第174幕
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「ふ、副長補佐!!起きてください、副長補佐!」
『ん……』
ガクガク揺さぶられて目を覚ます。目を開ければそこには看守がいた。焦燥の色で海を揺さぶっていた看守は海が起きたことに酷く安心した顔をした。
『なに……』
「緊急事態です!囚人たちを入れていた牢の鍵が盗まれて……」
『それは俺に関係ある事か?』
鍵が盗まれたのはお前らの管理能力が悪いからじゃないのか?と責めるように問えば、看守はぐっと言葉を飲み込んだ。
囚人としてここに捕らえられている海を頼るなどおかしな話だろう。看守の手を振り払い、海は二度寝しようと布団の中へと潜り込む。
こちらは丸一日寝ていないのだ。あの懲罰房でなんか寝れやしなかった。あそこにあったのは闇。気を抜いてしまえば思い出したくもないようなことが脳裏をよぎる。
そのせいで無駄に体力を使ってしまった。身体は休息を求めている。それに従って海は寝ようとした。
『……うるせぇ』
「ほ、補佐殿……!」
建物内に響き渡るサイレンの音に顔を顰め、海は布団を蹴飛ばして起き上がる。看守が持っていた棒を奪い取って牢の外へと出た。
「副長補佐殿!」
『鍵は?どこのを盗まれた』
「そ、それが……」
『はっきり言え。どこを閉めてた鍵がないんだ』
口ごもる看守に強く迫るが、看守は萎縮してしまって言葉が出てこない。そんな看守にため息をこぼした。
『俺はここに囚人としているんだよ。肩書きなんざ関係無しにしてくれ』
「は、はい……鍵は看守長の執務室と──」
戸惑いながら無くしてしまった鍵の場所を話す看守に海は黙って頷いた。
『で、その看守長は今どこにいる』
「それが先程から無線で声をかけているのですが応答が無くて」
『(やられたか)』
無くした鍵のいくつかは囚人の牢屋も分も混じっていた。ちらりと周りを見渡して舌打ちを漏らす。ここに居るのは比較的穏やかな囚人たち。そして銀時が掌握した鯱の手下。
人数が足りない。
『武道などの心得は?』
「あ、ある程度なら」
『めんどくさいことが起こるぞ。これから』
手にしていた棒に力を込める。看守の持つ無線機から流れてきた声に周りがどよめく中、海はじっと廊下の奥を見つめた。
ずりずりと何かを引き摺る音。ちらほらと見えてきたのは囚人らしく悪どい笑みを浮かべる男たち。
「あ?てめぇ、なんのつもりだ?」
『それはこっちが聞きたい。こんな事をしてただで済むと思ってるのか?看守長をそんな目にあわせた罪は重く、刑期が更に伸びることになるぞ』
「はっ、そんなこと知ったこっちゃねぇよ。ここにいる看守どもを全員ぶっ殺す。そしたらここから逃げりゃいい。あんたもこいつに手酷い目にあったんだろ?」
『どうだか』
ゲラゲラ笑う囚人に海は鼻で笑い飛ばす。それが彼らの機嫌を損なうことになったが。
「お前さん……!」
『じいさんはそこにいて。顔を出さず、大人しくしていろ』
「じゃが……」
『忘れたのか?俺は真選組の人間だよ?こんなこと日常茶飯事なんだよ』
心配気なじいさんにへらりと笑ってみせ、海は棒を手に囚人たちの元へと突っ込んだ。
一人、また一人と倒れていく囚人たちを見た看守がホッと安心したように気を抜いた。それを他の囚人達が見逃すわけもなく……。
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