第151幕
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雨の中、晴明はたった一人傘を差して屋敷を出ていった。
単身、巳厘野家へと向かった彼に俺と銀時は何も言わずに見送った。
「なぁ、海」
『俺は止めないから。好きにすればいい』
何を。と言うことも無く銀時は苦笑いを浮かべる。まだ何も言ってないだろと言いながら俺の頭を撫でる手。
どうせ手を貸しに行くと言い出すに決まっている。
「いつまでも雨じゃ気分も晴れねぇよ」
『そうだな』
「俺は結野アナの笑顔が見たいんだよ」
『……そうだな』
「今、妬いた?え、海妬いた?」
縁側で庭を眺めながら素っ気なく返せば、銀時がずいっとにやにやした顔を寄せてくる。その顔に平手をお見舞いしてから離れた。
「ったく、ほんと最近冷てえな……」
『外道丸、晴明は本当に一人で行く気なのか?』
「晴明さま以外戦える人間がいないでござんす。他の結野衆はみな倒れているので」
『晴明は……』
「死ぬでござんす」
煎餅をバリバリと食べながらあっさりと答えた外道丸。そんな外道丸を冷ややかな目で見る俺の背中へと触れる銀時。
「道満は以前より数段強くなっておるでござんす。顔に刻まれた呪印。恐らく晴明さまに勝つために外法に手を出したかと。代わって晴明さまは無数の式神を江戸守護に配し、力を分散しているでござんす。ひとつ所に力を集めれば分かりませんが、役職上それは出来やせん」
淡々と語る外道丸。新八も神楽も晴明に勝機が見えないことに段々と暗い表情を浮かべていった。
「あの状態では今の道満には勝てないでござんす」
「俺たちがいけばそいつは変わるのか?」
沈黙を貫いていた銀時が不意に外道丸へと声をかける。一人、勝ち目の見えぬ戦いへと行った晴明が向かった先をじっと見つめたまま。
「銀時さま、こう言っちゃ何ですが、これ以上この件に深入りするのはよしなんせ。あっしがなぜクリステルさまに遣わされたのか分かりやすか?あなたたちを止めるためでござんす。"決して危険を冒させるな。彼らの命を最優先に行動しろ"と命じられ……」
「そんな……!このまま晴明さんを見殺しにしろってんですか!?もう戦えるのは僕ら以外いないんですよ!?」
「妹萌えが死んだら誰が1番悲しむかわかってんのか、おかっぱ!結野アナが泣いてもいいアルか!?」
『(それは一番外道丸が分かってることだろうな)』
神楽の言葉に俯く外道丸。結野アナのことをあれ程大切にしている外道丸ならこの状況が芳しくないことは分かっている。
彼女が一番理解していて、一番どうにかしなければならないと思っているはずだ。
『難しいもんだな』
「なんも難しくねぇよ」
そっと優しい声色で呟いた銀時が立ち上がる。ブーツへと足を滑り込ませて雨の中歩き出した。
「難しくねぇよ。手を貸してほしいなら言いやいい」
"そうだろ?"と俺に問いかけてくる銀時はとても優しげな表情だった。そんな銀時へと俺も遅れて微笑み返し、"そうだな"と一言返した。
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