第149幕
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「ありゃ、こりゃまた雨が降ってきたねぇ」
『ですね……』
見回りの途中でぽつぽつと降ってきた雨。八百屋のおばさんがどんよりとした空を見上げて深いため息を零した。
「またあの若い子は外しおって。困るねぇ」
『結野アナ、ですか』
「ここんところずっと外してるだろう。前までは当ててたのに」
毎朝テレビに出ているお天気おねえさんこと結野クリステルアナウンサー。天気に関しては百発百中。占いも必ず当たると言われている女性。
それが最近になって外しに外している。彼女が晴れだと言えば雨が降るし、雨だと言った日には雲ひとつない青空だったりする。
『不調、か』
パラパラと降り出した雨を眺めていた時、視界を覆うように現れた傘。
「これ使ってください」
『珍しいですね。貴女が天気を外すなんて』
「ごめんなさい……」
『責めてるわけじゃないですよ。ただ、貴女ほどの人が突然外すとなると……原因がありそうだなと』
俯く彼女に苦笑いを浮かべる。申し訳なさそうに眉を下げる結野アナ。自分の方へと傾いている傘を結野アナの真上へと戻す。
『何があったのか教えてくれませんか?』
「それは……」
『無理にとは言いませんけど』
「桜樹さん……」
『ここじゃなんですから……。ちょっと移動しましょうか』
泣きそうな顔をする結野アナに緩い笑みを向けて歩かせる。結野アナが持っている傘を借りて歩き出すはいつもの場所。
「桜樹さんは怒らないんですか?」
『怒るところがどこにあるんですか?』
「百発百中なんて言われてるのにこんなに天気を外してしまって」
あぁ、そんなことか。確かに彼女の天気予報は必ずといっていいほど当たっていた。そのおかげで傘を持ち歩くか否かを決めていたのだから。
『別に天気が外れたって俺は構いませんけどね』
「え?」
『天気なんてコロコロ変わるもんですよ。でなければつまらないと思いませんか?』
毎日決まった天気よりも、たまに天候が崩れた方が楽しいじゃないか。雨が降ったって、雪が降ったって構わない。そう言って笑いかけると、結野アナは益々泣きそうな顔をした。
「桜樹さんは優しいですね」
『そんな事ねぇよ。つか、俺の事覚えてたのか』
「ええ。こんな綺麗でかっこいい人忘れませんよ」
『将軍への面会の時にすれ違ったくらいなのに。物覚えが良い人なんですね』
「(その時だけじゃないんですよ、なんて言っても覚えてないかな)それなりにですよ」
彼女と初めて会ったのは城だった。松平に呼ばれ、将軍の話し相手として城へ出向いた時に彼女にばったりと出会した。
なぜこんな所にお天気アナウンサーが?と思ったが、彼女の身分を聞かされたことによって納得した。
『さて、着きましたよ』
「万事屋……ですか?」
『ええ。多分、ここなら結野アナの悩みを解決してくれるかと』
持っていた傘を結野アナの手に持たせて自分は一歩下がる。戸惑う結野アナに万事屋への戸へと背中を押した。
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