと朔夜くんの話聞いてあげてくださいね?聞くだけじゃなくて、海さんも話してあげてくださいね?」
『お、おう……』
道中、山崎から色々と指摘された海は戸惑いながらも頷き、屯所に戻ったら一番に朔夜を探そうと心に誓った。
「ただいま戻りましたー!」
『ただいま』
「お帰りなさい!山崎さん、兄さん!」
屯所の門を潜ると、そこには朔夜が立っていた。山崎と海が帰ってくるのを待っていたのか、鼻を赤くしている朔夜に海は急いで自分の隊服の上着を脱いで朔夜の頭へと被せた。
『風邪ひくだろうが。なんで部屋で待ってなかったんだよ』
「だって、兄さんたち帰ってくるの遅かったから。また何かあったのかと……」
『そん時は電話してる。ったく、こんな身体冷やしてどうすんだよ』
上着で朔夜を包むようにすれば、海は朔夜の背中を押した。
「(副長補佐、なんだかお父さんみたいだなぁ)」
そんな二人の姿を山崎はケーキを持って微笑ましく眺めていた。
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