第152幕
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『やんだか……』
立っているのもやっとな程の豪雨はぴたりと収まった。一時はどうなるかと思ったが、どうやら杞憂だったらしい。
空も段々と青さが見えて、太陽が顔を出てきた頃、近くでぴしゃりと水が跳ねる音が聞こえた。
「海!!」
『あぁ、お疲れさん。大変だったみたいだな』
海の元へと走りよってくる銀時。その姿はボロボロで、巳厘野家で何があったかなど聞かなくても分かるほどだった。
「お前……!」
『そんな急がなくても大丈夫だっつの』
息を切らしながら海の前へと辿り着いた銀時は心配気に見つめる。そんな彼へと微笑みかける海。
「なんかよくわかんねぇけど、すげぇモン出したんだろ!?お前身体大丈夫なのかよ!」
『別にそんな大したことは……あぁ、まぁ少し疲れたけどよ』
へらりと軽く笑って返したのだが、銀時は辛そうな顔をした。銀時の表情に海は不思議そうに首を捻る。自分よりも大変だったのはそっちだろう。屋敷の安全なところに居た自分より、得体の知れない式神と戦って沢山の怪我を負ったのは銀時のはずなのに。
「全部、見えたから。あの鳥が力貸してくれた時に」
『……あっそ』
「海が一人で頑張ってたの俺知ってるから」
『別にそんな頑張ってなんか……』
「ありがとな、海。おかげで助かった」
苦しげに顔を歪めながら銀時は海を力強く抱きしめる。雨で冷たくなった身体を温めるように包む銀時。
海もゆっくりと銀時の背へと腕を回して労わるように撫でた。
『銀もお疲れさん。お前の方がよく頑張ったよ』
「海の方が頑張ってたって。なんだよあの鳥。俺のことすげぇ庇ってよ」
『そりゃ護れって頼んだからな』
「俺の下敷きになってもピンピンしてるんだぜ?式神ってすげぇよ」
『…………そん時か』
「え?」
海がぼそりと呟いて小さくため息を漏らす。耳元で聞こえた溜息に銀時は海の顔を覗き込んだ。
『やたら重たい一撃を2回ほど食らってな。
意識飛ぶかと思ったわ』
「え。やっぱ、海にも伝わるもんなのか?」
『よくわかんねぇけど……多分、あの式神が力を使う度に俺の気力持ってかれてたと思う』
海の言う2回というのは、きっと銀時を庇って殴られた時と下敷きになった時のことだろう。それを思い出した銀時は"あー……いや、なんつうかすまん"と一言謝って海を強く抱き締めた。
『銀、そろそろ神楽たち戻ってくるから離れろ』
「え?いいじゃんこのままでよ」
『よくない』
「だって海立ってられんのかよ」
ぐっと肩を押された銀時は素直に海から身を離す。銀時から離れた海はふらりと身体を傾けて膝から崩れ落ちそうになった。
『まじかよ……』
「だから言ったじゃん。なに?安心して力抜けちゃった?さっきからずっと俺が支えてたんだからね?」
自力で立ち上がれない海を銀時は横抱きにして結野家の屋敷へと歩き出した。
『悪い……』
「いーよ。この為に急いで来たんだからよ」
こうなる事を見越して銀時はいち早く結野家へと戻ってきた。海が倒れないように、倒れても自分が支えられるように。
その言葉に海は俯いて顔を隠した。ほんのりと染まった顔を見られないように。
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