第174幕
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『お前らなんでそんなに馬鹿なの?』
看守と看守長を人質に取られてしまえば海も為す術なく、手元の棒を地面に落として戦意喪失した。
両腕を掴まれて拘束され、少しでも動こうとすれば腹部に入る痛み。自分一人であれば打開出来る状況も、相手の手中に人質が居るのであれば手出しができない。
「さっきの威勢はどこにいったんだ?兄ちゃん」
『どっかに捨ててきた。拾ってくるまでは戻らねぇな』
ガラの悪そうな男にバカにされて眉がぴくりと動く。少しでも反抗をと男から顔を逸らしたが、顎を掴まれて無理矢理男と目を合わせられた。
「あんたなんでこんな所にいるんだ?真選組も悪事に手を染めるもんなのか?」
『お前らには関係ないことだろ』
「確かになぁ?でもよ、俺たちが逃げた後に追われても困るんだよ」
『だから殺すってか?』
「殺すだけじゃ足りねぇな。こんな所に入れられてからアッチの方はご無沙汰なんだよ」
『どいつもこいつもそんな事ばっかか』
男の脳内は全てそんな事しか考えられないのか。以前襲ってきたあの三人も、今目の前にいるこの男も。人の顔見ては目の色変えて迫ってくる。
それともこの顔で生まれてきてしまった己が悪いのか。
否。
『人を性欲処理の道具にすんじゃねぇ!』
海が右足を男へと振り上げるのと、看守長がじいさん守るために囚人の頭を掴んで顔面を牢に叩きつけたのは同時だった。
『随分と手酷くやられたもんだなぁ。看守長殿』
「なんのこれしき……!」
『それはそれは。流石は看守長。そうじゃねぇとこんな荒くれ共を束ねられねぇか』
ボロボロになりながらも襲いかかってくる囚人たちを殴り倒していく看守長に海は口元を緩ませる。
そしていつまでも出てこようとしてこない看守に向けて怒声を飛ばした。
『お前らの長が体張って囚人共押さえてんのに、あんたらはそこで見てるだけなのか!?給料分働いたらどうだ!』
牢屋の中で縮こまっていた看守達は互いに顔を見合せ、意を決して牢屋から出てきた。看守長へ殴りかかろうとする囚人たちを捕まえようと奮闘していた。
看守の人間と囚人たちの人数は明らかに差がある。そこに海が入っていたとしても、多勢に無勢。しかも、昏倒させても起き上がってまた殴りかかってくるので厄介だった。
『クソッ……攘夷浪士だったら斬り伏せてんのに!』
彼らは罪を償うために収監されたもの達。中には終身刑の者もいるだろうが、殺めていいという訳では無い。死なない程度に痛めつけて、を何度も繰り返していれば段々と疲労も溜まっていく。それでなくても丸一日まともに睡眠の取れていない頭では咄嗟の判断が遅れてしまう。
「後ろじゃ!!」
『はっ……?』
じいさんの声に反応して後ろを振り向いた時、眼前に迫る木材が目に入った。それは海の頭を狙っていた。
『やっべ、』
避けるのはもう間に合わない。頭を守るために腕を上げて来るであろう痛みを待ち構えた。
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