第174幕
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『ということです。今回は本当に申し訳ありませんでした』
深々と頭を下げる海に近藤は戸惑い、土方は深い溜息をついた。
牢獄でのひと騒動は当然の如く真選組の耳にも入った。屯所に帰ってきた海を出迎えたのは土方。海が今までどこに行っていたのかも全てバレていて、海が言うよりも先に土方に言われた。
「てめぇ、真選組ともあろう人間が暴行罪で捕まるとはどういう了見だ」
『すみません』
「謝って済む問題か。この事は上にも報告されてる事なんだぞ」
『俺の首で済むならいくらでも差し出すつもりです』
「……てめぇ、その意味分かって言ってんのか!?」
己の不始末は己でなんとかする。そう言った意味合いで言ったのに土方は何故かキレ始め、その姿に海は戸惑う。
「ま、まぁまぁ!海が無事戻ってきたんだから良しとしようじゃねぇか。な?トシ。お前だって海が帰ってくるまでずっと心配してたんだからよ」
「近藤さん!!」
『心配かけて悪い』
「だ、誰も心配してねぇ!!」
ごめんと一言謝った海に顔を赤くさせながら土方は怒鳴り散らす。
二人にはとんでもない迷惑をかけてしまった。部下が罪を犯して捕まるなんて庇いきれない案件だろう。それなのに近藤は海を真選組から締め出すどころか引き戻した。
普通なら前科者となった海を受け入れることは困難である。近藤がたとえ許したとしても、近藤よりも上の人間が認めない。それなのに海はこうして戻されている。
『近藤さん、俺は……』
「海が牢獄に入っていた件については全部無かった事になったんだ」
『どういうこと、ですか』
「てめぇ、あの刑務所に視察として行っただろ。それがそのまま残ってんだよ。お前が罪を犯して収監されていたという事実は誰かに揉み消された」
『揉み消されたって……でも、上には報告されてるんだろ?』
「とっつぁんまでの上だけどな」
『は?』
意味がわからない。確かに自分は看守長を殴った。その場で逮捕されて書類も書かされた。暴行罪として投獄もされた。この事は松平にまで話が行っていて……松平まで?
「将軍や他の奴らの耳には入ってないんだ。俺らだけの秘密になってる」
だから気にしなくていいよ、と笑う近藤に益々訳が分からなくなり、海は気の抜けた返事しか出来なかった。
「それにしてもよく海の罪状を揉み消したよなぁ」
「もう少しで副長補佐の任を解かれるところだったからな」
『……ちなみにその揉み消した人って誰か分かってるんですか』
「ん?あぁ、あの悪さばかりしてる噂の看守長だったよな?確か」
「あぁ。海、お前そいつの告発しに行ったんじゃねぇのかよ。それがなんで暴行罪なんか」
「きっと嵌められたんだろう」
はははっ、と豪快に笑う近藤に土方は二の句が継げない。そりゃ呆れもするだろう。告発するどころか罪を被せられて収監されるなど。笑い話にもならない。近藤は何も考えずにゲラゲラと笑っているが。
「だが、お前が行ったかいはあったらしいな」
土方の言葉に訝しげな目を向けた。その後、告げられた事に海は驚き、近藤と土方の話もそこそこに海は屯所を飛び出した。
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